第26話
「まあ、それはそうと、明後日暇かな?」
談笑をしていた時、大森さんが言った。
「え、はい。予定はないですけど」
「なら、うち来ないかい?」
大森さんの発言はいつも突拍子も無く、僕の目を点にさせる。
「え?大森さんの家ですか?」
「ああ。キルクラの話をしていたらた、観たくなってね」
大森さんは、恥ずかしそうに笑う。
誘いは嬉しい。
大森さんとは、アニメや漫画の話が合う。
まだ、話したいことは山ほどある。しかし、夕のことがまだ解決していないことが気がかりで心から楽しめていない。
僕が考えていると。
大森さんがふと時計を見て。
「おっと、もう行かないと遅刻してしまうね。じゃあ、後でどうするか連絡をおくれ」
大森さんは慌てて、リュックを背負うとこちらを見て。
「まあ、あまり考えすぎずちょっとした息抜き程度の気持ちでね。じゃあ」
手をひらっとふり、ニコっと笑ってコンビニを後にした。
「息抜きか」
僕は反芻するように呟き、少しあとにコンビニを後にした。
学校に着いたのは遅刻ギリギリだった。
あんなに早く出たのに、遅刻ギリギリとは。
自分でも笑ってしまう。
下駄箱には慌てた様子で上履きに履き替える、生徒が何人かまだいる。
僕もそれにまじるように、上履きに履き替えていると。
「遅かったね」
声がして顔をあげると、夕だった。
少し苛立った様子で、腕を組み仁王立ちしている。
「ゆ、夕…」
昨日のこともあり、面と向かって話すのは今は遠慮したい。
だが、僕の思いは裏腹に夕は。
「どこにいたか知らないけど、今日の昼休み教室で待ってて」
「え?なんで?」
「なんででも」
夕はそう言い捨てて、その場を走り去った。
僕は夕の言動を理解できないでいた。
授業も4時間目まで終わり、お昼休みに入るとすぐに夕が僕の席まできた。
「ほら、お弁当持って」
夕は僕のカバンから、母さんが作ってくれた弁当を取り出す。
「ちょっと待って」
先に歩き出した夕を追いかける。
「ついてきたら返します〜」
「ちょっと」
普段から絡んでいたわけではないので、変に目立ってしまった。
僕は視線を感じながら、夕を追いかけるため教室を出た。
3階、一番奥に来た。
3階は部室が多く立ち並び、放課後だったりこういった休み時間には少なからず生徒が集まる。
それでも、うちの学校は部活が多い訳では無い。運動部なんかは校内部室はなく、運動場の端にある小さなアパートみたいなとこにあり。半分以上は、空き教室になっている。
かと言って、完全に開放されているかと言ったらそうではない。
2〜3教室は開放されているが、半分は鍵がかかっている。
そんな場所まで、来るとは夕の意図が読めない状態で奥まで来た。
もちろんここは開放されていない教室。
でも、夕が入っていったのを遠目だったが見ていた。
僕は引き戸に手をかけ、開ける。
「あ、来た」
机を向かい合うようにして、お弁当を広げる夕がいた。
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