第19話 二日酔いとお引っ越し

「……頭痛ぇ…」

俺は起きて誰にいうまでもなく開口一番そう言った。

俺は額を手のひらで抑えながら、辺りを確認する。

そこで俺が寝るまでは確かにいたはずの存在が居なくなっていることに気づいた。

「……あれ?伊藤あいつ、どこ行った?」

居なくなっていた奴の名前は伊藤千歳。職業は女優兼モデルをやっている。

俺とは一応幼なじみの関係で、細かいことは省くがなんか色々あって俺の家に1日匿かくまう?泊まらせる?ことになった

周りをキョロキョロしていると、ベッドの上に何かが書かれたA4サイズの紙が置かれていた。

俺はそれを取って紙に書かれていた文章を読む。

『これを貴方が読んでいるということは私はおそらくもうこの家にはいないでしょう。

……なんてベタな始まり方の手紙を書いてみたよ〜。どうも〜犬助の幼なじみで人気女優の伊藤千歳ちゃんだぞ〜。これを読めているってことは犬助はきちんと1人で起きられたんだ〜えらいね〜。

前置きはそのぐらいにして、とりあえず昨日はありがとう。犬助のおかげでリフレッシュできたし、タダ酒も飲めた。犬助には昔っから助けられっぱなしだね。

まぁ困ったらとりあえず犬助に助けを求めにいく私も悪いんだけどね〜。

そうそう!私いつもよりだいぶ早く起きてマネちゃんに連絡したんだけど、マネちゃんに怒ってた〜。『そういうのはすぐに連絡してください!大体あなたは人気女優なんだから、たとえ昔からの友達ないし幼なじみだとしても男の人の家に泊まるのは控えてくださいね!今回は緊急事態だったから仕方ないですが、絶対に次からはやるにしたって私に一言相談してからにして下さい!!』だってさー、気軽に遊びに来れなくなっちゃった。(犬助の家に遊びに行ったのは子供の頃以来だけど)

本当は口頭でお礼を言いたかったんだけど、たぶん犬助がこれを読んでいる頃には私はマネちゃんの車に乗って今日の撮影現場に行ってると思うから、手紙っていう形でお礼を書かせてもらったよ〜。

私もお仕事頑張るから、犬助もお仕事頑張ってね〜。

体調とかにも気をつけるんだよ〜。

追伸 朝ご飯は、この伊藤千歳ちゃんが作らせてもらいました。

人気女優の朝ご飯を食べれるという幸福にむせび泣きながら食べるがよいさ〜。

ちなみに少しだけ(個人的に)失敗しましたが怒らないで下さい』

……テンションなんかおかしくない?まるで深夜テンションで書いたみたいだぁ。

ところどころ文章はともかく俺の体調とか気にしたり、感謝を伝える部分があるところ、優しい奴だなぁと思う。

まぁ、それはそれとして朝ごはん作ってくれたのか。ありがたい。

これで二日酔いの中、飯を作るとかいう拷問をしなくて済む。

最後の文章のところに少し失敗したとか書かれてるけど、多分少し焦がしたとか、塩をかけすぎたとかそのぐらいだろ。多分。

俺も自炊する時に今でもたまに失敗するから問題なし!ヨシッ!

そんなことを考えながら、俺は壁に寄りかかりながらリビングへとゆっくりと向かった。


………リビングの机の上にラップをかけて置いてあったのは、真っ黒な板の様な何かが数枚と同じく真っ黒な円状の物体。それとは対照的に豆腐で真っ白な味噌汁とご飯。

それを見て、真っ先に思い浮かんだことは、

『パンダみてぇな朝食だな』

そんなことを思いながら俺は箸を手に取り、まずは真っ黒な板の様な何かを食べてみようと箸を伸ばす。

何故だか知らないが本能が、これは食べてはいけないものだ!と警鐘けいしょうを鳴らしているが……人に出されたものを食べないのは俺の信条に反する。

それに、見た目はともかくとして、もしかしたら味は良いのかもしれない。そうだ。外見だけで決めつけるのは良くないことだ。

そう思いながら箸で黒い板状の何かを掴んでみると、パリリッと表面が割れる音がした。

完全に炭化してやがる。

確実にこれを食べたら地獄を見ることになりそうだが……俺は目を閉じて一気に口に入れる。

……苦い!苦い!苦い!!

……なんだこれなんだ?苦くて、口の中の水分が持っていかれる!この物体の正体はなんだ?

俺は味噌汁を飲んで口の中を整えようとしたが、口に含んだ瞬間に咽せた。

なぜなら、しょっぱすぎたのだ。

「うえっ、へえっ、がほっ、ごほっ」

俺はすぐにキッチンへ行きコップを取って水を注いだ。

そして即座に飲み干す。

ふぅ、と一息ついてから、あの謎の物体の正体を調べるために冷蔵庫を開けて使われた食材を確認する。

前回に確認した時より減っていた食材は、ベーコン数枚と卵が一つ、豆腐も丸々一つ減っていた。

そこで俺は気づいた。

あれ?ベーコンとかって二日酔いにダメなんじゃなかったっけ?と。

そして俺は思い出した。

伊藤あいつ、そういえば料理下手くそだったなぁ…と。

まぁそんなことを考えながらも腹は減っているわけで、俺はその二日酔い絶対殺すセットを胃を抑えながら完食した。

その二日酔い絶対殺すセットを食べている最中に思い出したのだが俺は、昔同じ様な朝食を伊藤に作ってもらったことがあるのだ。

その時の俺は、多分頭のネジが数本外れていて、その二日酔いryを美味しそうに完食した筈だ。その姿を見て伊藤が、『犬兄ぃ、それおいしかった?』と言ってきて、俺は満面の笑みで、『マジでおいしかったぞ!』と言った記憶がだんだんと蘇ってきた。

そんなこともあったなぁ……と感傷に浸りつつも、伊藤にとって俺、つまり鈴村犬助という男はいつまでも、若々しいあの頃のままなのだろう。

「……もう、いい歳こいたおじさんだっての……」

俺はふふっと笑いながらそう言った。



俺は、そのあと寝室に行き、ゲームにログインした。

俺が出たのはクェルーの街の北地区の路地裏だった。

俺はそこをスイスイと進み、南地区へと向かう。

まだこのゲームを遊んで1ヶ月も経っていないが、この街の道はだいたい覚えてしまった。

初めの頃はマップを映しながらじゃないと道に迷いまくった男が今じゃスイスイと歩ける様になった。

うーん成長を感じる。

そんなこんなで街の南地区に着いたあたりで、メッセージが届いた。

それは、シウからのメッセージで、

『おじさん、少し手伝って欲しいことがあるのですが、今大丈夫ですか?』

という内容だった。

俺はすぐに、

『全然大丈夫。急にどうした?』

と返すと、

『とりあえずいつもの場所まで来てください』

ときたので、俺は少し小走り気味にいつも2人の露店が開かれていた場所まで向かった。


露店が開かれていた場所に行くと、シウとシュウの2人がなんかデカいリュックを背負っていた。

シウとシュウは、仲良く話していたが2人が俺のことを見つけると、話をやめて手を振ってきた。

俺が近づくとシュウが、

「おっさん、遅いんだけど」

「結構急いで来たつもりなんだけどなぁ…」

「姉さんが来てと言ったら、どれだけ離れていようと、3分で来るのが普通だ!」

「理不尽!!」

そんなことを話していると、シウが片手で大きなリュックを持ってきた。

「はい、コレ、おじさんの分」

そう言って手渡してくる。

「あ、どうも…って重っ!なにコレ!?」

シウが片手で手渡せるぐらいだから軽いだろうと思って軽い気持ちで持とうとしてみたが、想像以上に重くて落としてしまう。

ドスンと明らかに重い音が響く。

20kg以上ありそうな物だった。

「あんまり落とさないでくださいねー」

と言いながら、シウは街の東地区の方向に体を向ける。

そして、

「じゃあ、出発進行〜」

と言って歩き出した。

シュウもそれに黙ってついていくので、俺も急いでリュックを背負ってついていく。

そのまま俺たちは、街の東地区にある門から街の外に出たのだが俺たちだが、俺はなんで急にこんな大荷物を背負って何処かに出かけなきゃいけないのか疑問に思い、シウに話しかける。

「なぁ、シウ?いつものレベリングなら、こんな大荷物持ってかないよな?それになんかいつもの道とは違う気がするんだけど?俺たちは何処に向かっているんだ?」

と聞くとシウは体をこちらに向けて後ろ歩きをしながら、

「この道を進むと鉱山都市ボガルドルフという都市に行けるんです。そして急にこんなことをし出した理由は、私たち3人はクェルーの街から鉱山都市ボガルドルフに魔鉄を求めて引っ越しするんですよ」

、、、初耳なんだけどそれ。





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どうも皆さん、ハラショットです。

この度は更新が2ヶ月以上止まってしまって申し訳ございません。

実は仕事が忙しくて書く時間がありませんでした。

決して、コードでヴェインってたり、ジェネレーションでゼロってたりしたわけじゃないです。

本当ですよ?マジで本当ですよ?

ってことでこれからも不定期投稿は続けていきますのでどうかこれからも皆さんよろしくお願いします。

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