第40話

 僕らは遅めのお昼ご飯を食べ終えると、お風呂に入ることにした。

 部屋に置いてあるタオルを探すことにした。

 すると、タオルを探している夕が声を上げた。

 「あ!!」

 「どうかした?」

 夕の開けた棚をのぞき込んだ。そこには、浴衣が入っていた。

 「せっかくなら着てみようよ」

 浴衣を取り出しうれしそうに体に合わせている。

 「いいじゃない」

 「じゃあ、君も着なよ」

 そう言って手に持っていた浴衣を渡した。

 「こっちの方がサイズあってかも」

 そう言って、もう一枚の方を取り出した。

 「じゃあ、着替えるから。外で待って」

 「え?お風呂で着替えないの」

 そう尋ねる。

 「うん。どうせなら着て旅館歩きたいなって」

 「わかった、着替え終わったら声かけてね」

 僕は了承して、部屋の外に出た。

 しばらく待つ扉が開いた。

 「おまたせ」

 部屋から出てきた夕を見て、僕は息を呑んだ。

 「始めてきたから時間かかっちゃた」

 夕は頬を赤く染めて、こちらを見上げる。

 「どうかな」

 「に、似合ってる」

 今日は学校スタイルのメガネに朱色の着物、頭の高い位置でまとめられた黒い髪。日頃見ないその格好に少し口ごもってしまった。

 「そっか。よかった」

 夕は、にへらっと笑った。

 「じゃ、次は君ね」

 そう言って、夕は僕の背中を押し部屋に押し込む。

 僕はそうして部屋に入り、棚から着物を取り出し服を脱ぐ。

 正直正しい着かたなど知らない、とりあえずスマホで調べて見様見真似で着てみた。

 初めてにしてはなかなか着れたと思う。少し結び目が気になるが、まあ大丈夫だろう。僕は部屋を出て外で待つ夕に声をかけた。

 「おまたせ」

 「おおお」

 夕は、そう声を上げた。

 「あれ?どこかおかしいかな」

 「いや、似合ってる」

 そう言うと夕は、少し頬が紅潮した。

 「行こっか」

 何かを誤魔化すように夕は、僕の手を握り歩き出す。

 「う、うん」

 僕は何だろと思ったが、すぐに夕の歩幅の合わせて歩いた。

 旅館の中は広く、中庭なんかもあった。その奥の隠れた場所に露天風呂があるみたいだ。

 「どうしようか?まず露天風呂入る?」

 「そうだね、でもまず大浴場見たいかも」

 夕の提案の僕はうなずき、また旅館内を歩く。

 「きれいだね。それになんかすごい、こう風情がある感じ」

 夕は言葉をひねり出しそういった。

 僕はつい笑ってしまい。

 「なにそれ」

 「笑うな」

 僕らは小さく笑いながら廊下を歩く。

 その頃にはもう手を繋いでいること気にすることなく、昔のように二人で歩いた。

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