第4話 【閑話】振り続ける力(2)
3話、4話は、ツグトが剣を振り続けられる力をつけたエピソードです。ストーリーは、5話から続きとなりますので飛ばして貰っても大丈夫です。
------------------------------------
右に右に、回り込む。3歩動いたところで、父が体の向きを変える。更に右に右に回り込む。体の向きを変える予兆を全身で感じ取り向きを変える直前に右前に蹴り込み切りつける。父は、左に持ち替えた木刀で受け止める。打ち込みと同時にすぐに後ろに下がる。又、右に右に回りながら時折、打ち込みを続ける。攻撃を続けていると、体の向きを変えるタイミングが少し早くなる。今度は、向きを変えた瞬間に逆に左に飛んで左から横薙ぎで攻撃を加える。父は、左に持っていた剣を素早く右に掴み替え剣を受け止める。今度は左に左に回り込む方向を変える。
この攻撃を3日に渡って続け、4日目にはこの回り込む速度を上げる。ほぼ、走る速度で回り込みながら、右から左に回り込むタイミングで左に向かうフェイントをかけて、再度、右に回り込む。この時、やっと背中の一部が見えた。それまでは必ず切り込みで攻撃していたが、攻撃の届く速度を重視して片手突きを放つ。左肩に届く瞬間に体を前に倒され左肩をかすった攻撃が後ろにそれる。体のバランスを崩したところを首の後ろに剣を寸止めにされた。
「今の、攻撃はよかったぞ。一瞬、ひやりとした。攻撃を躱された時の対応を考えておけば、もっとよかったな。躱される前提で攻撃すると、躱した所に蹴りなどの追撃を加えることも可能なので、動きの確認をしておけ。今日の組打ちは終了だ。」
「はぁ、はぁ、惜しかった。でも、突きから蹴りって、どんだけハードル高いの!」
息を整えながらも、文句を言う。文句を言いながらも、体の動き方を確認する。右手での片手突きでは、右足が前に来るので左からの蹴りになる。そうなると体の正面に蹴り込むことになり、防御されるだろう。左足を出しながら左手で片手突きを放てば、左足を軸にしてそのまま右蹴りを畳み込める。そんな事を考えながら、その日の練習を終える。
その日から1週間、組打ちでは動き回ってフェイントで隙を作り、左片手突きから右回し蹴りを何度も繰り出した。しかし、左片手突きが掠ることは無くなっていた。予想された動きでは先に前に躱され、更に右回し蹴りも体を倒すことで躱される。躱されない様にローキックに変えてみると、今度はジャンプして躱された。右足だけでも、ジャンプできる様だ。
「お父さん、どこに目が付いてるの?」
「ははは、体の重心見てたらどこに蹴るかわかるよ」
足の軌道を見てた訳ではなく、体全体を目の端に捉えながら重心のかけ方で蹴りの軌道を見極められて様だ。上段の蹴りは、体をやや後ろに倒す。ローキックは体の重心はむしろ前にかけている。その違いを見切られた様だ。
数日後、同じパターンと見える攻撃を仕掛ける。左片手突きから右回し蹴りまでは同じだが、回し蹴りの軌道を途中から真上に修正する。そして、しゃがんで避けられた背中に真上からカカト落としを繰り出す。この1週間考え続けた新しいコンビネーションだ。見事に背中にヒットした。
「おお、ビックリした。ツグト今の攻撃はよかった。初めて一本取られたな。」
「・・・」
組み打ちを始めてから、初めて決まった攻撃に言葉が出なかった。この日、剣を握って初めての達成感に声を失っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます