第15話 腰『グギィ』

例の拉致事件(2話前のお話)から3日が経った。俺はその間もログインして1人でちまちまとレベル上げをしたおかげでレベルが21まで上がった。

ちなみにその時はライフルではなく街の南地区のテキトーな露店で購入したバールで近接戦闘の訓練を兼ねてレベル上げをしていた。

販売していた男はバールのような物という名前だと言っていた。

だからこれはバールのように見えるバールのような物であり逆にこれはバールのような物に見えるバールでもある。

自分でも言ってて頭ん中がこんがらがってきた。そんなことを思いながら俺は、フレンドの欄からシュウとシウの2人が今このゲームにログインしているか確認すると、オンラインとなっていて、今このゲームを遊んでいることが分かった。

俺はすぐに街の南地区に向かう。

二週間ちょっとぶりに初めてこのゲームで出来たフレンドに2人に会えることが楽しみだった。

どうやってシウをいじろうかなーとか、シュウはまた高速早口になるんだろうなぁーとか考えながら歩いているとすぐに着いてしまった。

俺はシウとシュウ2人がいつも露店を開いている場所に行ってみるとそこにはいつもと変わらずに露店を開いている2人がいた。

俺は2人に話しかけようと思ったが店の前にお客さんがいる様で接客をしていた。

俺は邪魔をしてはいけないと思って、少し離れた場所でお客さんの買い物が終わるのを待っていた。

2人の店で武器を選んでいるお客さんは6人組の仲が良さそうなパーティーだった。

ワイワイ。キャッキャッ。と店の前で仲良く話している様だ。少し聞き耳を立ててみると、途切れ途切れだが会話の内容が聞こえてくる。

『やっ…これ…いのかなぁ』

『いや…でもこっ…も捨て…い』

『予さ…いで選ん…れよ』

『えぇ…じゃ…しは…ングソード…るね』

『仕方が…いそ…がし…このサー…ルにいたそう』

『すみま…これで…けいをお願…ます』

途切れ途切れの会話の内容から察するに多分この子達はまだゲームを始めたばっかであんまりお金が無いんだろう。多分。

俺はそんなことを考えているとそのパーティーが会計を済まして何処かに行ったのでシウとシュウの店に近づく。武器が売れたので嬉しそうにしている2人に話しかける。

「よっ、久しぶり」

と声をかけるとシウが、狼人特有のもふもふの尻尾をブンブン振りながら、

「おじさん!お久しぶりです!!」

と言いながら突っ込んできた。




………突然だが皆さんはぎっくり腰というものをご存知だろうか?

ぎっくり腰とは簡単に説明すると、大体人間が人生に一度は経験する腰痛である。

多くの場合、重い荷物を持ち上げようとするなど、急に腰に負荷をかけると発生する。

そう…〝急な負荷〟だ。

俺は今、シウに突っ込まれている。いや、飛び込んで来るといった方が正しいだろう。

そして俺はそれを受け止めたが、獣人パワー+シウのスピードが組み合わさると、とんでもない衝撃になる。

そして俺はその衝撃をまともに受けて上半身が思いっきりのけ反る。

するとどうだ。腰に思いっきり負荷がかかる。すると腰から『グギィ』と嫌な音が鳴った。

俺はそのまま仰向けで倒れる。

俺の上でシウが、

「おじさん⁈大丈夫!!」

と叫んでいる。

シュウは安定の…

「おいおっさん。姉さんに乗ってもらえるなんて光栄なことだぞ?わかったらさっさと起きろ!じゃねぇと叩き潰すぞ!!」

と叫んでいる。

俺は起きあがろうとしたが、腰がジンジンとして起き上がれない。

視界に映るHPバーを見てみるとHPバーの下の所に赤い四角の中になんか腰に手を当てて痛がっている様なアイコンが出た。

俺はそれをステータスの所から確認してみると『ぎっくり腰』と出た。

どういう効果なのかアイコンを押してみると以下の通りだった。

全ての場所においてAGI敏捷性のステータスが70%下がる。

腰に負荷がかかった場合、HPが5%減少する。なおこれは、安全エリアでは発生しない。が、腰に痺れが発生する。

・・・クソみたいな効果だなぁ!!

とりあえずシウに降りてもらい、地を這うようにして2人の店の作業場みたいな所に寝転がる。

「おじさーん、大丈夫?」

「おっさん平気か?」

とシウとシュウが聞いてきたので、

「ダイジョバナイ」

と返しておく。

「おじさんどうしたの?」

「なんかぎっくり腰とかいうデバフがついた」

「どんなデバフだった?」

「AGIが全てエリアで70%下がって、街の外とかで腰に負荷がかかるとHPが5%減る。街の中とかだと腰に痺れが発生する」

「持続時間は?」

「少し待って。今調べる」

13d23h57m29sと出た。

「発生してから多分14日つまり二週間は続く」

とシウとシュウの疑問に答えてやると、シウが耳をペタンと倒して尻尾をシュンとさせて、

「おじさん。ごめんなさい」

と謝ってきた。

俺は、結構本気マジでシウが落ち込んでるので少し和ませようと少しだけふざけてみた。

「いやいや大丈夫だよ。飛び込んできた時は役得だって思ったし、だいたい現実リアルじゃ俺に美少女がそんなことをしてくれるなんて一生ないだろうしね」

「そ、それはどうも?」

「姉さんをそんな目で見ていたなんて…見損なったぞおっさん!!天誅を下してやる。チェストー!!」

そう言って斧をブォンと投げてきた。俺はそれをウッ!と唸らながら転がって回避する。その過程で作業場に置いてあった金床に背中がぶつかりぎっくり腰がさらに悪化した気がした。

「シュウやめなさい」

とシウがシュウにヘッドロックを決めているが、シウさんそれ多分シュウにとっては多分ご褒美になってると思う。証拠にデレデレしてるし。

あ〜マジでコイツら(主にシュウ)頭最ッ高にクールってるわ。ガチで面白い。

俺は腹を抱えて笑った。

するとシウとシュウも突然笑い出した俺を見て少し首を傾げながらもつられて笑ってくれた。

マジで臭いセリフだけど2人とフレンドで良かったわ。

……ところでぎっくり腰ってどうやって治せばいいの?



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