第21話 消えた2人

《シウがパーティーを離脱しました。》

《シュウがパーティーを離脱しました。》

「な、なにが起きた?」

俺は、目の前に浮かぶ通知を見てそう言った。


とりあえず俺は、崩壊現場から少し離れた場所に座り込んで、シウとシュウの2人に何が起きたのか考える。

最初は、2人のイタズラで、俺が下までロープなり、他の道具なりを使って、崖下まで降りた時に2人が無事に出てきて、

《ドッキリ大成功!!》と書かれたプラカードでも構えてるのかと考えたが、こんなことをする様な2人ではないし、そもそもそれで死んだら元も子もない。

つまり2人のイタズラではない。

そして、2人が最後に喋った時に出ていた、『誰』と『テメェら』という発言から、パーティーから離脱したという通知が届く直前に誰か、それも複数人と遭遇していたと考えられる。

そのことからそいつらが2人を連れ去ったと考えられる。

つまりこれは……

「イベントってことか…」

そうと決まれば、速攻でクリアして、2人を救出するとしますか。

そう考えながら俺は、立ち上がって崩壊現場まで向かった。


崩壊現場に着いた俺は、まず崖下まで降りれそうな場所を探していた。

最初は、崩壊現場からロープで降りればいいと考えたが、2人を連れ去った奴らがそこで、『カモ一丁入りまぁす!!』と待ち構えているかもしれないで、少し離れた所から降りようと考えていたのだが……何処もかしこも断崖絶壁である。

まるでどっかの脳筋金髪ゴリラまな板王森人セトみたいだぁ……

……なんか嫌な予感がするな。

そんなことを考えながら降りれそうな所を探して……見たのだが……無い。

降りれそうな所が……無い。

「やっぱり無いか〜」

やはり断崖絶壁セトはいくら頑張っても断崖絶壁セトのままである。

伊藤千歳セトが中学生の時、周りが成長期で徐々に女性らしい体つきになっていっているのに、縦にしか伸びずに、女性らしい体つきにならないという悲しみで、学校を休んでいる、ということを伊藤セトのお母さんから聞いた時は思わず、『はぁ?』と声を出したものだ。

その後、まな板にはまな板なりの良さがあるって伝えておけば良いですよーとか言ったら、伊藤セトからルーズリーフ、十数枚にも及ぶ恨みが籠った手紙が届いた。

あんまり内容は覚えてないが、確か『まな板って言うな!!』とか、『貧乳はステータスだ!』とか書かれていた筈だった気がする。

まぁ、あいつが胸がデカかったら多分俺は、

「大きすぎる。修正が必要だ」

とハ○ラー・ワンになっていたところだ。

……話がそれている気がする。修正が必要だ。

さて、現実逃避はやめて真面目に考えますか。

少し考えてみると案が3つ出てきた。

1 下に水があることを祈って飛び降りる。

A下に水が無かったらTDNただの飛び降り自殺⭐︎

2 頑張ってクライミングしてみる。

A 掴めるところが無いよ。クライミングってどうやんの?

3 アーススパイクを足場にしながら降りる。

A この案の中だと1番降りれる可能性があるが、足滑らせたら死ぬ。そして30代のおじさんの運動能力だと多分足滑らせる。つまり死ぬ⭐︎

「……三分の二が死ぬ可能性大か…」

俺はそんなことを呟きながら、辺りを彷徨うろついていた。

俺だけ1人取り残されるこんなことになるんだったら、いっそのこと俺も一緒に落ちていれば良かった……と視線を崖下に向けようとした。その時だった。

「うん?なんだアレ?」

俺は、荷車に大きな布袋を二つ乗せて道を進む謎の一団を見つけた。

そして、布袋からさっきまで一緒に行動していた仲間の特徴とも言うべき、もふもふの尻尾が飛び出していた。

「……見つけられて良かったと喜ぶべきか、それともどうやってあそこまで行くのかと嘆くべきか。……おじさんはどうすれば良いんだろうね」

まぁそんなことを口にしても、今俺ができることは2つだ。

1 尾行する。

2 奇襲する。

1はともかくとして、2は無理だな。と俺はすぐに奇襲する考えを捨てる。

確かに俺の武器は長銃ライフルで、ほぼ真上に陣取っている。オマケに敵さんは俺に気付いていないという、これ以上ない状況だが、確実に全員倒しきれるという保証がない。

それに、万が一敵がこちらに対する攻撃手段(魔法とか)を持っていた場合は…もう考えたくない。

しかし尾行するにしても下に降りないことには始められない。

そんなことを考えている間にも謎の一だ……もう人攫いでいいか。人攫い達は着々と進んでいた。

ゲームによくあるメニュー画面とか開いている間は時間が止まってくれれば良いのになぁ……とそんなことを考える。

けど人攫いは待ってはくれない。

「やるしかないか…」

俺はそう言って、助走をつけるために少し後ろに下がった。

失敗すれば2人を助けられない。しかし、ここで行動しなかったら確実に2人を助けられない。

100%助けることが出来ないよりも、1%でも助けられる確率があるんだったら鈴村犬助はそっちを選ぶ。

理由は特に無い。

けど、仲間を見捨てる様な奴になりたく無い。

フゥッーと息を吐き、気合を入れる。

こういう高い所から飛び降りる時はアレ・・を叫びながらやらないとね。

俺は一歩踏み出し、そしてその勢いで崖下へと飛び降りる。

そしてこう叫んだ。

「エンダァァァァァァァァァァァァァイヤァァァァァァァァ!!」

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