第33話

 今日は夕と約束した買い物する日。僕はショッピングモールのバス停で待っていた。

 集合時間よりも十五分ぐらい早く着いてしまった。はじめは、僕の家で待ち合わせする予定だったが、夕がどうしても家で集合は嫌だといい、なのでここバス停で待ち合わせとなった。

 まだ夕は来る気配がない。

 僕はスマホにメモした買う物をに目を通す。

 ・旅行用の小さいサイズの洗顔

 ・服を入れるジッパー袋

 書き出してみたら意外と買うのもはなかった。

 旅行は二泊三日持って行くのものは大してない。それに旅館に泊まるのだ、たいていな物は置いてあるし、せいぜい荷物は服くらいだろう。

 「お持たせ。まった?」

 そういろいろ考えているとバスが着て夕が降りてきた。

 「いや、全然待ってないよ」

 すると、夕は安心したように胸をなで下ろした。

 待つといっても、まだ集合時間前だ。

 夕は休日の姿。金髪で現れた。白い半袖から見える白い肌、下はゆったりとした黒いズボンを履いていた。

 「じゃあ、行こうか」

 と、歩き出そうとしたら、夕は僕の腕を掴んだ。

 「せっかくだからさ」

 そう言って、夕はするっと僕の手にからめてきた。

 何がせっかくなのか全くわからないが、ただ恥ずかしそうに顔を赤らめながら下唇を少しかみながら。何かをぽつりとつぶやくが僕の耳には入らない。それは僕もまた顔からマグマが出そうなほどに赤く沸騰していたからだ。

 「いこうか」

 僕は夕の顔を見ることなく、夕の手を引くように歩き出した。

 次は確かに聞こえた。

 満足げに返事をする夕の声が。


 きっと、クラスに誰かに見られた誤解を生むだろう。しかし、それは今の姿が夕だとわかる人物に限るが。

 ショッピングモールは平日も重なってかそこまで混んでいなかった。

 「見たいとこある?」

 夕は、指を真っ直ぐ指す。

 「まず、あそこに行きたい」

 かわいいワンピースを着たマネキンが置いてあるショップだ。

 「よくあそこで買うんだ」

 夕は目を輝かせながら、はやる気持ちを押されるように声を弾ませる。

 「じゃあ、行こうか」

 「うん」

 無邪気に夕はうなずき、僕の手を引くように歩き出す。

 ショップは明るく、また服も明るめの服が多く今の季節にちょうど良さそうだ。

 夕はショップに入るや否や早速服を手に取り吟味する。

 「ねえ、こっちとこっち。君はどっちが好き?」

 夕はそう言うと、二つの服を見せる。

 青のワンピースと白のワンピース。

 どちらもきっと、夕になら似合うだろうその中で二つのうち一つの選ぶのは難しい。

 「うーんと」

 首をかしげてると、夕は思いついたように店員さんに話しかけに行く。

 「試着してみるか見て決めて」

 そう言うと返事を聴くまもなく、夕は試着室のカーテンを締めた。

 しばらく待つと、カーテンが開き夕が出てきた。

 「どうかな?」

 まずは、青のワンピースを着て見せてくれた。淡い青は白い肌を映えさせる。

 「こっち覚えておいて」

 と言って夕はまたカーテンを閉める。またしばらくして、カーテンが開いた。

 「こっち、どっちが好き?」

 白は全体を整えつつ、その金髪を華やかに見せてくれる。

 どちらも似合ってる。それでも悩むのは聞き方が答えを出すのに躊躇いを覚えさせる。

 「どっちも、あんまりかな?」

 夕は不安な表情を浮かべ、スカート部分をつまむ。

 その顔を見て僕は息を呑んで。

 「し、白のほうが好き」

 僕が言うと、夕は嬉しそうに頬を赤めて。

 「私もこっちがいいなって思ってたから、こっちにする。君にかわいいって思ってほしいから」

 そう言いカーテンを閉めた。

 僕はその場に、座り込みため息をついた。

 「何だよそれ」

 そんなのまるで。まるで。

 なんかわかるかもしれないぞ。

 呉の言葉の意味が都合がいいように、解釈してしまいそうになる。

 夕は何を考えてるのだろうか。

 僕は、またため息をつき立ち上がり夕が試着室から出るのを待った。


 「今日ありがとう」

 買い物を終えて、僕らは帰路に就く。

 手を繋いでバスが来るのを待っていた。

 夕は服を買い、僕は旅行に必要な小物を買った。

 「こちらこそ。僕から誘ったわけだし」

 夕はいたずらに笑い。

 「そうだったね」

 まだ、繋いだ手から熱を感じ。胸は鳴りっぱなしだ。

 そのたびに僕は夕に恋しているのだと自覚させられる。

 夕はどうだろうか。

 手を繋いでドキドキしてくれているのだろうか。

 顔は見るにな勇気が足りない。

 「旅行楽しみ。今からドキドキして」

 夕はそっと胸に手を当てる。

 「君は?どう?」

 「僕も楽しみ」

 「そっか、なら良かった」

 夕は安心したように呟く。

 この感情はいつまで抑えておけるだろうか。

 僕また進歩できないでいた。

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