第18話 昇級試験

 月曜になり、昇格試験が始まった。ギルドで、試験官を紹介される。

「今日の試験官を務めるドルフだ。Cランクパーティ<虹の精鋭>に所属している、ツグトとは一度会っているよな。俺自身は、Dランクの冒険者だ。」

「はい、このギルド唯一のCランクパーティなので覚えています。」

 ドルフさんは、スラっとした体形で紺のローブを着ている。灰色の瞳は、思慮深そうな色をたたえていた。

「これから、ダンジョンに行き1層の階層主を倒したら昇格試験は終了だ。費用はギルドに払ってくれ。」

 ギルドで500ゴルを支払って、ダンジョンに向かう。一層を進むが、昨日と違ってゴブリンに全然遭遇しない。1匹のゴブリンを2回倒しただけで、広場に出た。ドルフさんに、ゴブリンの遭遇が少ないので聞いてみる。

「昨日より出てくるゴブリンの数が全然少ないです。」

「平日は、こんなものだ。神の日だけは、冒険者が少ないから遭遇率が跳ねあがる。といっても、別の冒険者が直前を歩いていたら同じだけどな。通常はこんなもんだよ。」

 昨日の数がおかしかったようだ。おかげで稼げたので文句は無いが。広場で少し休憩をして、先に進む。3匹のゴブリンを倒したところで、階段前に到着する。階層主を倒したばかりのパーティが魔石を拾っている所だった。次の順番待ちのパーティが居て、その後ろに並ぶ。階層主を倒したパーティが階段を昇り、次のパーティが階段前に近づくと階層主が復活した。

「階段を中心として15mあたりに境界がある。その中に入ると階層主が出てくる。階層主を倒さないと、階段は登れない様になっている。倒せないと思ったら、境界から外に出ろ。階層主は境界を越えて追っては来ない。ここに時間を掛けたく無いパーティは共同で倒したりする場合もある。混んでくると、頼めば一緒に入れてくれる。その場合は、頼んだ方は手出し禁止で、ドロップ品も権利が無い。階段を上がれるだけだな。」

 ドルフさんが、階段前のルールを教えてくれる。

「帰る時には、階層主出ないですよね。その時に、昇りたいパーティが闘っていたらどうするんですか?」

「その時は、そのパーティが階層主を倒すのを待って、倒したら降りるんだ。戦闘中に降りようとしても階段前に膜みたいのが張ってあって出られないようになっている。最悪なのは、闘っているパーティがなかなか倒してくれない時だな。」

  あまりに、倒せないようだと帰れってヤジが飛ぶそうだ。階層主守備範囲から出ると、暫くすると階層主が消えるとの事だった。そんな話をしている間に前のパーティが階層主を倒し終えて、階段を昇って行った。

「では、行きます。」

 ドルフさんに断って、前に出る。ある一線を越えるとゴブリンナイトが現れた。剣を構えて、魔力循環を始める。身体強化と剣への魔力供給ができたところで、右にフェイントをかけて左に飛び左から横薙ぎをかける。

「ガキィ」

 ゴブリンナイトが剣で受け止めた所で、剣を引きながら右足で回し蹴りを放つ。

「ガシィ」

 脇腹に蹴りが入り、よろけた所に剣を真上から切り下げる。魔力が流し込まれている剣でゴブリンナイトの左肩から下に切り下げる。心臓に剣が達っした所で剣を引き距離を取る。膝から倒れたゴブリンナイトが光の粒子になって消えていく。

「レベルアップしました」

 ゴブリンナイトを倒すと、レベルが上がった。今回はドロップ品は無かった。魔石を拾って、ドルフさんの所に戻る。

「おいおい、瞬殺かよ。昇級試験とは思えないな。そういや、続けてDランク昇級試験も受けるんだっけ。」

「来週と再来週で、講習会と昇級試験です。」

「とりあえず、Eランク昇級試験は合格だ。おめでとう。」

「ありがとうございます。」

 そのまま帰り道を進んでいくが、帰り道のゴブリンは2匹だけだった。


 ギルドに戻って、新しいギルドカードを発券してもらう。Eランクでは無く、DランクのギルドカードでDランク(仮)とカードに記載されていた。再来週の試験に合格すると仮が取れるそうだ。

「魔石の交換が8,500ゴル、ギルドカードの発券の3,000ゴルを引いて5,500ゴルになるけど現金で渡そうか?」

「5,000ゴルは口座へお願いします。」

 全額、口座へ入れても良かったが現金を多少でも貰うと働いた気になるので500ゴルだけ現金でもらった。


 1日の予定だった昇級試験が、午前で終わってしまった。ギルドで昼食をとり、D級昇級試験に備えて、午後にもう一度ダンジョンに入った。相変わらずゴブリンが少なく、広場を素通りして1時間ほどで2階層に上がる。

 昨日と同じようにマッドドッグの噛みつきに併せて口から頭を切り飛ばす。3匹目のマッドドッグは噛みつきに来ず、前足を振って爪で攻撃してきた。爪を躱して、首を切る。ここで、レベルアップの声が聞こえた。

 更に3匹を倒したところで、5mほどもある巨大な岩が見えてきた。岩の真ん中に階段が見える。岩まで30mの所に近づくと5匹のマッドドッグが現れた。複数人で近づくと10匹程度まで数が増えるそうだ。身体強化をかけて、剣に魔力を流し込むと、囲まれると厄介なので、右端のマッドドッグに駆け寄る。マッドドッグ達も動きだすが、先に右端に到着して、1匹目の首を飛ばす。2匹が近づいてくるがスピードに乗りきるだけの距離がなかったので、噛みつきではなく爪の攻撃を仕掛けてくる。左のマッドドッグに近づいて爪攻撃してくる前足を切り飛ばす。よろけたところを首の上から剣を落とす。倒れてくる身体を蹴り飛ばし右のマッドドッグにぶつける。ぶつかった後に、粒子となって消えた。ぶつけられたマッドドッグは体制を崩しているので一気に近寄り首を切る。その後ろから2匹が駆け寄ってくるので、こちらから距離を詰める。慌てて噛みつきに来た1匹の口から剣を横薙いで頭を切り飛ばす。最後のマッドドッグは1対1の形になったので、ゆっくりと近づいて爪薙ぎに来た所を後ろに躱しながら足を切り飛ばす。ひっくり返ったマッドドッグの首に剣を突き刺し闘いが終わる。


 魔石を拾って、3階層への階段を昇る。

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