第15話

 風呂は夕の後に入った。

 なので、微かに夕がいた小痕跡が残っていたが考えないようにして、そっさと風呂出た。

 風呂上がりがいつも、リビングに行き水を一口飲んで自室に戻る。

 あとは寝るまで、自習をする。

 自室のドアを開けると、メガネをかけベットの上に体育座りで待っている夕がいた。

 「遅い」

 頬を膨らませながら、退屈そうに言った。

 「あれ?夕なんでここにいるの?」

 僕は、入り口で立ち尽くしていた。

 お風呂に入ったからか、夕は短パンに丈の短いパンツを履いていた。

 夕は、恥ずかしそうに頬を染めている。

 「あんま、見ないで。その、はず、恥ずかしいから」

 「えあ?ご、ごめん」

 ただでさえ、お風呂場で悶々としていたのにここに来て追撃。

 僕は足早に椅子に、夕に背を向ける形で座った。

 「で、何しに来たの?なんか、あった?」

 「え、あ。要はないけど・・・・・。君は何するの?」

 「え?僕は、勉強をしよっかな。って」

 お風呂に入る前に会話もあって、お互いつまりながらする会話。

 「ふ~ん。あっそ、じゃあ私もしよっかな」

 そう言うと、夕は部屋を出ていった。

 やっと、出ていった。

 僕は、ため息をつく。

 何で、あんな格好してたんだろう。

 お風呂入る前も、無駄にくっついてくるし。

 いくら、幼馴染とはいえ異性の距離感ではなではなかった。

 何考えてるんだろう。

 今日、ただの幼馴染。って、自分て言っていたのに。

 これじゃあ、勘違してしまう。

 再び、ため息をつき。

 頭を切り替え、勉強をしようとリュックから教科書とノートを取り出し取り掛かる。

 すると、ドアが開く音がした。

 「うんしょっと」

 夕が入ってきた。

 手には、パイプ椅子とテキストを数冊脇に挟んで。

 「え?なに?どうしたの」

 僕は、立ち上がり夕の持っていたイスを持った。

 「ありがとう。じゃあ、あそこに置いて」

 夕は、お礼を言うと僕の使いっていた机を指さした。

 「え?なんで」

 「そんなの、勉強するからに決まってるでしょ?」

 威張ったように言うと、早く、と催促した。

 僕の机は、二人で使うには手狭だ。

 そもそも、二人で使う想定で作られたものでもない。

 なのに、夕は隣で勉強をしたいと言ってきた。

 「やっぱ、狭いわね」

 もちろん、密着度はソファーの時を超える。

 完全に肩は触れ、甘ったるい匂いが鼻孔を刺激する。

 頭が、バグりそうになる。

 勉強のことなんて何一つ、頭に入ってこない。

 「ここ、間違ってる」

 夕がなにか言った気がするが、頭に入ってこない。

 すると、横腹に痛みを感じた。

 「痛っ」

 「人の話、聞きなさい」

 夕が、頬を膨らませていた。

 「え?あ、ごめん。なに?」

 夕は、ため息をつき僕のノートをトントンと叩き。

 「ここ、capital。aがoになってる」

 指摘されたとこを見てみると、確かに間違っていた。

 「集中できてないんじゃないの?」

 「うっ」

 ぐうの音も出ない。

 「しっかりしないと、意味ないわよ」

 夕は、そう言うとシャーペンを走らせた。

 その横顔を見ると、特に恥ずかしがっている顔はしていない。

 本当に意識しているのは、僕だけだったのかと自分が恥ずかしくなって。

 でも、それのお陰で勉強に集中できる。

 そう思い、目線をノートに移そうとしたとき。夕が下を向いたからわかった。

 「耳」

 「えっ?」

 僕がぼそっと、呟いた言葉に動揺したように反応した。

 そう、耳が真っ赤になっていた。

 夕は、ぱっと耳を手で隠した。

 「な、なに?見、耳がどうしたの?」

 こちらを見る目は、眼鏡越しだが涙を浮かべていた。

 それは、夕が恥ずかしいときに見せる顔をして。

 「い、いや。なんでもない」

 「ふ、ふん。ほら、集中してやりなさいよ」

 怒ったように言ったが。

 その時は、怖いというよりもどこか愛らしさを感じ。

 また、どこか安心している僕がいた。

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