第21話 ギルドでのある一日
この世界は、7曜日(月、火、水、木、風、土、神)で1週間となっている。神曜日は、冒険者もお休みにしている人が多く、ギルドは閑散としている。しかし、一般の人もお休みなので依頼を持ち込む人は多い。なので、月曜日は多くの依頼が張り出される。火曜日水曜日になると、急ぎの依頼で残っているものをギルド職員が替わって実施する必要があるので依頼対応で忙しい。木曜日風曜日は急ぎでは無いが受け手のいないものを片付ける。
今週の風曜日は、片付ける案件が1件だけだったので、午前中に片付き午後はギルドでまったりとしていた。ライラさんの勤務時間は遅番で午後3時からなのだが、今日は朝から出勤して帳簿と睨めっこしていた。
「う~ん、計算が合わないわね。」
魔石代金の払い出し合計金額と、各個人に払いだされた実績金額の合計が合わない様だ。魔石は一部をシエル街の商業ギルドに卸して、残りを王都にある本部へ集められる。魔石は魔道具の燃料として消費される。個人に払い出した金額は個人の貢献実績として集計され、昇級の判断に使われる。全てを計算した上で集計結果が合わないとなると、個人の貢献額が間違っているか、商業ギルドに払いだした金額が間違っているか、王都に送付する魔石が間違っているかだが、どれが間違っていても問題になる。それを横から何気なく眺めていたのだが、魔石数の掛け算が間違っている事に気付く。
「ライラさん、ここ間違ってますよ。掛け算の結果がおかしいです。」
「え、・・・本当だわ。よく気が付いたわね。っていうかツグト君、計算できるの!!」
「はい、実家のギルドでよく手伝わされていたので、帳簿読めますよ。」
「・・・ちょっと、この商業ギルドへ提出する書類手伝ってくれる。」
「了解しました。」
書類をもらって、前月の提出書類を見ながら今月分のを作成していく。実家では、母親に読み書き計算を仕込まれたので、実は字もわりかし綺麗にかける方だ。
「できました。」
完成した書類を渡すと、ライラさんが中身をチェックする。
「うわ、完璧だわ。ツグト君、来週の昇級試験が終わったらどうするの?実家へ帰る?」
「今、3層を攻略しているので、もう少しダンジョンに潜りたいかなと思っています。」
「じゃあ、暫くはここで冒険者として続けるのね。ちょっと、旦那に相談するわ。」
「え、相談って何を?」
「ひ・み・つ、よ」
ライラさんは謎の言葉を残して、ギルドマスター室へ書類を持って消えて行った。
「ちょっと、気になるんですけどー。」
ライラさんが去った方に呟くも、もちろん返事はなかった。
仕事が終わって、宿舎に戻る。盾を持ち出して、魔力を纏わせる練習をする。コツが掴めてきて全体に纏わせる事ができるようになってきた。盾の練習を終えると、今度は剣に魔力を流し込む。地面に直径3mの円を描き、その外から攻撃する。直径3mになるのは岩の中央部分なので、身長140cmのツグトの頭のまだ10cm上になる。剣を前かがみに構えると中心部は、20cmは上になる。剣を付きだすと下から70cmぐらいの位置になる。ビッグゴッグの形を思い出しながら、剣の魔力を剣より先に伸ばす魔力が漏れ出さないギリギリの50cmまで伸ばすと剣の長さ80cmと合わせて130cmになる。地面から70cmの所なので、130cmあれば何とか中心に届きそうだ。そう、ツグトはビッグゴッグの完全討伐をまだ諦めていなかった。
「試験に間に合うかわからないけど、ギリギリまで足掻いてみよう。」
そう呟きながら剣を構え、円の外周を回り始める。
「ふう、一定の高さを保ちながら回る事はできるけど、でも、これじゃ、岩の下70cmを切断するだけなんだよね。」
足止めするための切断はできる様になったところで、日が暮れてきたので、練習を切り上げた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます