第26話 5層 大口ワーム

 水の日は、2層で薬草を採取しながらキーキー対策の練習をしていた。2層は広大な草原が広がり、草が沢山生えているので、この中から低級怪我回復薬の薬草を探すのはなかなか骨が折れる。

 4層でキーキーを相手に実地練習すると失敗したときに怪我をするので、対応が楽なマッドドッグを相手にしながら、広い草原で練習をするので薬草採取をしながら練習をすることにした。

 薬草採取していると、ケイトが寄ってきたマッドドッグにウォータビーンズを撃ち込む。

「ウォータービーンズカルテット」

 名前を明確に決めた方が魔法のイメージが固まるので、2つに分かれるウォータービーンズをウォータービーンズデュオと決めたそうだ。そのウォータービーンズデュオを両手で撃ちだすことで、4発のビーンズを作り出し、その魔法をウォータービーンズカルテットと名付けた。只、マッドドッグの足を止め怯ませることはできるが、ビーンズでは倒しきる所までいかない。その後は僕が剣で喉を掻っ切る。


 次のマッドドッグには、僕が対応する。

「スパッ」

「ツグトの新しい技にマッドドッグも反応できなかったね。」

「うん、大分使い方に慣れてきた。もう少し慣れれば、4層に行って成果の確認だね。」

 ケイトが単独でキーキーを討伐できそうなので、僕も単独でキーキーを倒す対策をしていた。


 風の日、再び4階層に来た。結局、2層の草原で2日間特訓をしていた。

「ウォータービーンズカルテット」

「ズン!」

 ケイトが魔法でキーキーを倒す。その後ろのキーキーに向かって、剣を振る。1.3mに伸ばした剣を振り、キーキーの手前で剣の長さを倍の1.6m迄伸ばす。そう、草原で練習していたのは、この剣の長さを剣を振りながら変える練習だ。目の前に急に現れた剣に対応できずにキーキーは両断される。剣を50cm以上伸ばすと魔力が洩れ始めるが、伸ばす時間が一瞬だとそのデメリットもほとんどない。マッドドッグも急に現れる剣には対応できてなかった。

 2人で分担して相手ができる様になったので、進むスピードが段違いにあがる。あっという間に、階層主エリアに入った。7匹のキーキーが現れる。

「ウォータービーンズカルテット」

「ズン!」「スパッ、スパッ」

「ウォータービーンズカルテット」

「ズン!」「スパッ」

 ケイトと2人で、あっと言う間に5匹を倒す。残り2匹も1匹づつ倒し、魔石とドロップ品を拾う。蝙蝠の皮がドロップしていた。この皮は、防水機能があり合羽を作るのに利用される。

「よし、5層に行こうぜ。」

「ケイト、MPは大丈夫か?」

「まだ、半分は切ってないので大丈夫だよ。」

 ウォータービーンズデュオの消費MPは2なので、まだ大丈夫なようだ。次の階層に上がる。


***


 5層に昇ると砂漠が広がっていた。砂漠に大口ワームがいる。直径1m長さ3mほどのワームで口を1.5倍の直径1.5mに広げ凶悪な鋸の様なギザギザの歯が並んでいる。先ほどから1匹のワームを攻めあぐんでいた。最初出会った時には白い色の皮膚がうねうねしていたのが、こちらを認識するとすぐに赤黒く変色した。そして、

「ウォーターカッター・・・カン」

「この、通れ・・・カキン」

 皮膚に魔力を纏って硬化しているのだ。ウォーターカッターも、剣もどちらも通らない。横から身体強化したタックルをかまして、後ろに下がる。

「ケイト、このまま攻撃してもダメだ。次に向かってきたら正面から突っ込んで噛みつきに来たところを横に避けるから大口の中にウォーターカッターをぶち込んでくれ。」

「わかった。撃つタイミングの合図をくれ。」

「剣を振り上げたら撃ってくれ。」

 すぐに、体制を立て直した大口ワームが向かって来た。身体強化をかけて、突っ込む。大きな口が開こうとしたところで、剣を振り上げて横に避けながら、口の中から切れないか口角部分に切り込みながら右に避ける。

「ウォーターカッター」

「スパッ」

「ズババッ」

 口角の内側は剣が通るようで、口角を切り裂いた。その後に、ケイトのウォーターカッターが口の中に飛び込み大口ワームの内部を切り裂く。大口ワームも唇の内側からだと切り裂ける事がわかった。

「やっと、1匹か。今日はここまでだね。」

 ケイトが言う通り、1匹に手間取り過ぎて帰りの時間を考えると引き揚げ時だ。

「とりあえず、倒し方はわかったので戻ろう。」

 初めての5層は、成果1匹と苦い滑り出しになった。ケイトと大口ワームの倒し方を話ながら帰路に着いた。

「動きはそこまで早くないので、僕が前に出て口を開けさせた所を攻撃するでいいかな?」

「ツグトを囮にするのは、気が進まないが今の所それしかないよな。でも、閉じた口を攻撃したらどうなるかは、やってないから次の機会にやってみよう」


 次の攻略の方針を決め、1層まで戻ってきた。出口間際でゴブリンを倒したところで、レベルアップの声が聞こえた。

「あれ、ちょっと待って、レベルアップしたよ。」

「レベルアップがどうかしたの?」

「いや、30レベルになったと思う。この前、カード更新したばっかなのに。」

 Dランクのカードは、30レベル迄しか表示ができない。Cランク以上はBランクもAランクも同一のカードになる。ギルドの認定によりランクの表示が変わるがカードの再発行はこれで最後だ。30レベルになったら、カードだけ再発行(Cランクになるかは別途審査)する必要があるので、ギルドで手続きをする。銀色のカードを渡され、発行料金を徴収される。

「カード発行料は5,000ゴルになります。ランクの審査が出るまでは、Dランクの表記になるけどツグト君はギルドでの臨時職員の業務も貢献度に入っているので、すぐに昇級できると思うわよ。」

 ライラさんがカードを渡しながら教えてくれた。カードを見ると、ステータスも結構上がっていた。


<ツグト>

レベル:30

HP:53

MP:84


 Cランクはまだまだ先と思っていたが、思ったより早く昇級できそうだった。

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