第7話 おっさん、土下座をする
街に着いた俺は、獣人の
どうしてこんなことになったのかというと…
街に着いた俺は、スマラサスクを買った露店で武器の修理と素材を買い取って貰おうとした。
1時間ちょっとで、買った武器を刃こぼれさせた俺を獣人の少年は呆れた目で眺めていた。
やがて、はぁ、とため息を吐き、口を開いた。
「どうしたら、さっき買った武器をボロボロに出来るんですか?」
至極真っ当なことを言ってきた。
「ビックホーンボアとかいう奴と戦ったら、ボロボロにしちゃいましたすみません」
理由と謝罪をすると、少年が興奮しながら。
「もしかして、ビックホーンボアの大曲牙とかいう素材を落としましたか!!」
「あぁそうだけど、それがどうした?」
そう返すと、少年は食い気味に、
「でしたら売ってください、ぜひ!ぜひ!ぜひ!」
「元から、買い取って貰うつもりだったし、お、おじさんとしては全然良いよ」
余りにも凄い押しに、俺は少し仰け反りながら答えた。
俺の視界には、大きくバンザイをしながら飛び跳ねる、獣人の少年が映っていた。
そこまで、嬉しい物なのかな…と疑問に思い、少年に聞いてみた。
「そんなにビックホーンボアの大曲牙はレアなのか?」
そう聞くと少年は、
「ビックホーンボア自体がレアモンスターですし、大曲牙もレアドロップなのでかなりのレア物ですね!!」
尻尾をブンブンと振り回しながら、答えてくれた。
あのデカブツがレアモンスターだとは到底思え無いが、まぁ俺よりもこのゲームを遊んでそうな少年がそう言うのだから多分そうなのだろう。
そう考えていると、少年が心配そうな声色で、
「あのぅ、もしかして売りたくなくなっちゃいましたか?」
言ってきたので、
「男に二言はないんだよ」
そう返して、トレードの画面を出す。
すると少年が困った様に聞いてきた。
「いくら払えば良いのでしょうか?」
そういえばそうだったなと思いつつ、値段を決めようと頭を捻るが、俺が
少年も、あのモンスターの素材は〜Gだったから〜Gかなとかレアモンスターの素材だから〜G +〜Gで大丈夫かななど小さな声で呟いている。
うんうんと唸りながら、何円で売るか、売って貰うか考えている内に、スタスタと足音が聞こえた。
どうやら誰か来た様だ…
顔を上げると、あの時ぶつかった子どもがいた。
子どもは、眠そうに目を細くし、長い黒髪を頭の後ろでまとめ、見ようによっては少女とも見える様な見た目だった。
獣人の少年が、ちょいちょいと手招きをし、人間の少年を近寄せ、トレードの画面を見せる。
人間の少年の目が少し開かれた様に見えた。
そして獣人の少年に小声で何か呟くと、そのまま露店に座り込んでしまった。
そして獣人の少年が口を開く、
「12000Gでいかがでしょうか?」
まぁ、それで良いか…
「それで大丈夫です」
そう言いながら、トレードの画面にあるOKボタンを押す。
「やったー♪ありがとうございます!」
そう言いながら満面の笑みで抱きついてくる。
俺は、手を広げて体に触らずに、
「どういたしまして、お礼なら、後ろで座ってる頼れるお兄ちゃんに言いな少年」
そう返すと、少年の表情が笑顔が凍り付いた。
「ど、どうした?」
俺は心配になりそう返すと、
「・・なです…」
一部聞き取れなかった…
「うん?」
「私は女です!!」
えっ?
え〜話を整理しよう。
1 俺が少年だと思っていたのは、女である。
2 間違えた性別を口にしている。
3 女の子は↑に対して怒っている。
うん、全部俺が全て悪いな…
ならばやる事は一つ!
「誠に申し訳ございませんでしたっ!!」
見よ、これが社会で鍛え上げられた、大人の土下座だあぁあー!!
しかもジャンピング土下座、これは点数高いですよー。
周りからの視線が痛いが致し方がない。
そうして地面に頭を擦り付けていると、死ぬほど冷たい声が頭上から聞こえてきた。
「姉さん、コイツどうする?潰す?」
わぁ〜お兄ちゃじゃなくて弟くんバチギレてる〜
俺は頭を擦り続けながら、
「本当に申し訳ございませんでした!!以後細心の注意を払いますので、許して下さい!!」
許しを
すると俺が本当に反省してるのが伝わったのか、
「まぁ、こう言ってるし許してあげようよ」
「はぁ、姉さんは甘いんだよ、こういう奴は腕の一本ぐらいへし折っても良いんだよ」
そう言って弟くんは俺の事を殺意に満ち溢れた目で見ていた。
「シュウ、落ち着いて、周りの人がこっち見てるよっ」
少女が弟くんを落ち着かせてくれなかったら、俺は今ごろそこら辺にボロ雑巾みたいな姿で転がっていただろう。
女神か?
「女神様、多大なる
そう言って俺は土下座の状態から立ち上がり、少女の前に跪く。
少女は、俺が跪いた事で更に他のプレイヤーからの視線を集めることになり、オロオロしている。かわいい。
「あの、えっと、そのっ、もう大丈夫なのでやめて下さい」
「いえ、女神様がいなかったら、今ごろ私は弟様にズタボロにされていたでしょう。その様な事にならない様にしてくださり、感謝しきれません」
この様な事を言うと、少女はより一層オロオロし始めた。
この姿が見れるんだったらもう少しこの
「お姉ちゃん、そいつ、姉さんがオロオロしてるの見て楽しんでるよ」
そう告げ口をすると、
「もうっ、揶揄わないで下さい!!」
そう怒ってきた。
「反応が非常に面白くてつい、ふざけてしまいました。申し訳ございませんでした」
そう一度謝ってから、
「自分は今日はもう落ちようと思いますので、また明日ここで会えたら良いなと思います。その時には自己紹介など出来たら良いと思っております。ではさようなら」
そう言ってログアウトのボタンを押した。
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