第22話 D級昇級試験前日

 神の日、今日はビッグゴッグで実地練習に来た。盾を背負って、1層目の階層主のエリアまで来ると人が一人待っていた。講習会で一緒だったケイトだ。ケイトから話しかけてきた。

「やぁ、講習会で一緒だったツグト君ですよね。魔力温存のために、パーティが来たら一緒させて貰おうと思って、ここで待っているんだ。君はどうするの?」

「おはよう。君はなしでタメ口でお願い。僕は、3層に行きたいのでボス倒して行くけど一緒に行く?」

「では、タメ口で。君は、剣なので魔力消費はしないのだね。僕も3層が目当てなので、3層まで一緒させて貰っていいかな?」

「OK!」

 ケイトと一緒に3層まで上がる事になった。

「ゴブリンナイトを一刀で倒すって、凄いね。僕は、魔法で倒すのにMPの半分を持っていかれるので、一緒させて貰う事が多いんだ。もうすぐ、D級に上がれそうなので今は3層で修行中なんだ。」

 ケイトが、今の状況を語っている間に、遭遇するマッドドッグを倒していく。

「じゃぁ、2層も僕が倒していくでいいよね。」

「あぁ、お願いする。つっか、マッドドッグも一瞬だね。」

 階層主のマッドドッグの群れだけ一緒に倒して3層に昇る。

「ケイト、3層についたよ。僕はボスの所に行くけど、君はどうするの?」

「僕は、ゴッグの討伐で手を焼いているのでゴッグ相手に修行をするよ。」

「魔法で、ゴッグを倒すのって、見たこと無いので一体倒すの見ててもいいかな?」

「いいけど、倒しきれない時もあるので、離れて盾構えておいて。」

 そう言って、ゴッグに向かって行った。

「ウォーターカッター」

「ザシュ!」

 水魔法で水を三日月の形に薄く伸ばした刃を飛ばして、ゴッグに切りつける。しかし、両断するまでは行かなかった様で、切りつけたゴッグが動きだした。ケイトが避ける。ゴッグが通り過ぎて止まった所に、再度魔法を叩きつける。しかし、今度も浅い。先に切りつけた所と同じ場所に当てれればいいのだろうけど、そう都合良くは止まってくれない。しかし、今度は止まっている時間に再度魔法を打てる事ができたので、同じ場所に当たった。

「バキッ」

 ゴッグが2つに割れた。

「ふぅ、やっぱり1発ではまだまだ割れないな。」

「3発魔法撃つのに、MPどれぐらい要るの?」

 ウォーターカッターの消費MPを聞いてみた。

「ウォーターカッターは、MP3を消費する。3発撃つと9MP、今の僕のMPは39なので2匹倒すと半分持っていかれる。もっと、MPを込めて一発で倒せないかと思っているんだけど、うまくいってないんだ。」

「ケイト、アドバイスっていうと生意気だけど、2つ気が付いた事があるので言っていいかな?」

「少し、行き詰っているので、教えて貰えるとありがたい。」

 ケイトの了解を貰ったので意見をいう。

「一つ目は、ゴッグの見分け方だけど、近づいて行ってゴッグが動きだしたのを見て判断しているよね。」

「普通の岩と並んでいるので、揺れを見て魔法を撃つようにしている。」

「ここから少し遠いけど向こうに3つ岩が並んでいるよね。あの内の一つがゴッグなんだけど、どれかわからない?」

「3つとも同じような形していいるよね。判らないよ。」

「魔力を感じるんだ。普通の岩に魔力は無い。魔力が感じられる岩がゴッグだよ。」

「魔力を感じる?やったことないよ。」

「体に魔力を循環させるよね。その魔力を手に集めて魔法を発動させるでしょ。その時、手に魔力を感じてるよね。その感覚を外にも広げると感じる事ができるので、練習してみて。」

「魔力の循環は感じられる。これを外に広げて感じてみるのか。やってみるよ。」

「2つ目は、魔力の威力を高めるために魔法に込める魔力を高めると言ってたけど、魔力を高めるより魔力のコントロールを上げてカッターの刃の鋭さを上げた方が良いと思う。ゴブリンナイトを一撃で倒せたんだけど、実は剣に流す魔力をコントロールして剣の刃に薄く尖らせた魔力を添わせる事で切れ味を良くしているんだ。ウォーターカッターも刃なので、同じ事ができると思うよ。」

「・・・カッターの刃を尖らせる。考えてもみなかったよ。ちょっと試してみるよ。」

「ちなみに、向こうの一番右がゴッグだからね。僕は、迂回してボスエリアに行くから頑張ってね。」

 ケイトと別れて、階層主エリアに向かった。


***


 ツグトは、ビッグゴッグと向かい合っていた。今日、3体目のビッグゴッグだった。

「ガン、ガン、ガン、・・・ズズズ、ズン。とどめだ。・・・スパ!」

 ビッグゴッグがヒカリの粒となって消えていった。魔石とドロップした石を残して。

「よし、何とか倒せたぞ。これは、何の石かな?」

 魔石とドロップした赤く輝く石を拾い上げて、帰り道を歩き出す。


 暫く3層を戻っていくと、ケイトがゴッグと対峙しているのが見えた。走り寄りながらウォーターカッターを出す。先に見たものより、深く入った様だが中心には届いていない。しかし、ゴッグが動き出す前に到達した事もあり、再度ウォーターカッターを撃ち込む。ゴッグがヒカリとなって消えて行った。

「ケイト、ゴッグの見分けは付くようになったんだね。」

「ツグト、おかげ様で2発では倒せる様になったよ。」

「あ、でも、もう少しで1発で届きそうだよね。」

「ウォーターカッターを鋭くするようにしているんだけど、今のが限界かな?」

「魔力に余裕があったら、そこの岩に一発入れてみて。」

 ゴッグでは無い岩に、縦にウォーターカッターを入れてもらう。ウォーターカッターの切り込みの30cmほど横にツグトは剣で同じくらいの深さになるよう切り込みを入れる。そして、切り込みの真ん中あたりを狙って、今度は横に岩を切り切断してしまう。そうすると、2人の切り込みの形が上から見えるようになる。

「ケイト、この切り込みを見て。」

 上から見ると、切り口の鋭さが明らかに違っていた。

「全然、違うな。もう少し練習してみるよ。でも、今日は魔力の残りが少なくなってきたので引き上げるわ。」

「僕も、戻るところだから、一緒に帰ろう。」


 3層からの帰り道ケイトが、魔力操作について聞いてきた。

「ツグトは、魔力操作をどうやって練習したの?」

「剣に魔力を流して循環させるんだど、その状態だと魔力を消費しないんだ。」

 そう言って、剣を抜いて魔力を循環させる。

「この剣に流れる魔力が見える?」

「今日は一日、魔力を感じる練習をしていたから、なんとなくは判るよ。」

「これ、毎日やっていると魔力の流れがはっきり見えてくるんだ。」

 剣の刃を上にしながら続ける。

「この刃の所から少しだけ魔力をはみ出させて、その魔力が薄くなるように魔力を見ながら調整すると、薄い刃が出せるようになった。ケイトもナイフでやってみると薄い刃のイメージができる様になると思う。」

「なるほど、帰ったらやってみるよ。ところで、ツグトは明日の昇級試験が終わったら、故郷に戻るのか?」

「いや、暫くこの街で冒険者をしてみよと思っている。4層から上の階層も気になっているんだ。今日、少し覗いてみたけど蝙蝠型の魔物のキーキーは、3mぐらいの高さを飛んでいて倒すのが大変そうなんだ。そういう魔物を倒す工夫をするのが好きだし。」


「・・・ツグトが良ければ、僕とパーティを組んでくれないか?ツグトの魔力の使い方は面白いし、一緒にいると気づきがあるんだ。ここから上の階は、日帰りが段々難しくなってくるし泊まりでの攻略はパーティを組んだ方がいいと思ってたんだ。」

「パーティ、考えた事無かったけどお試しってことでいいかな?一緒にダンジョン入ったの今日が始めてだし。」

「勿論、それでいいよ。」

「月曜は試験があるので火曜日の朝、ギルドで待ち合わせでいいかな?」

「D級は、2日かかるって聞いてたけど、・・・・確かに日帰りだね。」


 ギルドに戻って、ドロップ品の買い取りをしてもらう。ビッグゴッグのドロップ品はルビーの原石との事で重さを計られ1100ゴルの値段が付いた。持っていても仕方が無いので、買い取ってもらう。

「これが、ミスリルとかダイヤの原石だと1桁も2桁も値段が上がるんだけどね。」

「ミスリルがドロップする事もあるんですか?」

「まぁ、滅多に無いけど。前にあったのは、10年ぐらい前になるわね。」

 ライラさんに、ドロップ品の種類を教えて貰って、その日は帰宅した。

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