第25話

 昨日は眠れなかった。

 ベットで輾転反側を繰り返すばかり。

 こんな夜はいつもなら、勉強をするのだが今日はそんな気分にもなれなかった。


 言い訳がましいいが、告白したわけじゃない。

 気まずくなったわけでもない。

 ただ、思ったことを口に出しただけ。

 そう思うが、不思議なことに心の芯ではちゃんと理解してるのだから余計惨めに感じる。


 でも、不思議と涙は出なかった。

 多分こうなるってわかっていたからだと思う。

 夕は高嶺の花だから、いつでもみんなの憧れだから。

 僕にはあまりにも似合わない。


 相変わらず寝れずにいると、スマホがなった。

 明日でも良かったが、気を紛らそうと見てみると、どうやら呉からグループメッセの誘いだった。

 「なんだろう?」

 いまいち気力が出ないが、何のグループか聞いてみる。

 返事はすぐに来た。

 どうやら、大森さんが僕の連絡先を聞きたいらしい。

 いきなり帰って、失礼なことをしたと負い目を感じていたのもあり僕はグループに入り。大森さんと連絡先を交換した。


 その日は、特にやり取りをするわけではなく、ただ交換しただけといった感じだ。

 気がつくと夜が明けていて、いつもと同じ朝を迎えた。

 少し蒸し暑いそんな朝。憂鬱な金曜日の朝。

 僕は重い体を起こし、制服へと着替える。

 夕と時間が被らないよう、いつもより1時間も早くご飯を食べて家を出た。

 こんな小細工しても、嫌でも教室で顔を合わせるだから仕方ないが、少し気が楽だった。


 早く着いても仕方ないので、学校近くのコンビニで値引きシールの貼ってあったチーズ蒸しパンを齧って時間を潰していると。

 「おやおや!そこにいるのは」

 イートインスペースで食べていると、後ろから声が聞こえてきて振り返ると。

 「やっぱり、やあやあ、昨日ぶりだね」

 と、半袖の白いセーラー服を着た大森さんが、手をひらひらと振っている。

 「あ、おはようございます」

 「おは。何してるの?朝ごはん?」

 「まあ、そんなもんです」

 「じゃあ、ちょっと待てて。私も何買ってくるから」

 そう言うと、早足で棚ある方に消えていった。


 しばらく待っていると、菓子パンなどを抱えて戻ってきた。

 「ホットスナックまだ無かった」

 肩を落とし、僕の横に座り焼きそばを齧った。

 「朝ごはん食べなかったんですか?」

 「え?食べたよ。でも、お腹いっぱいにならないからね~」

 そう言って、幸せそうにパンを頬張る。

 驚いたのは、机にはまだパンが4つおにぎりが5つもあることだ。

 これで朝ごはんも食べてきたとは、とても思えなかった。

 「ねえねえ、昨日のキルクラ見た?」

 「いえ、まだ」

 キルクラとは深夜アニメのことだ。昨日話した時、お互い見ているということで盛り上がった。

 「えー!早く観たほうがいいよ。まじ、尊いから。私はもう3回観たよ。だから寝てなくてさ。今、目ギンギン」

 確かに、目が充血している。

 「家に帰ったら、観ますね」

 今の僕には、少しきついテンションでついていけない。

 「なーんだ。元気なかったから、君も夜更かししてたのかと思った」

 「そうですかね?」

 「うん。どうかしたかい?お姉さんに話してみなさい」

 大森さんは、ぽんっと胸を叩いた。

 大森さんはそう言ってくれるが、昨日初めて会ったのに、そんなのこと言えるわけない。

 僕が黙っていると、大森さんはこちらを向いて。

 「ま、話したくなったら言ってね。お姉さんの胸はいつでもあいてるから」

 再び胸を叩き、ウインクした。

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