第17話
体の節々が痛く、目が覚めた。
どうやら、勉強をしていて寝落ちしてしまったようだ。
顔にはノートの跡がついていた。
伸びをすると、背骨がなり力が抜ける。
部屋を見てみると、夕はいなくなっていた。
昨日の記憶は曖昧だが、夕にベットを貸した気がする。
僕が寝落ちしてから、自分の部屋に戻ったみたいだ。
スマホのをつけると、7時半を指していた。
「急がないと」
今日も学校だ。
登校時間が、迫っている。僕は、制服に着替え、机の教科書類をリュックに押し込みリビングに降りた。
「おはよ」
りんとした様子で、夕はコーヒーを飲んでいた。
「あ、おはよ」
「今日もギリギリね。はい、食パン」
母さんが、食パンを机に置いた。
「うん」
僕は、何も付けずに食パンを飲みこんだ。
「ゆっくり食べなさいよ」
じっとした目で、こちらを見る夕。
「う、ごめん」
一言謝り、僕は洗面台で歯を磨き顔を洗って戻って来た。
夕はバックを持って、いつでも学校に行けるみたいだ。
「おまたせ」
「うん。行くわよ」
夕は、母さんに一言言うと先に家を出た。
僕もそれを追いかけるように、家を出た。
僕の数歩先を歩く夕。
「ね?ねえ」
「・・・・」
聞こえているはずなのに、返事がない。
もしかして、怒ってる?
全く見に覚えがないが、そんな気までしてきた。
すると、夕が振り向き。
「何?」
その様子は、怒っている感じではなかった。
僕は、そっと胸をなで下ろす。
「なんでもない」
「え?なにそれ」
夕は少し笑い、再び歩き出した。
僕らは、学校に着くまで雑談を楽しんだ。
授業が終わり、前の席の呉が振り向き。
「なあ、明日は暇?」
「多分暇だけど」
明日は特に用事はなかったはずだ。
すると、呉はニッと笑い。
「実はな、明日は他校の女子とカラオケで遊ぶんだけど一緒にどうだ?」
「他校の?」
そう提案され、少し考えた。
それは、いわゆる合コンみたいなものだろう。
僕は、夕以外の女の子と話したことなんてそんなにない。
まあ、女の子興味がないわけじゃないけど、どうも一歩が踏みでない。
そう考えると、いいきっかけになるかもしれない。
「じゃあ・・・・」
行こうかな。
と、言おうとした時ふと夕の顔が浮かんだ。
なんでかは、わからない。
でも、夕に黙っていくのは気が引けた。
「ちょっと、考えさせて」
「おう、明日まで考えていいからな」
呉はニッと笑った。
「よし、帰ろうぜ」
「うん」
僕らは、リュックを背負い教室を出ようとしたとき。
「待ちなさい」
夕が話しかけて来た。
「委員長どうした?」
呉が聞くと、夕は。
「呉君じゃないわ。君、先生が呼んでいたわよ」
「え?僕?」
「おい、何したんだよ」
「全く、身に覚えがないがないけど」
そう言うと、呉は肩を落とし。
「早く行って来い、待っとくから」
「うん、ありがとう」
呉はため息をつき、席に戻ろうとしたら。
夕が止めた。
「きっと、遅くなるから呉君は先に帰ったほうがいいわ」
「え?そうなの?」
呉が、夕の方を見て確認すると夕は頷いた。
「じゃあ、先帰るわ。すまんな」
呉は申し訳無さそうにして言った。
「うんん、いいよ。じゃあ、明日ね」
「おう」
僕は、手を降って呉を見送った。
僕も、早く先生のもとに行かないと。
そう思って、教室を出て職員室に向かった。
職員室の滞在時間は、先生と話したのも入れて2分も行っていないだろう。
なぜって、そもそも呼ばれていなかったのだからだ。
先生が、不思議そうにこちらを見てきたときは少し恥ずかしかった。
「失礼しました」
職員室を出ると、すぐ横に夕がいた。
「どうだった?」
「どうだったって。そもそも呼んでないって。どういう事?」
夕は少し笑って。
「そっか。じゃあ、私の勘違いだったかも」
いたずらに笑った。
「え?なに?」
そう聞いたときには、夕は歩き出していた。
「ほら、帰るわよ」
夕は少し声を弾ませる。
僕は、混乱した頭を無理やり納得させ夕を追いかけた。
その夜。
今日も昨日と同様の、二人並んで勉強をしていた。
シャーペンを走らせる音が、部屋内に響く。
紙が擦れ、ページを捲る音も。
そして、入浴済みということも昨日と同じ。
かれこれ、すでに2時間近く勉強をしていた。
正直、始めは夕からする甘い香りのせいで全然集中できなかった。
が、今や勉強に集中しないと変に意識してしまうと思い、勉強に打ち込めた。
「今何時?」
先にそういったのは夕だった。
「もうじき、12時だね。もう寝ないと」
時間を知ってしまったら、あくびが出た。
「そうね」
夕も立ち上がり伸びをした。
すると、服が上がり綺麗なお腹の肌が見えた。
僕は、目をそらす。
そして、今日呉れと話していた思い出した。
「「ねえ?」」
「「え?」」
思いっきり、夕と被ってしまった。
それが、同仕様もないぐらい面白く二人して笑った。
「あ、はは。息ピッタリね」
「う、うん」
夕は目尻に浮かべた涙を拭き取り言った。
「先、君から良いわよ」
そう言われ、僕から話をすることにした。
まあ、僕の話をしたあとに夕の話を聞けばいい。
そう思ったからだ。
「今日さ、呉から明日カラオケ行かないか?って、誘われたんだ」
「そうなの?」
夕は、だから何?と言いたげな顔でこちらを見る。
「それが、他校の女の子も来るみたいで。多分、合コンみたいなやつ。行ってもいいかな?」
「え?」
まあ、驚かれるのは分かっていた。
これを、夕に聞いてもしかたないって。
でも、なぜだか許可を取らないと、どこか後ろめたさを感じる。
そう思った。
「・・・・」
夕は、何も言わなかった。
「ゆ、夕?」
僕は、夕の顔を見上げた。
夕は、震えていた。
そして手をギュッと結ぶと。
「勝手にすれば」
怒鳴りつけるように言った。
「え?夕?」
「なんで、そんなこと私に聞くの?行きたきゃ、勝手にすれば。何?行かないでって、言えばいいわけ?当てつけなの?ここで駄目って言ったら、行かないの?」
途中途中、詰まりながら言った。
「ちょ、ちょっと、落ち着いて」
僕は、なだめようと夕の肩を触ると。
「触らないで」
パンっと、手を払われた。
じーっと、手が痛む。
「ご、ごめん」
僕は、謝った。
地雷を踏んだようだ。
「え?いや・・・・私こそ・・・・。私寝るから。おやすみ」
夕は逃げるように、部屋を出た。
僕には、なんで夕があそこまで怒ったのか分からなかった。
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