第3章 剣神のダンジョン

第17話 ギルドの手伝い

 次の日から、朝6:00に起き1時間素振りで体を動かしてから市場で買って来たパンで朝ご飯を済ます。身支度をして7:30に職員用宿舎を出る。ギルドの入口を入ると受付にミエラさんとシンタさんが座っていた。ギルドが開く6:00から8:00ぐらいは、依頼を受注する冒険者も多い。ダンジョンで採れる薬草などの素材は、常時依頼がかかっているので受注の必要は無いが、どの階層を中心にいつまで回るかは、申請が必要になっている。予定の日になっても帰って来ない場合は、捜索案件になることもある。又、あまり多くの冒険者が同一階層に留まると、混雑して収穫の効率も落ちるので、組数が一定以上になると別の階層を推奨される。ダンジョン以外にも街の溝掃除や、迷子猫の捜索といった依頼も貼り出されるので、こちらは早いもの勝ちになる。なので朝の時間は受付が混雑するのだ。この2時間だけは、ミエラさんの他に、だれかがヘルプで入る。僕は、冒険者達のレベルなどが判らないので、受付に入ることは無い。徐々にすいてくる時間なので、事務所に入ってお湯を沸かす。行列が無くなったので、シンタさんが戻ってきた。香草を入れたお茶を出しながら挨拶をする。

「お疲れ様です。」

「終わった、終わった。毎日、朝は大変だわ。」

 そう言いながら、休憩に入った。ミエラさんも手が空いたので、事務所に戻ってきた。

「お茶どうぞ。」

「ありがとう。うーん、疲れた。」

 朝の受付は、大変そうだ。


 2人が休憩に入ったのを見て、ギルドの掃除をする。大勢の人が出入りした後は、床などが汚れているので、ほうきで掃いていく。掃除が大体終わったところで、依頼を出すお客さんがやってきた。受付に座って待ってもらい、ミエラさんを呼びに行く。依頼内容を聞いて、依頼書を作成するのもギルドの仕事である。依頼のお客さんが帰ったところで10:00を過ぎていた。事務所でシンタさんとミエラさんと一緒に、氷漬けの依頼(誰もやりたがらない依頼)について協議する。シンタさんが口を開く。

「Fランク対象依頼で、猫探しと街のドブ掃除が1週間残っている。後、Cランク対象の護衛依頼が残っているけど、ミエラさんこのギルドにはCランクパーティは虹の精鋭しかいないけど依頼受けてくれなさそうかい。」

「お願いはしたんだけど、この護衛って王都までの一ヵ月仕事でしょ。すぐには出られないって。」

「そうか。Dランクパーティでも良いか依頼元と交渉だね。この後、依頼元に行ってみるよ。ところで、猫探しは、時間が経つと難しくなるから、ギルド職員代行業務にしようか。ツグト頼めるか?」

「わかりました。やってみます。これって、見つからない時はどうすればいいのですか?」

「町の地図で探した所に探した時間を記入して、お客さんに提出する。追加で別の時間を探して欲しいって要望が無ければそれで終了になる。」

「わかりました。行ってきます。」

 氷漬け案件で、ギルド職員がこなせる内容のものはできるだけ片付けていく。そうしないと、ギルドへの依頼が減ってしまうそうだ。準備をして、猫探しに出かけた。


 ギルド職員の業務をこなしていると、あっという間に一週間がたった。給料は通常週給払いなので土の日には、1週間分の給料をもらった。神の日はお休みなので、ダンジョンに入ってみた。月曜日には、昇級試験があるのでその下見を兼ねている。一層目は、ゴブリンだ。1層目は洞窟になっており、曲がり角を曲がった先などにゴブリンと遭遇する。倒したゴブリンは、光の粒になって消えていく。消えた後に魔石が残っていた。1匹での遭遇が多く、多くても3匹程度なので楽に感じる。油断しないように気を引き締めながら1匹づつ屠っていく。身体強化も複数の時にしか使わないので、MPもあまり減らない。それに、8匹倒したところでランクアップしたので、MPも回復している。更に4匹倒したところで、広場に出た。池があり、周りに草むらが広がっている。低級HP回復薬の薬草が採れるところなので、常設依頼でもある薬草を採取する。

「どう見ても塔の外観と中の広さが一致しないよなぁ。」

 独り言を言いながら、採取を終えると昼になったので弁当を食べて、奥に続く道をすすんでいく。そこから11匹のゴブリンを倒したところで階層主の守る階段に到着した。ボスはゴブリンナイトだ身体強化をして切りかかるがあっさりと倒せた。倒した時点で、ランクアップがくる。

「ゴブリンキングになりかけのナイトに比べたら楽だったな。」

 魔石を拾うと、横に剣が落ちていた。ここに来て、ドロップ品が出た様だ。価値は判らないが、剣を背中のリュックにしまう。3分の1ぐらいリュックからはみ出ているが、落ちそうに無いので大丈夫だろう。


 次の階層への階段を上る。お昼も過ぎているので、2階層の様子だけ確認したら戻ることにする。2階層はマッドドッグの階層になる。洞窟から一転して平原が広がっていた。太陽らしきものも見えている。ここも、1~3匹の単位で襲ってくる。マッドドッグは、この街に来る時にヤールさんと倒した魔物だ。ヤールさんの言葉を思い出す。レベル差があるので、簡単に倒せるけどレベルに頼った戦い方はダメと言われたことだ。襲ってくるマッドドッグの動きを観察する。駆け寄ってきて、牙をむいて口を開けて噛みつこうとする攻撃が共通した最初の攻撃の様だ。飛びかかるのにタイミングを合わせて、その口めがけて剣を横薙ぐ。口を閉じる時に素早く剣を振り、口から頭を切断する。顎の腱を切る時に少し引っ掛かりがあるが、これならレベル任せの力は必要ない。噛みつこうとするタイミングで剣速を上げる必要はあるが、繰り返していると体を動かすコツを掴んできた。7匹倒したところで、入口に引き返す。

 帰りは、ボスが出てこない。ダンジョンの不思議なところだ。来るときに倒したからか、帰りに遭遇したゴブリンは6匹だけだった。ギルドに寄って、魔石を換金する。採取した薬草も買い取ってもらう。神の日の受付はギルマスの奥さんのライラさんだ。

「低級魔物の魔石が36個、中級が1個、薬草が10本束が3つね。こんなに沢山の魔石、明日の昇級試験、大丈夫?疲れてない?」

「大丈夫です。下見ができたので、安心して試験受けられます。」

「ならいいけど、23,900ゴルになるけどどうする?」

「20,000ゴルはギルドの口座にお願いします。残りは現金で。」

「明日は、頑張ってね。」

「ありがとうございます。」

 ライラさんに、挨拶をしてギルドを出た。ヨーグ武具店に行って、ドロップ品の剣を査定してもらう。

「これは、普通の鉄の剣なので、買い取るとしたら2,000ゴルってとこかな。初めての持ち込みなので売ってくれるのなら2,500にするよ。」

 持っていても仕方がないので、売ることにして換金してもらう。

「又、いいものが出たら持ってきてくれよ。」

 そう言われて、店を出る。屋台で、食事を買って宿舎に戻った。

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