第6話 おっさん ソロ狩りをする

フィールドに出た俺は、セトと一緒に狩った所に向かっていた。

街の近くにも、いるにはいるのだが、敵自体のレベルも低く、目新しい敵もいないからだ。

そうして、この前の場所に着くと、なにか手頃な敵はいないかと、辺りをぐるりと見回してみる。

すると、200メートルくらい離れた所にそこら辺にいるイノシシよりも、体も牙も大きいイノシシがいた。

HPバーの上のところにある名前をみると、ビックホーンボアという名前の様だ。

ビックホーンボアの周りに4体、普通のイノシシがいるが、攻撃方法は突進と噛みつきだけだと、さっきのレベル上げで分かったので、問題はない。

問題は、あのビックホーンボアとかいうデカブツがどの様な攻撃をしてくるかが分からないという事だけだ。

なら…

「1発で仕留めれば良いだけだ」

そう呟きながら、ビックホーンボアに狙いを定める。

レベルが上がったお陰か、前よりも狙いが定まりやすい。

そして引き鉄を引く。

放った弾丸は、一瞬でビックホーンボアの頭部に命中する。

そしてHPバーが減っていき、6割を切る直前で止まった。

「マジかよ」

これには、流石に驚いてしまった。

さっきのレベル上げした場所よりモンスターのレベルが高いとはいえ、あのデカブツは、単純計算でイノシシの2.5倍程度のHPがあるという事だ。

ほんと嫌になるが、デカブツを先に倒す、という

作戦は無しにして、周りのイノシシを倒してから、一騎打ちをすることに決める。

そうと決まれば…

俺に向かって突っ込んでくるイノシシの頭に慎重に狙いを定め、弾丸を叩き込む。

一撃で、HPバーのゼロになり、ポリゴンの欠片となって消えていくイノシシ達。

最後の一匹を倒し、ちょうどライフルが弾切れになった所で、ビックホーンボアが、俺の目の前に辿り着いた。

仲間を倒された恨みか、息を荒くしながら、俺に怨嗟の視線を向けていた。

弾切れになったライフルを背負い腰からスマラサスクを抜く。

ビックホーンボアもどうやら足で地面を引っ掻き、攻撃の準備ができた様だ。

そして、俺とデカブツはほぼ同時に、走り出した。

俺は、横に少しずれながらデカブツの突進をかわし、頭を斬りつける。

これなら少しは良いダメージが期待できると思ったが、そんな淡い期待は簡単に裏切られた。

甲高い金属音と同時に、俺が振るったスマラサスクが弾かれる。

「マジか!」

今ので倒せるとは思って無かったが、相対速度が掛かっている状況で弾かれるとは思わなかった。

スマラサスクを弾かれた衝撃で、身体が硬直してしまう。そして、それを見逃してくれるほど、コイツは甘くはない様だ。

急旋回で速度を落としつつ、回転により速度をつけ、大きく湾曲した牙で地面をえぐりながらかち上げてきた。

身体が硬直している為俺はその牙をまともに受けてしまった。

「ガゲホッ」

俺はそのまま吹っ飛ばされる。

HPバーに視線を向けると、今の攻撃で残り2割まで減らされてしまった。

しかしこのままでは追撃が来てそのままお陀仏してしまう。

俺は、無様に転がりながら、体勢を立て直した。

ビックホーンボアは、今の一撃で勝者は自分だとほぼ確信したのだろう、もう既に勝ったかの様に顔を上に向け左右に振っている。

それを何度か行ったあと、勝負を決めに来たのだろう、またさっきと同じ様に地面を足で引っ掻いてから突進してくる。

俺はまた、横にずれながら突進を躱しスクラマサスクで斬りつける。

その様子を見て、まるでこのデカブツは嘲笑あざわらう様な視線を向けてきた。

また、コイツの剣を弾いて俺の自慢の牙でトドメを刺してやる…とでも思っているのだろうか。

「残念だけど狙いは、頭じゃ無いんだよなぁ」

そう言いながら、図体に対して少し細い脚を切り飛ばす。

ブヒィ、と鳴き声を上げながら突進の勢いのまま転ぶビックホーンボア。

俺は、スクラマサスクを逆手に持ち替え、なんとか起き上がろうと必死にもがいているビックホーンボアの喉元に突き刺した。

やはり、急所に当たるとHPバーがぐんぐんと減っていく。

グギァと小さな断末魔を残しながら、ビックホーンボアがポリゴンの欠片になって消えた。

「コイツ、強かった〜」

現在の自分の状態を確認する。

HPは残り2割。

スクラマサスクは、少し激しく使ったので、刃こぼれが出てきてしまった。

ライフルは、奇跡的に少し傷が出来たくらいでなんとも無かった。逆に少し味が出てきた、とポジティブに考える。

そういえば、あのデカブツは何をドロップしたかストレージを開き確認してみる。

俺のストレージにはビックホーンボアの毛皮とビックホーンボアの大曲牙というアイテムが新しく追加されていた。

とりあえず、一旦街に戻ってあの少年に修理と素材を買い取って貰って、今日はとりあえず落ちよう…

そう思いながら、マップを開いて、街へと続く街道に向かった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る