第18話
昨日は全然眠れなかった。
ベットの上で考えていたのだが、あれは怒らせたのではなく。
キズつけてしまったのだと。
理由なんて、分からない。
でも、そう思った。
僕は、いつもより早く着替えリビングに行った。
「あら、早いわね」
母さん驚いたように、僕を見た。
「たまにはね」
僕は、茶化すように言った。
もちろん、夕は既に朝食を食べている。
ハチミツをたっぷり塗った食パンをかじりながら、こちらを見ている。
「?」
なんだろう?
そう思っているが、何も言わない。
僕は、あまり気にしないように椅子に座り、机の上に置いてあるトースターでパンを二枚焼く。
隣りに座っても、むしゃむしゃパンを食べながらこちらを見る夕。
そんなに見られると流石に恥ずかしくなる。
「何?なにか付いてる?」
尋ねても、夕は何も言わない。
僕は、熱くなりそうな顔を落ち着かせるため深呼吸をし、気にしないよう努めた。
何も言わないのだから、気にしたって仕方ない。
母さんは、ニュースに夢中で夕の奇行に気づいていないようだ。
僕は、左頬に視線を感じながら朝食を食べた。
結局、朝家で夕の声を聞くことはなかった。
ただ何も言わずに、ジッーーとこちらを見れくるばかり。
それは、顔を洗っているときも用もないのに洗面所まで来て後ろで。
それは、僕が部屋で必要な教科書類をリュックに詰めているときもドアを少し開けて。
その度に、「なに?」と、聞いても何も答えず逃げるように退散する。
きっと、昨日のことを気にしているのだろう。
気になるなら、直接言えばいい。
そう思った。
が、僕も自分からその話題を出すことができなかったので、「なに?」っと、夕が言うのを待った。
もちろん、そんなことしてたらお互い何も言うことなく放課後になった。
「どうするよ」
返答をどうするか、決めかねていた。
夕のことを気にしても、仕方ないのはわかっている。
なんでか、ずっと夕の顔が頭から離れない。
でも、夕はただの幼馴染。
いつかは夕は誰かの隣りにいて。それは僕じゃない。
そんなとき、一人でいるより隣で支えてくれる人がいないときっと僕は・・・・。
「行く」
考えた結果そう決めた。
「おう。じゃあ行くぞ」
呉は、ニカッと笑った。
カラオケに行く途中、今回の会の説明を受けた。
基本、話しながらカラオケのフードを飲み食いするらしい。
今どき、合コンなんて珍しい、なんて呉は言っていた。
なんでも、この合コンを運営した人がネットが苦手らしく。出会いはこうして、現実じゃないと無理らしい。
2〜3時間程度話して、気になった子の連絡先を聞いてお開き。
そういった流れだ。
始めての合コン。
それに久しぶりに、夕以外の女の子との会話に若干緊張しつつをカラオケに向かった。
カラオケに着き用意されていた、部屋に入った。
中ではもう会は始まっていた。
男女合わせて10名。
楽しそうに話をしていた。
こんなに集まっていたのは、この会を主催した人物の人脈の広さが窺い知れた。
何人かは、入ってきた僕らに目を向けたがすぐにその視線は話している相手に戻された。
僕らが、入り口に立っていると。
「お、やっと来たね。呉」
「うん。遅れた」
話しかけてきたのは、長い黒髪に気品のある顔立ちの女の子だった。
学校帰りなのか、制服を着ていた。
「お、君は初めて見る顔だね。はじめまして、私は大森つぐみ」
大森さんは、にこっと笑い手を差し出した。
僕も、簡単に自己紹介をして握手を交わした。
「緊張してる?」
大森さんは、見透かしたような笑みを浮かべる。
「はい。初めてなのでこういうの」
正直に伝えると、大森さんは笑顔で言った。
「大丈夫。怖い人はいないよ。ここに居るのは、皆私の友だちなの。私としてはただのお茶会的な、会をしているつもりなんだけど気づいたら皆、合コン、なんて言ってて困ったものだよ」
大森さんは、困ったように笑った。
「そうなんですね」
「うん、そうなの。立ち話も何だし一杯どう?」
大森さんは、ティーカップに目を向けた。
「じゃあ、いただきます」
大森さんの話を聞いていたら、呉はもう女の子と話していた。
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