第30話

 きっと、運が悪かったんだと思う。

 学校の帰り、一人でコンビニに行きプリンを買って帰ろうとしたのが間違えだったのかもしれない。

 「夕ちゃんは、好きなの?」

 なぜならそこに、あの女がいたからだ。

 「なんですか、急に」

 「いや、昨日の感じみたら誰でもそう思うよ。普通」

 そう言うと、さっき買っていた唐揚げを食べる。

 「別に、あなたには関係ないです」

 「えー、いいじゃん。もし夕ちゃんが好きなら協力してあげるのに」

 「別にあなたに協力してもらわなくてもいいです」

 「プリプリしないで。食べる?」

 大森さんは手に持っていた唐揚げを差し出したが、私はぷいっと顔を背ける。

 なぜ私がこんなに大森さんを邪険にしているかというと、初めてだったのだ。幼馴染くんが(親戚の以外の)女の子と遊びに行くなんて。

 少なくとも私と会ってからなかったはずだ。

 だから、余裕を持って接することができた。

 だが、いきなりこんな美少女が現れて誰が冷静でいられるだろうか。

 大森さんは右手に持ったビニール袋からアメリカンドッグを無邪気にかじった。

 それにいまいち何を考えているか掴めない。

 フワフワしているようで、その目はしっかりしているように見える。

 掴みどころがない人とは、こういう人を言うのだろう。

 「まあ、夕ちゃんが思うようなことはしないからさ」

 大森さんはアメリカンドッグを食べ終え、ゴミ箱にビニール袋に入れて捨てた。

 「安心してくれ」

 ニコッと笑うと、手をひらひら振りコンビニを後にした。

 その余裕がある背中に、少し嫉妬してしまう。

 年上の余裕なのか。

 私は苛立ちを抱えながらコンビニ戻り。

 「アメリカンドッグと唐揚げください」

 少し自棄食いした。


 「夕もっと食べろよ」

 さっき食べた、アメリカンドッグと唐揚げのせいで夕食は少ししか食べれずお母さんに睨まれていた。

 「お腹いっぱい」

 「はあ?せっかくオムライス作ってやったのに」

 今日は、お母さんが早く帰ってきていて夕食を作っていた。

 と言っても、お母さんは料理が下手だ。

 今日もオムライスと言い張っているが、どう見てもケチャップライスのチャーハンにしか見えない。

 「さては夕なんか食ってきたろ」

 「うっ」

 全くの図星で反論する余地がなかった。

 「はぁ、食ったら初めからそう言えよ」

 すると、お母さんは立ち上がり私のオムライスを取り上げると。

 「ラップしとくから、腹減ったら食べろよ。育ち盛りなんだから」

 「うん、ありがとう」

 そう言い残し私は自室に戻って、今日の授業の復習のした。

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