第30話
「やっぱ透は元がいいから、変に派手な柄や色のものを選ぶよりシンプルなのがいいよな……」
和基はそう思って、和基なりに透に似合うと思ったシンプルな服装を選んで透の元へ持って行く。
透も和基に見合う服を探し終わったようで、互いのコーデを見せ合った。
「俺、これ買うよ」
「俺が選んだやつでいいのか?」
「うん」
透は即答すると和基の選んだ服を持って会計レジへと向かった。
「んー、じゃあ俺も透の選んでくれた服を買おうかな」
和基も服を持ってレジに並ぶ。
「和基も買ったの?」
「おう。自分が選ぶと同じような服ばかりになるし、たまにはいいかなって。透が選んだ服、けっこう格好良かったから」
「ほんと? 喜んでもらえたならよかった。俺も和基が服選んでくれて嬉しかったよ」
「ならいいんだけど」
透の言葉に和基は笑顔を浮かべた。
自分のことをファッションセンスがない人間だとは思わない、しかしセンスに優れているとも思っていなかったので、透が喜んでくれたようでなによりだ。
和基が内心喜んでいると繁華街の時計がポーンとなった。
「お昼だね」
「ああ」
これは十二時を知らせる時計の音だ。当然のことだが、時計を確認してみると短針も長針もちょうど十二時を指し示していた。
「昼飯食ってく?」
「そうだね。繁華街にはいろんな飲食店もあるし、どこで食べようか。和基はどこがいい?」
「ファミレスでもいいか?」
「俺は全然いいよ」
買い物袋を持ってファミレスに入る。
昼時なのもあって客の数は多いが、わりとすんなりと席まで案内してもらえた。
「和基はなに食べる?」
テーブル席に案内された和基たちは買い物袋を席に置き、メニュー表を開けた。
和基の向かい側に腰掛けた透はもう注文するものを決めたのか、メニュー表を閉じていた。
「そうだなー。俺は包み焼きハンバーグにしようかな。ライスセット付きで。あとドリンクバー。透は?」
「俺は海鮮スープパスタにする」
「えっ、そんだけで足りる?」
「俺は足りるよ」
「透は少食だよな」
「たしかに他の男子に比べると少し少ないかもしれないね」
透は学校での昼食など、普段から食べる量は多くない。極端に少ないというわけでもないが、少食な方と言っていいだろう。
互いに注文するものを決めるとボタンを押し、店員を呼んだ。ドリンクバーも頼んだので、思い思いのジュースを飲んで雑談していると注文したものがテーブルに届けられた。
「おお、うまそう」
和基が頼んだ包み焼きハンバーグは鉄板に置かれており、アルミホイルの中でじゅうじゅうと美味しそうな音を立てていた。
「ありがとうございます」
透の前に置かれたのはトマトベースのスープで煮込まれたイカやアサリなどの海鮮がふんだんに使われたスープパスタ。
麺よりご飯が食べたくてハンバーグを頼んだ和基だったが、いざ目の前に置かれるとスープパスタも食べたくなってくる。
美味しそうな匂いと音につられてお腹がぐぅ、となった。
「食べようか」
「ああ、いただきます!」
箸を手に取り、アルミホイルを開くとハンバーグと対面する。デミグラスソースがかかっていて美味しそうだ。
和基は一口サイズに分けると口の中に放り込んだ。
「んー、んまい」
「美味しい」
和基は幸せそうにハンバーグを堪能している。口の中で肉汁が溢れてデミグラスソースと混じり合って、幸せな気分だ。
目の前では透も美味しそうにスープパスタを食べていた。
「なー、透ー」
「いいよ」
「まだなにも言ってないんだけど?」
「どうせ一口くれって言うんでしょ? ほら、はい」
「バレてら。じゃあいただきまーす」
和基は透のスープパスタを一口もらって食べた。まず感じたのはトマトのしょっぱさ、そしてその中に海鮮の旨味がいきており、濃厚な味のスープがパスタに絡んでいて美味しい。
「お礼にハンバーグ食っていいよ」
「どうも」
透は器用にフォークでハンバーグを切り分けると口に運んだ。
「ん、ハンバーグも美味しいね」
「なー」
腹を満たして満足した和基たちは料金を支払うとファミレスを出た。
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