第4話
今日も、長手は家の前にいた。
「おはよ」
今日は比較的、機嫌が良さそうだ。
「うん、おはよ」
「き、昨日はありがとう。嘘言ってくれて」
長手は気恥ずかしそうに言った。
「ああ、いいよ。まあ、あの場しのぎだしね。だって、成績表でバレちゃうしね」
すると、長手の顔が青ざめていく。
「あ・・・・・」
どうやら、気づいていなかったらしい。
長手はどこか抜けている。
「そんな、事より。よく、あのギャルぽい格好許してくれたな」
あの、厳しいおばさんが容認してくれるとは思えない。
「ああ、あれは一回も母さんには見せてないもの」
「え?じゃあ、どうやって?」
「母さんが私が退院してから、仕事再開したのは知ってるでしょ?」
「ああ」
ここで、新情報だが。
長手は昔病弱で入退院を繰り返していた。
俺達は、病院で知り合ったのだ。
「そして、最近昇格したの。そしたら土日も職場に顔出す回数が増えてね」
「ああ」
なんとなく想像がついた。
おばさんは生粋のキャリアウーマンだ。
仕事大好きだということは、俺も知っていた。
「まあ、朝家出て駅のトイレでメイクしたりウィッグ付けたり。あ、父さんは協力者だよ」
それも、なんとなく想像がつく。
おばさんが長手に厳しく、おじさんは逆に長手にものすごく甘い。
長手は笑い。
「洋服代とかも、くれるんだ」
ああ、長手はいい財布としか思っていないらしい。
「まあ、そんな感じかな」
「クラスの女子とかは、長手がそんな格好してるって知らないの?」
興味本位で聞いてみると。
長手はこちらを睨み。
「馬鹿なの?知ってたら、あんな隠さないわよ」
ご尤もです。
「それに、母さんにバレたら私死ぬわ」
「確かに」
すごく怒るだろうな。
そして、それは協力者のおじさんにも行くだろう。
「だから」
長手は一歩前に行くと、俺の唇に人差し指を当てると。
「秘密。だからな」
長手は、少し顔を赤らめていった。
僕は、頷く。
きっと、このときの僕も顔を赤くしていただろう。
「分かればよろしい」
「あれ?じゃあこの間から言ってたのはなくなるわけか」
付き合うとか。
そう言うと、はっとして。
「それはそれ、これはこれだ」
ぷいっと顔を背けた。
「ほら行くぞ。遅刻する」
まだ、遅刻する時間ではないが早足になる。
そこは、流石優等生といった感じだ。
でも、一つ疑問が生まれた。
「じゃあ、なんで付き合おうなんて言ったの?」
「うっ。それは」
「それは?」
「もういい」
「え?」
答えになっていない、答えが返ってくる。
もういい。ってなんだ?
気になったが、長手はそれ以上何も言うことはなかった。
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