第12話

 ゴールデンウィークが終わり。

 学校が始まった。

 気怠い体を起こし、制服に手を通し家を出る。

 そこには、今日も夕が立っている。

 「よ、よう。おはよ」

 夕は、顔を赤らめ手を振った。


 僕らは、誕生日から距離が生まれた。

 誕生日以降は夕は、僕の家に来なくなった。

 まあ、連絡は軽く取っていたので喧嘩したわけじゃない。

 が、夕はどこかソワソワしているし、僕も恥ずかしくて顔を見て話ができない。

 「ゆ、夕?」

 ビクッと肩を跳ね上がらせ、返事をした。

 「な、ななに?」

 横から見てもわかるぐらい、顔が真っ赤になっている。

 「いや、大丈夫かなって?なんか顔も赤いし」

 「だ、大丈夫よ。それを言うなら君も赤いと思うけどね。風邪でも引いたんじゃない?」

 夕は腕を組み、早口で捲し立てる。

 「いや、風邪は引いてないよ。ただ」

 「ただ?何?」

 ただ、恥ずかしいだけなんて口が裂けて言えない。

 そんなの、もっと恥ずかしいから。

 僕は濁したように、言葉を返し学校に向かった。


 学校に近づくと、夕は学校の友達と合流して僕とは一度離れる。

 クラスが同じなので、また顔を合わせるのだが。

 夕は友達と、笑いながら校舎に入っていた。

 僕はその姿を後ろから、眺めながら僕も校舎に入った。


 教室に入り自分の席につく前に、軽く友達に挨拶する。

 「おすっ」

 前の席の、呉が話しかけてきた。

 「うん。おはよ」

 呉とは、中学時代からの友達でアニメの話や漫画の話をよくする。

 呉は、背が低く中性的顔立ちの男だ。

 「休みどうだったよ」

 呉は、こちらに体を向け話しかけてきた。

 休みはほとんど、夕といたなんて流石に言えない。

 「漫画読んだり、アニメ観たり。オタ活してたよ」

 「お!そりゃいいな。オレは彼女とデートして別れた」

 呉は、見た目がいいから一部層によくモテる。

 が、外面に反して内面が少し強気で。

 誰かと付き合ったと思ったら、すぐに別れ。

 それの繰り返しだ。

 「あれ?休み前だったよね?付き合ったの」

 「ああ。何回かデートして、なんか違うって言われて別れた」

 呉は、呆れたように言った。

 「向こうから、告ってきたくせに」

 僕は苦笑いして。

 「災難だったね」

 「ああ。全くだ」

 なんて雑談してたら、チャイムが鳴り授業が始まった。


 すべての授業が終わると、全身にドンッと疲労がのしかかった。

 「ふ~う、疲れた。そうだ、おい、帰りアイスでも食いに行かね?」

 「ああ、いいね」

 僕がそう言うと、呉はニッと笑いリュックを背負った。

 「よし、行くぞ」

 「うん」

 先行く、呉の背中を追いかけ僕らは教室を出た。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る