第16話 方向音痴シュウ

シュウがぎっくり腰を治す方法を調べてくると言ってログアウトした。

俺はその間、シウが俺の腰に跨って遊ばれていた。

「ッッアァビリビリする!!やめて負荷をかけないで!シウさん?聞いてますか?やめてくださいって言いましたよね?やめてガチで!おじさん死んじゃう!!」

「アハハハハおじさんおもしろ〜い♪」

そう言ってシウが俺の上半身を逸らしてきた。

「俺は全然面白くない!!アァッビリビリする!めっちゃビリビリする!」

「おもしろ〜い♪」

そんなこんなで15分程度が経ったぐらいでシュウが戻ってきた。

俺がシウに遊ばれている様子を見てシュウは開口一番こう言った。

「ずるいぞおっさん!俺も姉さんに遊ばれたい!!」

シュウ…君はブレないね。

「それで…シュウ。おじさんの腰の治し方は分かったの?」

シウがシュウに(ここダジャレみたいだな)聞くと、シュウはコクリと頷きながら、

「分かったよ。それと姉さん、父さんが姉さんに話があるらしいよ」

「えぇ〜ヤダヤダ行きたくない行きたくない〜」

「父さんが怒ったらまたゲーム出来なくなるよ」

「はぁ…すみませんが私は今日はもう落ちます」

と言うとシウが俺の上半身をさっきより強めに逸らしてきた。

「イッガァッ!」

「よしっ、楽しみ終わったし。じゃあ…お疲れ様でした」

そう言ってシウはログアウトしていった。

俺はシュウに腰の治し方を聞くとどうやら整形外科医という役職を持ったNPCか、教会で治してもらうらしい。整形外科医はまだ理解できるが、教会でどうやって治すんだとシュウに聞いてみると、修行僧モンク上位神官アークビショップなどが使える神聖魔法や回復魔法などで治せるらしい。

「よしっ!じゃあさっそく整形外科医とかいう奴の所に行こうか」

とシュウに言うとシュウは少しシュンとした表情でこう言った。

「残念なんだけどさ…この街にそんなNPCは居ないんだ」

「ファッ⁈」

えっ…じゃあ神官に頼むしかないのか。

え〜それなら街の西地区の大聖堂に行ってあの魅力的なNPCのシスターの人に…いやたぶんだけどアホみたいな額ぼったくられそうだから、プレイヤーが持っている教会に頼みに行くしか無いのか。けど、知らないプレイヤーに頼みにいくのは嫌だなぁ。

そんなことを考えているとそういえば俺にはメリアさんという出会って数日のほぼ他人の知り合いがいたことを思い出した。

メリアさんの教会の場所は大体覚えているので、シュウに西地区に知り合いの教会があると教えるとシュウは、

「じゃあさっさと行こう」

と言って俺の手を握ってきた。

「えっ、な、なんで急に手を握って来るんですか?えっ怖い怖い」

「はぁ…おっさん今ぎっくり腰のせいで歩くの遅いだろ。はぐれたりしたら大変だから握ってやってんの」

トゥンク。ヤダなにこのイケメン。惚れちゃう。

「あんまり変なことを考えるなよ。おっさんとはぐれると大変だからこうしてやってるだけだからな」

シスコン属性とイケメン属性にツンデレ属性まで持っているとは…完璧か?

「じゃあ行こう」

シュウのその声と共に教会まで俺たちは歩き出した。




10分後

「なぁシュウ?」

「なんだよおっさん」

「そっちの道だと西地区まで遠回りすることになると思うんだけど…」

「じゃあこっちか」

『そっちも同じなんだよなぁ』

30分後

「なぁシュウ?」

「なに?おっさん」

「いや俺の気のせいだったら良いんだけどさ…シュウ、お前もしかして方向音痴か?」

「そんなことない。さっさと行くぞ」

「そっちは遠回りだぞ」

「…そうか」

1時間後

「お前ぜってぇ方向音痴だろ!!」

「そんなわけないだろうが!!」

「じゃあなんで毎回わざわざ遠回りの道を選ぶんだよ!!」

「…健康の為だ」

「今そんなこと気にしている場合じゃねぇだろ!!」

1時間30分後

「やっと…着いた…」

「ふん。まぁ前よりは迷わなくなったな」

「やっぱり迷ってんじゃねぇか!!」

「前よりも迷わなくなっただけ俺は進化している」

「マップ使えよ!!」

「脳内マップで十分だ」

「そういう奴ほど迷いやすいんだよ!!てか今まで迷わずにどう移動してたんだよ!!」

「ふっ、姉さんについて行けば迷わずにすむんだぞ?知らなかったのか」

「姉頼りかよ!!」

「あのぅ、教会の前でお騒ぎになるのは控えて貰えると助かるのですが…あれ?ベルスケさん?どうかされたのですか?」

教会の前で俺とシュウが騒いでいるとその騒ぎを聞きつけたメリアさんが出てきた。

俺はツッコミで疲れたので、「腰。怪我した。治して。お願い」と、お願いをする。

するとメリアさんが、

「あっ、はいわかりました。簡単なやつで治るのでここで治しちゃいますね。」

と言って俺の腰のあたりに手を伸ばす。

「じゃあ治しますね。…神様お願いします」

そういうと視界の上に映っていた忌々しい『ぎっくり腰』のアイコンが消えた。

「なに今の詠唱?」

とメリアさんに聞いてみると、

「本当はヒールとかハイヒールとか言えばその回復が使えるんですけど、簡単なやつならこんな簡単なセリフを言うだけでも直せるんですよ」

と胸を張りながら言ってきた。

その後はシュウが500Gを払って、解散となった。

俺はそのままログアウトした



それにしても、シュウが方向音痴だとは思わなかったなぁ…


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る