第4話 おっさん、初めてモンスターと戦う

街の外に出てみた俺はまず、フィールドの美しさに驚愕した。

眼前に広がる草原、風で揺れる草、地面に手をついてみると少し反発するような感触があった

まるで現実だな…

そう思っているとセトが、イタズラが成功した子どものような笑顔をしながら、

「驚いた?」

と言ってきた。

「まぁ、そうだな」

と返すと、

「このゲーム機本体には実験段階の感覚ソフトが組み込まれていて、現実とかなり似た感覚が得られることが売りなんだ♪」

と自慢するかのように胸を張った。

確かに、ゲームと知らなければ、現実と間違うのも許さない無理はないか…

そう思いながら、手頃なモンスターがいる場所に歩き出した。

どうやら俺のVRMMOゲームの初めての敵はイノシシのようだ。まぁ、一番最初のフィールドの敵だから、体が燃えてるとか、某フ○ムのダークなソウルにいる鎧を纏ったイノシシじゃないだけマシかもしれない…

そんなくだらないことを考えながらも、イノシシを倒す為の武器をストレージから引っ張り出す。

そういえば、ランダムでキャラを作ったから、武器とか何にしたか俺も分からないんだよな。

まぁ、所詮はゲームだし何が出てきても大丈夫…

そう思っている間にストレージから出てきた武器は、俺が予想していなかった物であった。

それはそう、まるで、

「ライフル?」

第二次世界大戦の兵士が持っている様なボルトアクション式のライフルを眺めていると、思いっきり頭を叩かれた。

「痛ってぇ!!」

頭をさすりながら、俺のことを叩いてきた奴のことを睨みつける。

「何すんだよ、馬鹿野郎が!」

「馬鹿はこっちのセリフだよ!」

そう言いながら、脳筋森人セトは薄い胸を張った。

「ものは試しにそこのイノシシをそれで撃ってみなよ。」

ああ、わかった…そう返しながら、少し離れた所にいたイノシシに狙いをつける。

少し離れているとはいっても、止まっているイノシシに狙いをつけられないほど俺は不器用じゃ無い…

そう思っていたが、その思いはすぐに消え失せることとなった。

「重ぇ…」

自分が想像していたよりも、ライフルは重かったのだ。しかもスキルの熟練度が低いため狙いもなかなか定まらない。


少し手間取りながらも、イノシシに狙いを定めることが出来た。イノシシの頭上にHPバーが表示されている。当たり前だが、先に戦ったプレイヤーがいない為、イノシシのHPバーはマックスを表す緑色だった。

息を吸い、照準のブレを減らす。そして短く息を吐きながら、引鉄ひきがねを引く。

耳につんざくような銃声がした後、俺が狙っていたイノシシは倒れ込み、HPバーが緑からみるみる減っていって、黄色を通り越し、赤色になり、そしてHPバーから色がなくなった。

プギィと小さな断末魔を残して、イノシシはポリゴンの欠片となって消えていった。

どうだ、みたかとセトの方に振り向こうとして顔を横に向けた時、右の方の耳から、ブヒィと鳴き声が聞こえた。

それもなんか3頭位、鳴き声が重なって聞こえたけど、空耳に違いない、きっとそうだ、そうに違いない、ほーら振り向いても何もいな…いたなぁ。

三匹のイノシシは、それぞれが俺に向かって突っ込んできた。

「ぐへぇ」

回避行動を取ることができなかった俺は、突進され無様に転げ回った

それだけで、俺のHPバーが4割ほど減って黄色になる。

まずい、このままだとイノシシ相手にハメ殺しされる…そう考え、このまま転げ回って逃げようかと思っていると、視界の端の方で一瞬何かが閃いた…俺のことを殺そうとしていたイノシシ三体の動きが一斉に止まる。

そして、一瞬でポリゴンの欠片になって消えていく。

突然のことで理解が追いつかなくなるが、こんなことを出来る人物はこいつしかいない。俺はそいつに仰向けになりながら、

「ありがとな」

そいつは、いつの間に抜いたか分からない直剣を鞘に納めながら、

「どういたしまして」

そう言った。


そのままセトに姫プしてもらって30分程度イノシシを狩り続けたところ、俺のレベルが4まで上がったところで、セトが急用があるとか言って、街に帰ってお開きにした。

去り際に、

「さっきの戦闘から分かるように、ライフルは音が響いて、モンスターを呼び寄せるから、街の武器屋で近接戦様の武器買っておきな〜先輩からのアドバイスだよ〜」

そう言いながら凄まじい勢いで走っていった。

とりあえず先輩(笑)のアドバイスには従っておきますか…

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