第5話

 ゴールデンウィーク初日の今日。

 家でゴロゴロ、アニメや漫画を見ようとしていたとき。

 自分の部屋の扉が開いた。

 「何でいるの?」

 そこには、白いシャツに黒いカーディガンを羽織った長手が立っていた。

 「なんでって、おばさんが開けてくれたのよ」

 長手は、我が物顔でベットの座りベットを擦る。

 「久しぶりに来た」

 長手は、部屋を見渡し少し笑う。

 すると、本棚に近づくと一冊の本を手に取った。

 「まだ好きなの?こうゆうの」

 その本は、ギャル高校生の日常を描いた漫画だった。

 「好きだよ」

 いざ、口に出してみると恥ずかしくなる。

 長手は漫画を開き読み始めた。

 「まだ、好きなんだ」

 なにか言った気がしたがした。ちょっとオタク臭かったかな。

 少し部屋を見直したほうが良さそうだ。

 「そう言えば、その格好できたの?」

 下には母さんがいたはずだ。

 コンタクトに長い金髪のウィッグをつけてきたら、母さんからおばさんにバレてしまう可能性だったあるはずだ。

 「うん。おばさん優しいから、大丈夫でしょ」

 なんて、楽観的なんだろうか。

 母さんは、確かにふわついている人だ。それ故に口が軽かったりもする。

 「一応、秘密だって言っておいたから大丈夫だって」

 長手は、漫画を一冊持って再びベットに座った。

 本当に大丈夫なのか。

 おばさんと、母さんは結構交流しているみたいだ。

 話す機会が増えれば増えるほど、その秘密は危険にさらされることになる。

 まあ、長手が納得しているならいいのだが。


 しばらく、お互い漫画を読み会話という会話はなかった。

 偶に「これ続きある?」なんて、とかは聞かれたりするがそれ以外は何もなかった。

 すると、ノックが聞こえた。

 「入るわよ」

 母さんの声が聞こえたと思ったら、ドアが開いた。

 「夕ちゃん、これ良かったら食べて私の手作りだけど」

 お盆にクッキーと紅茶を載せて持ってきた。

 「わー。美味しそう、食べていいんですか?」

 長手は目を輝かせながら、クッキーを見つめる。

 「ええ、いいわよ。でも、ごめんね」

 母さんは何故か謝った。

 「え?なんで謝るの」

 「だって、今流行りのかわいいお菓子がいいじゃない?あの、何だったけモウチョットみたいなやつとか」

 「マリトッツォな」

 僕が訂正すると、母さんそれそれと言った。

 「ううん。私、おばさんの手作りお菓子好きから嬉しいです」

 「ほんとに?嬉しいわ」

 母さん、嬉しそうに笑った。

 「じゃあ、ゆっくりしていってね」

 母さんは、笑顔で部屋を出ていった。

 母さんが出ていくとすぐに、長手はクッキーに手を出した。 

 「うーん。美味しい。やっぱおばさんのお菓子は美味しい」

 長手は、ほっぺに手を当て幸せそうに食べる。

 「なに、お菓子食べに来たの?」

 その様子を見ていると、ただお菓子を食べに来ただけみたいに見える。

 「ち、違うから!!」

 ものすごい勢いで否定する。

 「じゃあ、なんで?」

 あまりにも自然に居座っていたので、つい聞くのを忘れてしまった。

 「な、何?幼馴染の家に理由もなく、来ちゃいけないわけ?」

 長手は頬を赤らめ言った。

 「別にいいけどさ」

 そんな言い方されたら。

 勘違しそうになる。

 心臓はうるさい程鳴っていた。

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