第37話

 目的地につくと、強く日差しが差し込み立っていいるだけで体力が奪われる感じがした。しかし、家に近くでは味わうことが出来ないのような自然を全身で感じるとこが出来る。

 「うーーーん。ついた」

 夕は隣で元気そうにのびをする。

 ここからはバスに乗って、宿に向かう。バスまで、まだ時間がある。

 「ちょっと、このあたり見て回ろうか」

 「うん」

 夕は元気よく返事をした。

 駅の近くには、シャッターの降りた店の多い商店街がある。前、このあたりを調べたとき、温泉全盛期の頃ずいぶんと栄えていたみたいだ。

 しかし、時がたつにつれ若者が減り寂れていった。そして今行政が手を入れながら、少しずつ昔の面影を戻しているらしい。

 でも、まだ僕の目には少し寂しい感じがした。

 「商店街から見ようか」

 「うん」

 そして、駅を出たときすると夕のはまた手を絡めてきた。

 「いいかな?」

 夕は少し首をかしげて聞く。

 そんなの、断れるわけない。

 「うん。いいよ」

 何回繰り返そうときっと、慣れることは思った。


 商店街はやはり、人は少ない。

 お昼を回ろうとしていたから、惣菜なんかが売ってる店は会話が聞こえてきて、その会話に隣の店の人が入る。

 電車で少し飴を舐めただけでお腹がすいてる。それは、夕もお同じだろう。

 「なんか、食べようか」

 「うん。何がいいかな」

 夕は周りを見渡し、食べ物を探す。

 ここはこのあたりで一番栄えているみたいだ。

 「私あれ食べたい」

 夕が指さしたのはお肉屋だった。そこにはの幟が掲げけてありコロッケと書かれていた。

 「良いね」

 僕らはお肉屋の前まで行く。

 「いらっしゃい」

 店主らしき、おじさんが声をかける。

 基本手本的には生肉だが、端に方にコロッケの他にメンチカツなどがおいてあった。

 どれも値段は安く買いやすい物で、どれも大きさがありそうだ。

 「私、コロッケ食べたいかも」

 夕は目を輝かせながら、食品棚を見る。

 「温泉にきたのかい?」

 「はい」

 店主さんが持っていた大きいバックを見たからか、そう声をかけてきた。やはり、このあたりで観光するところは温泉くらいなのか。店主さんは一発で言い当てて見せた。

 「いいね。カップルで」

 店主さんはにこやかにそう言ったので顔が熱くなった。

 「つきあっ」

 「はい。ずっと楽しみにしてたんです」

 僕が否定しようとしたとき、声を被せるように夕が話し。

 「コロッケとメンチカツ二つずつお願いします」 

 注文も済ませてしまった。

 「はいよ。ぜんぶで460円ね」

 「はい」

 僕があっけにとられている間に、会計も終わっていた。そして、夕は早足でその場を離れた。

 「温泉楽しんでね」

 店主さんは最後まで優しい人だった。


 バス停に帰ってきた。

 「嫌だった?」

 夕は不安そうにこちらを伺うように見る。

 嫌なわけない。むしろ、うれしいくらいだ。

 「夕は。嫌じゃないの」

 怖いけど、不思議とすっとその言葉が出た。

 夕は一呼吸する。夕といるといつもこうなる。さがしくなる、いつもと違う緊張。

 「嫌じゃない」

 「っ」

 呼吸が止まる。

 汗がほほをつたり、生唾を呑む。

 すると、ぶるるるると音を立ててバスがきた。

 買った惣菜は一口も食べれなかった。

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