第12話 闘いの終結
広場で腰を下ろしていると、道を歩く音が聞こえた。
「ザッ、ザッ、ザッ」
もしや、他にも別隊が居たのかと慌てて立ち上がり、道を見るとキース達が向かって来るのが見えた。
「おおぃ!」
向こうからもこちらが見えたようで、足を早めてやってくる。キース、サイド、コールの他、10人ぐらいの村人達が見えた。
「無事だったか。怪我は?」
「足に打撲がある程度で他は大丈夫です。」
キースの問いかけに答える。回りを見渡し、
「これって、ゴブリンナイト!?」
「こっちにはゴブリンメイジがいるぞ!」
「これを、相手に打撲だけって、よく無事だったな!!」
駆け付けた村人が次々と声をかけてくる。そんな話をしていると、父親のダンが足を引きずりながら遅れてやってきた。足が悪いのに、無理をして駆け付けて来てくれたようだ。
「ツグト・・・よく無事で」
状況を見たゴウは目に涙を浮かべながら、声をかけてきた。
「父さんに教わった剣が役に立ったよ。剣を振り続ける力、打ち合いで教わった剣技が無ければ生きてなかったよ。」
「そうか、とにかく無事でよかった。後始末は、皆に任せて村に帰ろう」
父は、状況を確認した後、ゴブリン後始末を村人に指示するとをキースに後を任せて、2人で先に帰らせてもらった。帰り道で昨日からの戦いの話をしながら、歩いていると家に着く。
「お帰りツグト、無事だったのね!」
「お帰り、お兄ちゃん」
母のメグと妹のユメが迎えてくれた。
「ゴブリンの巣らしい穴に落ちったて聞いたから心配していたのよ。どこも怪我は無い?」
「足に打撲があるけど、母さんが持たせてくれた薬草のおかげで痛みは引いている。心配かけてゴメン。」
「ちょっと、怪我の状態を見せて」
母は、足に巻いた薬草を剥がして、状態を確認し足を拭いて新しい薬草に張り替えたくれた。
「レベルアップのおかげで、怪我は治りかけている。張り替えた薬草は明日には外しても大丈夫よ。桶に新しい水を汲んであるから、体は自分で拭きな。拭き終わったら食事の用意をするから食堂に降りてきて。」
そういって、リビングから出て行った。風呂などと言うのは、街に行けばあるそうだが、田舎の村では体を拭いて終わりだ。ギルドの2階に自宅があるが、食堂は1階のギルドの食堂を使わせてもらっている。といっても、冒険者も偶にしか来ないので、ほとんど家族で使っているのだが。その日は、食事をとるとそのまま眠ってしまった。夕方に眠ったが次の日の朝まで目が覚めなかった。起きて体を動かすとレベルアップにまだ馴染んでいないのか体がギシギシする。朝の練習は軽く準備体操だけにして朝ご飯を食べると、父に呼ばれてギルドの事務所に行く。そこで、ギルド本部への報告書を出す必要があるとの事で、昨日話をした内容の詳細を聴取された。その後、ギルドカードを確認した父が言う。
「この村の冒険者ギルドで発行できるFランクカードのレベルを超えてしまったので、ここから一番近い町のシエル街のギルドへ行って新しいカードを発行してもらう必要がある。上のランクに上がる時には相応しい実力が揃っているかの試験や、講習があるので暫く街に滞在する必要も出てくる。それと、昨日ゴブリンからはぎ取った魔石だが、通常ゴブリンが低級魔物なので500ゴル、ゴブリンナイト,ゴブリンメイジは中級魔物なので5,000ゴル外に居たゴブリンナイトは見た目はナイトだが魔石はゴブリンキングのものになっていたので30,000ゴルだ。ゴブリンの魔石が88個あったので、併せて84,000ゴルがお前の取り分だ」
ゴルはこの国の通貨の単位で、村に唯一ある食堂がギルドの食堂になるが、冒険者が来た時に出す定食が朝昼50ゴル、夜100ゴルで、ギルドの2階にある自宅以外の部屋に宿泊が可能だが、1泊300ゴルなので、500ゴルもあれば1日暮らせる。8万ゴルあれば、5ヵ月は暮らせる(酒など飲まなければだが)計算になる。昨日の救援隊の費用が気になって聞いてみる。
「昨日、魔石の剥ぎ取りをしてもらった村の人への手数料はいらないの?」
「ゴブリンの巣討伐は、ギルドの依頼になる。村人への支払いは、そこから出ている。実際に討伐したのはツグトになるが、事態発生前の討伐になるので、申し訳ないがその費用は出てないぞ。」
「それは、構わないけど結構やばい状態だったんだよね。」
「この規模の集落討伐となるとDランク以上、それもパーティ前提の発注になるな。こんなの一人でやるやつはいないぞ。」
あらためて聞くと、ぞっとしてくる。本当に生きて帰れてよかったと思った。父が更に言う。
「毎月来てくれている行商のヤールさんが、ちょうど今日来ている。明日には立つそうだ。ヤールさんには頼んでおいたので、馬車に乗せて貰え。シエルの町迄は馬車で3日だ。歩いていくと5日かかるし、ヤールさんは腕利きの元冒険者なので道中も安心だ。お金は75,000ゴルをギルドカードに入れておく。9,000ゴルは現金で渡す。シエルの冒険者ギルドへの手紙も書いておくから、向こうについたらギルドマスターに渡してくれ。」
そう言って、革袋を渡してくれた。中には、1,000ゴルの棒銀貨が8本と100ゴルの銀貨が9枚、10ゴルの鉄貨が10枚入っていた。
「現金だけでも、2週間ぐらいは暮らせるだろう。講習会と試験は毎週やっているから2週間あれば大丈夫だ。それ以上の金が必要になればギルドで引き出せばいい。ツグトがもし冒険者になりたいのなら、シエルにある初級ダンジョンでレベル上げをするのも可能だ。Eランクならソロでもダンジョンの3階層ぐらいまで登れるだろう。それからこれは餞別だ。」
渡されたのは、片手剣と胸当て、脛当て、小手、ブーツの装備一式だった。シエルのダンジョンはタワー型で10階層のダンジョンだ。
「ありがとう、シエルに行ったら講習会も聞いてみて、どうするか決めるよ。」
「帰りは、できたら一ヵ月後のヤールさんの便に乗せてもらうのが安心だ。シエルにはヤールさんの店があるので、向こうについたら場所を確認しておけよ。」
その後、母さんからは現役時代に使っていたという大きなリュックと洗濯の仕方などを教わり、野営のやり方も教えてもらった。自分で料理ができるとは思えないのだけど、切って煮るぐらいなら何とかなるだろう。食えるものができるかは心配だが。妹のユメが冒険者になるのか聞いてくるので、向こうで考えると返事しておいた。
「私は、魔法使いの冒険者になるんだから、前衛の剣士で使ってあげてもいいわよ。」
などと言っていた。妹には魔法の才があり、火と風の属性が使える。まあ、先の話だけど。その日は、午後からレベル上げを一緒に行なったヤマト、サラ、ジャン、ミラの4人と会い、レベル上げが中途になってしまったお詫びと、村への連絡などをしてくれたお礼をいった。サラからは、ゴブリンの巣へ落ちる切っ掛けとなった行動をお詫びされたが、不可抗力だったと返しておいた。明日、シエルの街へ行く話をしたら、うらやましがられたけど、一人で行く不安を言うと逆に慰められた。明日の出発には、見送りに来てくれる事になった。その後、キースおじさんの所へ行き、お礼を言って帰ってきた。
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第1章 辺境の村 編、完了です。土日のアップになっていましたが、書き溜めた分も無くなったので次のアップまで暫く間が空きます。m(__)m
お読み頂いている皆様、しばしお待ちください。
第2章は 「初めての町 シエル街」 になります。
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