第27話

 教室に入ると、我がもの顔で机を運ぶ夕がいて。

 夕が準備した机で、僕は夕と顔を合わせながらご飯を食べていた。

 今日夕は、僕の行ったコンビニとは違うコンビニのマークが付いたおにぎりを食べる。

 その様子には、昨日何もなかったかのように涼し気な表情をしている。

 「朝どこにいたのよ」

 「え?あ、朝」

 「うん。ってか、何キョドってるの?」

 ジットっと、何か疑っているような視線をこちらに向ける。

 「ちょっとコンビニに用があって」

 「ふ~ん。なら私のこと待っててよ」

 私もコンビニ行きたかったのに。

 ぼやくように呟いた。

 そんなこと言われても誘えるわけない。

 夕はまったく気にしていないようだが、昨日の今日で切り替えれるほど僕は切り替えが早くない。

 だが、夕はああいったこと何回も経験しているだろうから、簡単に切り替えれるのだろう。


 「ねえ、そのつくね美味しそうね」

 夕が身を乗り出し、お弁当を覗き込む。

 「あ、食べる?」

 夕は母さんのお弁当を断って、コンビニのおにぎりなので少し味気ないのだろう。

 羨ましいそうにこちらを見るので、お弁当を差し出す。

 「いいの?じゃあ、あ~~ん」

 ぱあっと顔を明るくさせると、その小さな口を開く。

 「え?」

 僕はてっきり自分で食べるにだと思っていて、その夕の行動に困惑していると。

 「はやくひてー」

 僕を急かす。そして、恐る恐る食べさせた。

 「う~ん美味しい」

 夕は眩しい笑顔で頬に手をやる。

 「やっぱ、おばさんのご飯は美味しい。私も、お弁当貰えばよかった」

 「お願いしなかったの?」

 「うん。学校終わったら直接家帰るつもりだったし」

 夕は後悔したかのように、ため息を付いた。

 「もう一つあげよっか?」

 試しに言ってみると、夕は再び目を輝かせ頷き口を開けた。

 僕は夕の口に卵焼きを入れた。



 ここで一つ疑問が浮かんだ。

 もしかしたら、昨日の発言の真意を理解していないのではないか。と。

 今の態度を見る限りそう思えてしまう。

 それか、全く気にしていないのか。

 僕は、ああいった事を言ったのはあれが初めてで、夕がどう感じて、今何を思っているか、まるで察しがつかない。

 実際、向こうから話しかけてくることはないと思っていたのに、今こうして無理やりだがご飯に誘われている。


 もしかしたら、夕は鈍感なのかもしれない。

 なら、未練がましいかもしれないが僕にもまだチャンスがあるのかもしれない。

 ちゃんと、次は言葉にして伝える。

 でも、その前に夕の中の僕の好感度を上げなければいけない。


 夕の中の僕の好感度はきっと低いだろう。

 上げるためには何をするべきだろうか。

 考えても、答えなんか見つからない。

 それもそうだ。

 僕には女性経験はおろか、女友達だって夕と大森さんぐらいしかないない。

 相談できる相手なんて……。

 


 大森さん。

 そうだ、大森さんだ。

 ちょうど昨日遊びに誘ってもらったんだ。

 それに大森さんは、なんとなく恋愛経験豊富そうだ。


 僕は、学校が終わるとすぐに大森さんに連絡して日曜日に会う約束をした。

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