第6話
ゴールデンウィークも、折り返しそうなとき。
そとゆき姿で来た長手は、部屋に入るなり突拍子もないことを言った。
「今日は出かけよう」
「え?どこに?」
つい聞き返した。
「それは・・・・・」
どうやら何も考えていなかったらしい。
長手は目をそらし、ベットに座った。
あ、折れたなこれ。
拗ねるわけでもなく、長手はしょんぼりしたように座っている。
その姿を見て、なんだか申し訳なくなる。
別に僕が、なにかしたわけじゃないが、そんなしおらしく居られるとなにかしたくなる。
行きたいところか。
正直、僕だけなら本屋や中古屋みたいなオタク臭いとこしか出ない。
長手が、喜ぶなんて思えない。
再び長手に目をやると、ベットに倒れ込んでいた。
「出かけたい・・・・・」
なんて、呟いている。
全く、クラスの連中が見たらなんと思うだろう。
学校とのギャップで、きっと本人だとは思われんしだろう。
どうして、僕の前ではこんなに気が抜けているんだろう。
いくら幼馴染と言っても、もうちょい気を入れるものじゃないのか。
まあ、自然体でいられるぐらいリラックスできてるならいいけど。
じゃあ、長手がよく行くであろう駅前にでも行こうか。
そう思い、誘ってみると長手は目を輝かせながらうなずいた。
「行くーー!!」
家を出てバス停でバスを待つ。
その間、長手は嬉しそうに鼻歌を歌う。
「そんな、出かけたかったの」
長手は頷く。
「せっかくの、ゴールデンウィークよ。家で、漫画読むのをいいけどやっぱ出かけたいじゃない」
長手は熱弁した。
「そうだね」
「で、今日どこ行くの?」
「今日は駅前に」
僕らは、バスが来るまで雑談を楽しんだ。
ゴールデンウィークもあってか、駅前はたくさん人がいた。
どの店を見ても、人が溢れている。
「ハグレないように気をつけないと」
人混みを見ながら言うと、長手は僕の手を握った。
「これで、いい?」
長手は、頬を紅くしている。
恥ずかしいけど、長手がいいなら。
僕は何も言わずに頷いた。
その後、二人で店を見て回った。
服屋だったり、流行りのお金の形をしたパン屋だったり。
久しぶりに長手と、遊んで回った。
きっと、長手が出かけたいと言わなかったら今はなかっただろう。
僕たちは、今を楽しんだ。
長手は、人の目をよく集めていた。
化粧もして、服も可愛いのを着ているからだろう。
長手は元がいいから、さらに磨きがかかってるのだ。
でも、長手が他の男に見られるとなんか、モヤモヤする。
「どうした?」
隣でドリンクを片手に座っている、長手が覗き込んできた。
「え?いや」
「?あ、もしかして疲れちゃった?君も飲み物買えばよかったのに」
「ああ、うん」
急に声をかけられ、びっくりしてしまった。
「はい。一口に飲む?」
長手は自分の飲んでいた、アイスティーを差し出した。
「ありがとう」
僕はありがたく、一口貰った。
きっと、喉が渇いてて変なことを考えてしまったんだ。
アイスティーを飲んだことにより、身体が冷えていくのを感じる。
「本当に飲んじゃった。これじゃあ」
長手はストローを見つめ、ブツブツと何かを言っている。
「そう言えば、その格好でクラスメイトに出会わないの」
「え、え?」
裏返った声で返事をする長手。
駅前などにも、よく行くらしいから会わないほうが不自然だろう。
「気づかないんじゃない?」
「そうかな?僕はすぐ気づいたけど」
「それは君だけだよ。実際何回か遭遇したことあるし」
「そういうもんか」
長手はストローを口に加えて、そうそう。と言った。
帰りのバスで、長手は寝てしまってっいた。
随分とはしゃいでいたから無理もないだろう。
頭を僕の肩に預け、気持ちよさそうに小さく寝息を立てる。
車内は夕日で一杯になり、長手の金髪もいっそう輝く。
久しぶりに長手と出かけた今日は、ここ最近で一番楽しかった休日となった。
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