第28話

 日曜日。

 僕の家の、最寄り駅の屋外時計を待ち合わせ場所にした。

 この間、コンビニで鉢合わせた時薄々感じていたが、やはり家が近いみたいだ。


 僕はお昼ごはんを食べ終え、待ち合わせまでまだ30分程時間があったが、家を出ることにした。

 僕の好きな漫画を何冊かショルダーバッグに詰めて、家を出た。


 最寄り駅は、そこまで大きい訳では無いため人はあまりいない。

 でも、ここから出ているバスに乗ると電車で行くより安く隣駅の栄えているとこに行けて、全く人がいないわけではない。


 駅につくと、屋外時計の下に白いワンピースを着た女性が立っていた。

 その女性がこちらに目を向けると、腕をいっぱいに振って近づいて来た。

 「お~い。早いね」

 「大森さんも」

 ワンピースを着ていたのは、大森さんだった。

 制服姿とは随分と雰囲気が違い、一瞬誰か分からなかった。

 「まあね、朝は父が家にいてね早く出てきたんだ」

 やらやら、といった感じで手を持ち上げて言った。

 大森さんはお父さんと仲が悪いのだろうか。


 「じゃあ、私の家行く前にちょっと本屋でも周らないかい?」

 「いいですね」

 ちょうど欲しい、本の続刊がでていて本屋に行きたいと思っていたのですぐに返事した。


 僕らはバスに乗り隣駅まで行き、本屋の建ち並ぶ通りに来た。

 オタクなら無条件で興奮してしまうような、場所だ。

 ここは商店街なのだが、八百屋や肉屋みたい店は少ない。

 パソコンのパーツだったり、カード屋だったりとオタクが喜ぶ物が多い。

 他にも、若者の流行りの食べ物屋だったりもあり。

 下手したら、駅前のデパートより賑わっている。

 夕のあのギャル姿を見たのもここだった。


 「どこか周ろうか?」

 大森さんは、興奮気味に腕を振り目を輝かせる。

 「新刊の漫画が欲しいです」

 「お、私もそれ見たから。まずはアリメートからだ」

 大森さんは、そう高らかに言った。


 僕らは何店舗か周り、そこでも好きな本の話をした。

 僕が今日買おうとしていた本の、一巻目を大森さんも買っていた。

 

 「ふーう、ナゾの達成感がある」

 僕らは、たまたま目に入ったカフェで一息ついていた。

 テラス席のある、僕一人では絶対に入らないようなおしゃれなカフェ。

 大森さんはアイスティーを一口飲む。

 「そうですね」

 僕も一口アイスコーヒを飲む。

 今日はかなり暑かったので、喉にアイスコーヒは救世主のようにも感じる。

 「いやー、すまないね。家で遊ぼうと誘っておきながら」

 「いえ、大丈夫ですよ。ちょうど僕も欲しい本ありましたし」

 「なら良かった」

 大森さんは安心したように笑った。

 「父が家にいると色々不都合でね」

 大森さんは苦笑いした。

 「お父さんと仲悪いんですか?」

 あんまり聞いていいことではないと、思っても聞いてしまった。

 「いや、仲が悪いわけじゃないんだ。ただ」

 大森さんは珍しく口ごもった。

 「ちょっと過保護すぎてね」

 大森さんは再び苦笑いした。

 「なるほど」

 「ああ。でも、もうじき仕事行くと思うから。もうしばらく、ここでいいかい?」

 不安そうに尋ねる。

 「はい、いいですよ」

 僕はそう答えた。


 しばらく話していると、コーヒを飲んだから尿意を模様し僕は席を立ちトイレに向かった。

 

 そうして、帰ってきたらそこには困ったような顔をした大森さんと、鬼の形相の金髪の夕がいた。

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