第13話

 学校が始まって、何週間がたった。

 流石に学校にも慣れてきた。

 今日は日直で、放課後先生の手伝いで体育倉庫で今日使った道具を整理していた。

 若干ホコリっぽい体育倉庫で、腰をかがませまず床に落ちてるボールを拾い集める。

 これは頼まれたことではないが、これじゃあできるものもできない。

 野球ボール、バスケットボール、サッカーボールなど、部活で使っていないボールを整理する。

 めんどくさいが、やるしかない。

 「何やってるの?」

 入口付近で夕が声をかけてきた。

 「先生の頼まれごと」

 「確か、幅跳びの使用数を数えるじゃないの」

 そう言うと、夕もかがみボールを拾いボールカゴに投げ入れる。

 「ありがとう。夕」

 「べ、別に先生に言われたからで」

 小窓から入ってくる夕日のせいか、頬を赤く染める夕。

 「夕、それでもだよ」

 「っっうさい、黙ってやれ」

 夕はこちらにボールを投げてきた。

 「はいはい」

 僕は、ボールをキャッチしボールカゴに投げ入れた。



 体育倉庫での仕事は、案外すぐに終わった。

 それは、夕が手伝ってくれたからだろう。

 体育倉庫を出て、制服についたホコリをパンパンとはたき落とし、伸びをした。

 「終わった〜」

 「うん。疲れたね」

 体育倉庫の扉を閉め、僕らは職員室に向かった。

 「終わりました」

 夕と二人並んで、報告した。

 「はい、ご苦労さん。って?長手、お前も手伝ってたのか。流石、委員長」

 「いえ、仕事ですから」

 夕は、僕と話すときと違いキリッとした顔で言った。

 これは、おばさん似なんだろう。

 「あれ?夕、先生に頼まれたって」

 「ん?頼んでないぞ。流石に、男子としかも人のこない体育倉庫って、何かあったら先生クビになるかもだし」

 「え、じゃあ?」

 なんで、夕は体育倉庫に来たのだろう?

 夕は黙って、うつむいていた。


 職員室を出て、教室にリュックを取りに戻る。

 夕は僕の少し先を歩き、振り返ることも何かを言うこともない。

 「頼まれたわけじゃ、なかったんだね」

 「だったら何?」

 「じゃあ・・・・・」

 何で?

 その言葉がでかけて、呑み込んだ。

 だから何、といったわけじゃない。

 ただ、何で手伝ってくれたのだろうか。

 夕は学校ではあまり、話しかけてくることはない。

 だから、僕らが仲がいいの知っている人を少ない。

 なのに、なぜ手伝ってくれたのか。

 「幼馴染だからよ」

 「え?」

 夕は僕の心を読んだかのように、疑問に答えた。

 「他に、理由なんてないから」

 プイッと、振り向いたと思ったら、顔をそむけ再び歩き出した。




 今日は二人で帰った。

 夕は、いつも持っているバックの他に大きめのボストンバックを持っていた。

 「そのバック持とうか?」

 「いい。これぐらい持てるから」

 夕は、どこか機嫌が悪そうに言った。

 学校近くでは、特に会話はなかったが僕の家に近づくと。

 「今から家行くから」

 「え?今から?僕の家?」

 夕は、何も言わずに頷いた。

 もう夕方だ、今から遊ぶなんて時間じゃない。

 「うるさい、行くよ」

 夕は有無を言わさず、先に行き僕をおいていく。

 「ちょ、ちょっと」

 僕は、夕の背中を追いかけた。

 

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