第5話 ゴブリンの集落(2)

 育児室を出ると、薄暗い通路が続いていた。どうやら、自然の洞窟を掘って拡張し、いくつかの部屋を作っている。その中で、育児室は洞窟の最奥にあるようだ。育児室の住人は、外に出ることが無いので当然かと思う。通路を進むと右に部屋が見えてきた。ゴブリンの巣なので、扉などという物はない。壁沿いに進んで耳を澄ませる。音がしないので、そっと覗く。ゴブリンは居らず、どうやら物置部屋の様だ。入口の前に湧き水が出ていた。水を飲んで、血で汚れた手と顔を洗い剣に付いた血を洗う、手拭いで拭って一息付けた。

 物置部屋に入って、使える物がないか物色する。錆びた剣が2本あったので、その辺にあった布で巻いて外に出る。剣を振り続ける力は有るが、振り続けると剣は欠けるし、最悪は折れてしまう。替えの剣は、はっきり言ってありがたい。先ほどの湧き水のところで平たい石を探し、錆びた剣に水を掛け石で研いでいく。ある程度きれいになったところで、布を巻きなおしてベルトに引っ掛け腰の後ろに下げる。

 通路を進んでいくと左側に次の部屋を見つけた。ゴブリンの声が聞こえる。見付らない様に気を付けながら、中を覗く。大きな部屋にメスのゴブリンが3匹見えた。大きな寝床が見えるので、どうやらボス部屋の様だ。ボスは不在で、番いのメスが残っているようだ。先ほど見つけた剣が使えるか試すため2本とも布を外す。両手に持って、部屋に突入する。

 左手に持っていた剣を手前にいたゴブリンの心臓めがけて突き刺す。剣はそのままにして右手の剣を両手で掴みなおして、左後ろにいたゴブリンに右薙ぎを首に見舞う。この時、頭に声が響く。

「レベルアップしました」


 ここに来て、6レベルにアップしたようだ。

 先に心臓を刺したゴブリンが倒れて開いた隙間に体を突っ込み一番後ろのゴブリンを左袈裟切りに仕留める。

「ふぅ、やはり筋力が上がっている。大人のゴブリンでも一撃で倒せた。」


 独り言を言いながら、剣についた血を血ぶるいで落とし、最初のゴブリンに突き刺さった剣を胸に足をかけて引き抜く。物置前にあった湧き水迄戻り剣についた油を丁寧に落とし剣の状態を見る。問題無く使える事を確認して、再度、布を巻いて腰の後ろのベルトにぶら下げた。

「今は、多くのゴブリンが出払っている時間なので、この隙に早く脱出しよう」


 自分に言い聞かせて、出発した。ボス部屋にあった布を何枚かリュックに入れて通路を進んで行く。ゴブリンを切る度に剣を拭かないと油で滑って、すぐに切れなくなる。湧き水の所までいちいち戻っていたら時間の無駄なので、剣を拭く為の布が必要だったので頂いていく。

 右に部屋を見つけたので、息を殺して近づく。中を見ると出払っている様でゴブリンは居なかった。10~15匹ぐらいがが寝泊りしている様子が伺えた。更に進んでいくと、左に部屋が見える。近づくいて行くと音が聞こえる。

「ぐちゃ、ぐちゃ」

「はー、ふー」


 ゴブリンが交尾をしている様だ。中を覗くと3組のゴブリンが交尾している。見ていると気分が悪くなってくるので、素早く近くの組に後ろから近づき、上にのしかかっていたオスのゴブリンの首を横薙ぐ。首が飛ぶのを横目に下のメスの首を一刺しにする。2組のゴブリンがこちらを見たが、咄嗟には動けない様だ。次の組に走って行き、同様に首を飛ばし首を突き刺す。最後の組は起き上がってきたが、武器も近くに無いようで掴みかかってくるオスを左に躱して胴を薙ぐ。後ろのメスを頭から切り下げ終了した。この部屋にあった、布で丁寧に剣を拭いて部屋を出た。頭から切り下げるた時に、剣が刃こぼれしていた。なるべく、首を狙うようにしよう。

部屋を出て壁を背にして、休憩する。そういえば、今回はレベルアップの声が無かったなと思いながらギルドカードを確認する。

<ツグト>

レベル:6

HP:9

MP:15


 HPよりMPの上がりが早い。

「うん?、MPって」


 ここで、魔力について父から教わったことを思いだす。魔法が使えないのは、放出した魔力に属性を付けるのが下手なだけで、魔力を体に循環させれば、身体強化ができる。又、魔力に火などの属性を載せて放出が出来なくても、魔力自体を放出することはできる。ただ、魔力をぶつける行為は手で殴るのと大差がない。又、剣など持っているものに魔力を纏わせる事は可能だ。魔力を循環させるだけならMPが1しか無くてもできるので、練習だけはしていた。その状態で、動くと魔力を消費するので使えなかったので忘れていた。剣に魔力を纏わせる事ができれば、刃こぼれもしなくなる。魔力を流すと魔力を消費するため、こちらの練習はあまりしていない。


 魔力を使って、身体強化をかけ剣を振ってみる。体が軽い。剣に魔力を流してみて、素振りをしてみた。5分程、素振りを続けてみて、ギルドカードを確認すると、MP14/15 と表示が変わっていた。燃費が悪すぎる。身体強化はいざという時に置いておくことにして、剣に魔力を流してみる。手に魔力を集め、剣に移す。一気に魔力が流れ込んでいく。剣から、魔力が漏れ出ている。駄々洩れだ。流す魔力を弱め、漏れない程度まで落とす。うまくできたが、こちらも剣に魔力流し続けて素振りをすると数分程で、MPを1消費していた。

 剣の振る時には、剣があたる時にだけ力を入れる練習を何度も繰り返してきた。剣があたる時にだけ、力を入れる要領で同時に魔力流す事はできないだろうか?素振りをしながら一時的に魔力を流してみる。魔力が流れるのには、時間が必要で振り上げた時点で流し込み始めないとうまくタイミングが合わせられない。これでは、MPの消費が抑えられない。最終的にMP10/15になっていた。しかし、これ以上悩んでいる時間もないので、剣を振り始めを起点にして振ることとして、次の部屋に向かう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る