第17話 おっさんの休日
俺こと鈴村犬助はさっきまで、俺の幼なじみの
暗闇の中でウウンと唸ってベッドから上半身を起こしてゲーム機本体を取って横に置き、枕元に手を伸ばしてそこに置いてあったはずの携帯を手に取り時間を確認する。
瞬間白く発光する携帯の画面で目が焼ける。
うぐッと小さく声を上げながら携帯の画面から顔を逸らし、電源ボタンを長押しして出て来る俺が勝手に『便利くん』と通称付けしたAIに、
「が、画面…画面を暗くして」と言う。
『便利くん』は画面を俺が言った通りに少し暗くしてくれる。俺はそれにありがとうと感謝してから現在時刻を確認した。
現在時刻03:48
俺は普段ならもう夢の中に旅立っている時間だ。しかし俺はまだ休みが今日も含めてまだ4日ある。これなら今日は今までずっと行こう、行こうと思って、いざ行こうとなるとやっぱ明日で良いやーってなって行けてなかった俺の右手の義手の修理をお願いしに病院に行こうかな。
今日はたしか『
俺はそう思いながら『便利くん』に7時30分にアラームをかけて、と言って瞼を閉じた。
………少し小さなアラーム音と振動で俺は目を覚ました。うん7:30ピッタリに起きることができた。稀に1時間以上寝過ごすこともあるから予定通りに起きれることは素晴らしい。と俺は思う。
俺はさっさと着替え朝食を作ってそれを食べて歯を磨き顔を洗う。そして9時半ごろに俺は家から『
家から最寄駅の電車に乗り、そこから4駅ほど移動したところで降りてそこから40分程度歩いたところで目的の場所に着いた。
それは、昔は栄えていたであろう面影を残すシャッター街の裏路地にひっそりとあった。それはところどころヒビが入り、看板は錆びつき文字が掠れて見えなくなりあまつさえ植物の蔓が絡まった、一見すると廃墟の様な建物であった。
俺は立て付けが悪くなったドアをガタガタっと横開きに開ける。
そして切れかけた蛍光灯がチカチカと照らす廊下を歩き目的の部屋の前に辿り着く。
ふぅ、とドアの前で息を吐いて、ノックをし入る。
そこにいたのは瓶の底の様な厚底眼鏡をし、薄汚れた白衣を纏った老人であった。老人はこちらを一瞥すると、また気にせずに自分の前の机に置かれている義手をいじくり回し始めた。
俺は、遠慮せずに老人の前に置いてあった椅子にドカッと座る。老人は、はぁ、とため息をついて体をこちらに向けた。
「悪ガキなんの様だ?」
明らかに不機嫌だ。
「悪ガキ呼びはやめてくれよ」
「ほざけ悪ガキ。ワシの産んだ子を傷つけたり壊したりする様な奴は皆悪ガキだ」
「昔から変わらないな龍蔵爺さんは」
龍蔵爺さんこと
俺はさっさと本題を話す。
「龍蔵爺さん実は、俺の義手の修理をお願いしたいんだ」
と言うと、
「…見せてみろ」
とぶっきらぼうに言ってきた。
「はいどうぞ」
と見せると、雷が落ちた。
「なんじゃぁこの状態わぁああ!!」
バシンバシンと俺の頭を龍蔵爺さんが机の上に置いてあった雑誌を丸めた棒で叩く。痛い。
「しょうがないでしょ!仕事が忙しいんだから!!」
「それでもこの…ワシの大切な子をこうもボロボロになるまで何故!放っておいた!?」
やいの、やいのやいの。そんなこんなで30分が経ってお互いがゼェハァ言い出したところで、言い争いは終わった。
「ハァハァ…とりあえず…ハァ…この子を直したいんだな?」
「そうだね」
「はぁ…分かった。受けよう。ただし!ワシは他にも仕事があるから時間がかかるぞ、それでも良いのか?悪ガキ」
「大丈夫だ」
「では1ヶ月後に取りに来い。それまでは…」
と言って奥の方に龍蔵爺さんは行ってすぐに戻ってきた。
「この子を付けておけ」
それは
「いくらだ?」
「うん?あぁ違う違う。それは、いつ作ったか分かりやすくするために付けたやつじゃ。…そうじゃその子と1ヶ月生活した感想を聞かせて欲しい。次に産んであげる時により良い子にする為にのう」
そのぐらいだったら良いよと言うと、龍蔵爺さんはありがとうと言うと、
「じゃあさっさと帰れ。ワシはこの子を今よりももっと良い子にしてあげなくては行けないんでな」
と、手をシッシッとやりながら言ってきたので俺は、
「じゃあまた今度」
と言って建物から出た。
そしてシャッター街から最寄駅に向かい電車に乗った。俺が乗ってから数十秒後にプシューとドアが閉まる音がしてそのあとは、ガタンゴトンと走り出した。
そのまま揺られること数十分俺の家から最寄駅に着いた。俺はそのまま家に向かって歩みを進める。20分程度歩いたところでようやく見慣れた家が見えてきた。少しだけ歩みを早める。
そこで気づいたが、なにやら俺の家の前をうろうろとしている不審者がいる。
そいつは俺の姿を見ると、こちらに一目散に走ってきた。そして動揺して動きが止まっている俺の前に立つとこう言った。
「犬助!家に匿って!!」
「お前…まさか」
信じたくない、が認めなくてはならない。
それは、、、伊藤千歳の声だった。
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