第9話 ゴブリンの集落(6)

 集落の状況を整理する。空きの部屋が6つあったが、うち2つは使われている形跡がなかった。残るのは4つであるが、3隊が戻ってきたのを確認したので後もう一隊がいる可能性がある。キースおじさんが最後に対戦していた隊がその隊で殲滅してくれていれば、全てが帰ってきた可能性が高い。一隊を潰したが、残りの2隊が合流しているのが厄介だ。30匹程度の隊になったが、この内12匹は洞窟内で倒した。残りが20匹程度になって、動きが慎重になっているようだ。


 何時間が経ったのか、動くのをヤメてMPを自然回復させるため、横になって目をつぶっている。神経は張り詰めたままなので、洞窟内に動くものがあれば耳が捉える。現に、かなり離れた湧き水の流れる音が聞こえていた。何時間経っただろうか?深夜を回ったころか、ゴブリンのやってくる音が聞こえてきた。気配を殺すなどという動きができないのが、救いだ。剣を持って立ち上がる。


 相変わらず、2列縦隊で迫ってきた。洞窟の少し奥に移動したため入口からは30メートルほどの距離がある。距離が5メートルほどに迫った所で、迫っていたゴブリンが一斉にしゃがんだ。

「???」

「ゴウッ」


 動作の意味を計りかねていると、ゴブリンの頭越しにファイアボールが飛んできた。魔力を循環させていた剣で切り裂く。入口から距離が離れた分、ファイヤボールの威力は下がっているが、それでも十分な大きさのファイヤボールを切り裂いた。切り裂いた直後に2匹のゴブリンが距離を詰めこん棒を振り下ろしてきた。バックステップで躱し、空振りして体が流れた所を右のゴブリンの喉を突き、左のゴブリンの首を跳ねる。倒したゴブリンを飛び越えて後ろのゴブリンに迫る。2匹のゴブリンがくっつくようにして上段から振り下ろした剣を協力して2本のこん棒で受け止めた。

「ガキッ」


 レベルと身体強化で上回るとはいえ、2匹で協力して防がれると剣が止まる。更に、2匹が動きを合わせて剣を跳ね上げてきた。1歩下がって正眼に構え直した所で、又、ゴブリンがしゃがんだ。前のゴブリン以外は少し距離を空け、元からしゃがんでいるようだ。すぐにファイヤボールが飛んでくる。ファイヤボールを縦に切り裂いたところで、ゴブリンがしゃがんだまま、こん棒を横薙ぎに振ってきた。

「ガン」

「ガン」


 左右の脛にこん棒があたる。身体強化していても、痛いものは痛い。ダメージをもらうが、しゃがんでいるゴブリンの一体を上から切りつける。肩を切り裂いたところで、もう一体が起き上がりこん棒を振りかぶった所を胴を薙いだ。胴を薙ぎながら前に出て次のゴブリンに対峙する。ファイヤボールは詠唱が必要なので、次に来るまでは若干の時間がある。その間にできるだけ減らしたいが、この2匹も引っ付くほどの状態で守りを固めている。上から切りつけると2本で防御、右から切りつけると、こん棒を縦に持って受け止めもう一体が体を支えて飛ばされない様に踏ん張る。首を突こうと剣を引いたところで、2匹が後ろに飛びしゃがむ。次のファイヤボールが来ると思い。剣を持っていない左手に魔力を集める。

「ゴウッ」


 飛んできたファイヤボールのやや上に左手に集めた魔力をぶち当てる。魔力に属性を載せることはできないが、魔力を飛ばす事はできる。30メートルの距離を飛んで、やや勢いの衰えた所に上から無属性の魔力をぶち当てられると、ファイヤボールは下方向に跳ね返された。しゃがんでいた2匹と、やや離れた所にいた6匹のうち3匹に火が付く。

「「グギャ」」

「ググギャ」

「ギャ」

「ギギ」


 火の付いた5匹がパニックを起こして立ち上がる。前の2匹の胴を順番に薙ぎ、その後ろにいたゴブリンに迫る。

「レベルアップしました」


 ここで、レベルアップが来た。魔力弾を飛ばすのにもMPを使っていたので、ありがたい。隊列を崩したゴブリンに迫る。更にもう1匹を倒したところで、残りの3匹が後ろを向いて逃げ出した。火が付いてなかったが3匹もあおりで火傷を負っていた様だ。その3匹が逃げて行った。後ろを振り向くと煙が出ていたが火は消えていた。焦げ臭い匂いが充満する中、煙を出しているゴブリンを踏みつけて消火し近くの部屋に死体を投げ込む。奥に戻って、ゴブリン壁の後ろの定位置に戻った。

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