第15話 神の日の一日

 一日は24時間である。冒険者ギルドは朝の6時から開いていて、夜の9時までやっている。朝から依頼を受けて、夜に成果を持ち帰る冒険者に合わせて営業時間は長い。ギルマスとの話が終わると、午後の3時になっていた。午後の3時は朝の6時から働いている受付嬢の交代時間だ。事務所で全職員との顔合わせをした。

「皆、来週から・・と言っても火曜日からだがギルドを手伝ってくれるツグト君だ。毎週月曜日は講習会と昇級試験を交互に受けるので、一か月ぐらいは居る予定だ。ツグト、シンタは先ほど世話になったからいいとして、受付嬢のミエラとライラだ。ライラは、私の嫁でもある。皆も仲良くしてやってくれ。業務時間は朝8:00から午後3:00昼休憩は1時間、時間給は100ゴルで1日600ゴル、職員用宿舎に泊まるので、シンタ、帰る時に一緒に連れて行ってくれ。」

「シンタ君よろしくね。夜の受付やってるライラよ。」

「宿舎でも会うかもしれないけど、よろしくミエラよ。」

「後で一緒に帰ろう。」

 皆と挨拶をして、早番のシンタさんと帰る。職員用宿舎はギルドの真裏に建てられていた。帰る前に商店に行って、マットなどの必要なものを買って部屋に置く。一度、荷物を置いて再度ギルドの食堂に行って、晩御飯を食べる。ギルドの食堂は、専門のコックさんが居て定食は100ゴルだった。酒も出すので、帰ってきた冒険者が酒を飲んで駄弁っていた。隣の机でパーティで飲んでいた一人が声をかけてきた。

「見慣れない顔だが、新人か?」

「カール村から来ました、ツグトです。Fランクギルドカードが上限になったので、更新の為に出てきました。」

「ちゃんと挨拶のできる新人は久々だわ。俺たちは、虹の精鋭っていうCランクのパーティだ。このギルドでは、Cランクが一番上のパーティで1組しかいないから覚えておけ。俺は、リーダーのスバル。こっちが、サブリーダーのドルフ、向こうの2人がユンとサーだ。よろしくな。」

「ギルドで1番のパーティに合えてうれしいです。来週の火曜日からギルドの臨時職員をやっているので、よろしくお願いします。」

 虹の精鋭から街の話などを聞いて、食事を終えて宿舎に帰った。


 次の日、日課のトレーニングを終え、昨日買っておいたパンで朝ご飯を済ませ、神曜日なので街の教会へと出かけた。村には教会などなかったので、初めての教会だ。中に入ると神父さんが講和をされていて、40程ある席はほとんどが埋まっていたが、端に空いた席に座らせてもらった。

 この教会に祭られている神様はゴード神で、剣の神様とのことだ。シエルにあるダンジョンはゴード神が作られたとの事で、だからダンジョンの名前もゴードダンジョンだとの話をされていた。ゴード神とおもわれる神像が正面にある。剣を下げており、胸当てや小手などを付けた今にも闘いだしそうな恰好をされていた。講和が終わり、献金を集めだしたので回りを見て相場かなと思う50ゴルを出して、教会を出た。


 昼を広場の屋台で食べて、ヤールさんの店に向かう。店にヤールさんが居たので、実家に言伝を頼む。

「昨日のレベル判定で、Dランクになるとの事で講習会、試験を2回づつ受ける事になりました。講習会と試験が月曜日毎にしかないため、1ヵ月後には帰れないです。父と母に、言付けお願いできますか?」

「そうか、Dランクになるのか。ゴウさんメグさんには言っておくので大丈夫だ。月に一度の業商の時なら、乗せて行ってあげるから声をかけてくれ。」

「ありがとうございます。その時には声を掛けさせてもらいます。」

 言付けを引き受けてくれたので、礼を言って店を出た。街をブラブラしていると、武具店を見つけたので入ってみる。

「こんにちは、ちょっと見せてもらっていいですか?」

「見ない顔だな、新人か?飾ってあるものは何でも見ていいぞ。気になるものがあったら声かけてくれ。」

「昨日、カール村から来たツグトです。1ヵ月は滞在する予定なので、よろしくお願いします。」

「ここの店主、ヨーグだ。よろしくな。」

 店の中で、剣を見せてもらう。実は、今の片手剣がレベルアップに伴って、軽すぎて振りにくくなっていたのだ。今のは、片手剣の中でも子供用の少し小さいものだ。大人用の片手剣を見せてもらう。バケツに入っているものは1本5,000ゴルで売っている。同じ鉄の剣でも握りの部分に意匠がこらされていたり、鞘に良い皮を使っているものは値段があがる。高いものは50,000ゴルするものもあった。無骨な造りだが、抜いてみると刀身の中心が黒くなっているものがあり、ヨーグさんに聞いてみる。

「それは、通常の鉄に焼き入れを何度も入れて、通常の鉄よりも硬度を上げたものだ。鋼鉄の剣と呼ばれている。その剣は、15,000ゴルだが、値段の割にいいものだ。その鋼鉄にミスリルメッキを施したものが、こちらの剣だ。魔力の流れが良いので、魔力を纏わせて闘う剣士向きだ。ミスリルは高いので、メッキでも100,000ゴルになる。メッキじゃないものは1,000,000ゴルを超えるが、この店には置いていない。」

「ミスリルメッキの剣に魔力を流して見てもいいですか?」

「流すだけなら、いいぞ。試し切りは、傷が付くと困るので勘弁してくれ。」

 ミスリルメッキの剣に魔力を流し込んでみる。いつもの剣に流すより、抵抗が少ない。魔力循環させて安定させるのに、一瞬で安定した。とても使いやすい。

「こちらの鋼鉄の剣にも流して見ていいですか?」

「流すだけならいいぞ」

 ヨーグさんに許可をもらってから、鋼鉄の剣にも魔力を流してみる。ミスリルメッキよりは、抵抗があるが、いつも使っている鉄の剣よりも流しやすい。

「どちらも良い剣ですね。でも、ミスリルメッキを購入するにはお金が足りないです。」

「それなら、鋼鉄の剣を購入して、将来、ミスリルを持ってきたらメッキしてあげるよ。ミスリルメッキの工賃は20,000ゴルだ。ミスリルの材料代が高いんだよ。冒険者なら、ダンジョンの9層でミスリル集めができる。9層に行く実力を付けてミスリルを集めるのも手だよ。」

 そういって勧めてくれた。ミスリルメッキを将来的にどうするかは先の話だが、鋼鉄の剣も良いものなので購入することにする。

「現金も持ち合わせが無いので、ギルドでお金をおろしてきます。」

 剣の取り置きを依頼して、店を出た。ギルドに行って、お金をおろす。再度、ヨーグ武具店に行って、鋼鉄の剣を売ってもらった。


 ギルドに戻って、夕食を食べる。神の日はギルドも閑散としていた。

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