第16話

 今日から、両親が出張です。

 私は、3日間ぐらい一人でも大丈夫と言った。でも、女の子一人だと心配だということで、幼馴染の家に泊まることになった。

 それは、ある意味棚ぼただった。

 一つ手間が省けたというものだ。

 私は、この出張の話を聞いたときから一つの作戦を企てていた。

 この、チャンスを棒に振るわけにはいけない。

 なので、この間の誕生日以上に準備をする。

 私は、服入れの奥の奥に置いた、自分でも見るのが恥ずかしくなるような下着を取り出す。

 昔、勢いで買ってしまって、一度も着ていない下着。

 「つ、ついに」

 私は、生唾を呑み覚悟を決めた。

 それに、ノースリーブの服にショートパンツをボストンバックに詰めた。

 「い、行くぞ。私」

 拳を握り、自分を鼓舞した。


 通学の時、幼馴染の口からお泊まりの話は出なかった。

 もしかして、意識していなのかと凹みそうになった。が、あまり気にしないようにした。

 放課後。

 一緒に帰ろうと幼馴染を探していた。

 教室にはいなかったが、リュックが置いてあったのでまだ学校にいる。

 どこに行ったのか、考えていると先生が話しかけてきた。

 その時、日直が体育倉庫で作業していることを聞いた。

 「あ、今日あいつだ」

 そう思い、体育倉庫に急ぐとやはりいた。

 正直、体育倉庫は苦手だ。

 ホコリぽっくて、苦しくなる。

 でも、幼馴染と作業しているとあっという間に終わっていた。

 そのことで、幼馴染は気にしてようだが私は答えを濁す。

 逆になんで、幼馴染は気づかないんだろう。


 帰り道、幼馴染に泊まるとこを伝えると凄く驚いていた。どうやら、知らなかったみたいだ。

 だから、朝言わなかったのか。

 少し安心した。


 家に着くと、おばさんが出迎えてくれた。

 そして、部屋を用意してくれていたみたいで案内もしてくれた。

 しかも、その部屋が幼馴染の隣だった。

 これって、そういうことですか?


 とりあえず、制服から持ってきた部屋着に着替える。

 流石に、おじさんやおばさんにあの格好を見せるのは恥ずかしい。

 それに、あの格好でうろちょろしてたら風邪ひきそうだし。

 服を出し、一応例の下着も出す。

 こ、これを着るのか・・・・。

 黒を貴重としたデザインに、ワンポイントとして赤が入っている。そこは、可愛いのだが問題は生地面積だ。

 ムムム。

 じいっと、下着を見つめていると。

 コンコン。

 「夕、ご飯だって」

 ノックの後に、幼馴染の声がした。

 「え?あ、わかった。着替えたら行く」

 びっくりして、裏返った声で返事をしてしまい顔が熱くなる。

 足音が離れていくのが聞こえ、ズンッと緊張が肩から下りた。

 「びっくりした」

 私は、下着をボストンバッグの奥に押入れリビングに降りた。


 ご飯は、おばさんの手作りのハンバーグだった。

 流石、おばさんが作っただけあってすごく美味しくて、少し食べ過ぎてしまった。


 ご飯を食べ終わると、幼馴染はソファーでスマホをいじりだした。

 何をしているか、気になって試しに隣りに座ってみる。

 幼馴染は、イヤホンをつけて動画を観ていた。

 幸せそうな、楽しそうな顔をして。

 「何、観てるの?」

 つい、声をかけていた。

 幼馴染はこちらに気づき、イヤホンを外して。

 「動画だよ。観る?」

 イヤホン片方をこちらに向け、尋ねてきた。

 もちろん、頷く。

 イヤホンを受け取りつける。

 ワイヤレスイヤホンだがら、そんなに密着しなくてもいいけど。

 私は、幼馴染と肩と肩がくっつくぐらい密着して動画をみた。

 幼馴染からは、汗の匂いがした。

 動画の内容なんて、何一つ頭に入ってこない。

 「あ、あのさ」

 話すことなんて、何も考えていなかった。

 でも、なんとなく言葉が出ていた。

 「何?」

 「あ、あの、今日さ」

 何、言ってるんだろう。

 続きの言葉なんて、出てこない。

 だって、自分も何言ってるのかわからないのだから。

 でも、幼馴染は続きが気になってるように、こちらを見る。

 「やっぱ、なんでもない」

 話題をそらし、スマホに目をやった。

 すると。

 「夕ちゃん。お風呂入れるわよ」

 キッチンから、おばさんが声をかけてきた。

 私は助け舟が来たと思い、すぐに返事した。

 そして、私は逃げるようにお風呂に入った。

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