第23話 D級昇級試験

 月曜日、朝の7:00に試験官のサーさんとの顔合わせでギルドに集合していた。

「Cランクパーティ<虹の精鋭>のサーよ。私はヒーラーなので、戦闘には向かないのだけど、ギルマスがツグト君は魔物を倒す手助け要らないからと言って、指名してきたので試験官を受けたの。よろしくね。」

「ツグトです。今日は、日帰りで考えていますが良いですか?」

「ええ、ギルマスからも多分、日帰りになるって聞いているわ。それからお願いがあるのだけど、3層のボス討伐が終わったら、そこでレベリングしたいから少し付き合ってね。」

「え?、レベリングってビッグゴッグは倒せるんですか?」

「そう、ヒーラーの数少ない エ・モ・ノ よ。」

「そうなんだ、ではよろしくお願いします。」

 サーさんは、碧眼の美女で白いひざ丈のローブを来ている。魔法の媒体にするのか、長い杖を持っていた。美女なのだが、少し垂れ目なのできつい感じはない。

 D級昇級試験の日が始まった。1階層の階層主は倒す必要が無いとのことで、その時の挑戦パーティに相乗りさせてもらって、2層に進む。2層をサクッと攻略して3層の階層主のエリアに到達した。

「では、試験を始めるのでビッグゴッグを倒してください。・・・始め!」

 サーさんの合図で階層主のエリアに足を踏み入れる。エリアに入ると、すぐに階層主が現れた。何もない所に徐々に影を濃くしていって出現する様は、ここがダンジョンなんだと再認識させられる。

 ビッグゴッグが動きだす前に身体強化をかけながら走って近寄り、地面から70cmぐらいの高さに剣を構え80cmの剣に魔力を流し込む。更に、剣の先から50cmの所まで魔力で剣を伸ばして1.3mになった剣を突き入れビッグゴッグの回りを一周する。

「ズ、ズズ、ズーー、スパン!」

 一周回って地面から70cmの所を剣で切り離す。切りはしたが、まだ離れてはいない。ビッグゴッグが揺れだして、転がり始める。そのまま放って置くと上下が分かれて、平たい面が地面に着いて終わりになる。しかし、そうならないように動き始めたビッグゴッグの後ろに回り込み、切れている下半分を動きに合わせて持ち上げる。4分の1回転した所で切れた部分を残して転がり始める。切断された平面が地面と垂直になったところで、進行方法に対して水平になるように面を押して90度回す。そうしたら、平面を横にした形で転がり始める。平面が常に横になるように、ビッグゴッグと並走しながら、傾く度に魔力を流し込んだ盾を叩きつける

「ガン、ガン、ガン、・・・ガン」

 暫く転がり、階層主エリアの端に近づいた所で回転を止める。このタイミングで、再度下から70cmの部分に剣を差し込んで一周して切り離す。さすがに、姿勢を保てなくなり切った面がズレ始める。

「ズズ、ズズズ、・・・ドン!」

 これで下70cmが切り離され、更に横も70cmが切り取られたビッグゴッグが停止した状態になる。

「ピン、ピン、ピン・・・」

 カウントダウンが始まるが、慌てずに切り取られた横の面に向かう。こうすると、地上80cmの高さで横の切り取られた面からも80cm深さのところにビッグゴッグの核が存在することになる。1.5mの高さあたりから剣を振り下ろして核の部分を両断する。

「ス、スパン。」

 カウントダウンの音が止まり、ビッグゴッグがヒカリの粒子になって消えていく。魔石が残るが、今回はドロップ品は無かった。

「へぇ、下を切り離した時は、そのまま止めて爆裂させるのかと思ったら、そんな倒し方もあるのね。ビックりだわ。」

 サーさんが驚いた顔で感想を漏らす。

「おっと、でもこれでD級は昇格よ。お疲れ様。」

 エリアの外に出てくると、サーさんが認定書を渡してくれた。

「じゃ、ちょっとレベリングするから待っててくれる。帰りギルドまで送ってよね。」

「わかりました。ここで見学してます。」

 そう言うとサーさんは一人でエリア内に入る。そして、新しく出てきたビッグゴッグに駆け寄りその体に触れる。

「オーバーヒール。」

 魔法を発動させると、ビッグゴッグが一瞬膨らんだと思ったらそのまま崩れ始める。

「ガラガラガラ。」

「よし。おっと、レベルアップしたわ。これでMPが戻ったわ。」

 そうして、エリアを出たり入ったりしながら、ビッグゴッグを倒していく。

「ふぅ、MPが空だわ。もういいわよ」

 サーさんは結局、最初のと合わせて3体のビッグゴッグを倒していた。

「オーバーヒールって、どれくらいMP消費するんですか?」

 サーさんに聞いてみる。

「通常のヒールはMPが5くらいだけど、オーバーヒールは下級の魔物でも10は持っていかれるわ。ビッグゴッグになると20~25って所。魔力を流しながら、崩壊が始まるまで流し込むので個体によっても違うけどね。パーティで行動していると、メンバーが傷が付けた魔物は先に傷が治ってしまうから、使いどころが難しいのよ。さぁ、帰りましょう。」

 サーさんに促されて帰路に着く。

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