第2話,初稽古

次の日


俺は執事のイムさんに叩き起こされた

時刻は朝4時、いつもならまだ起きている時間だ


俺は昨日イムさんに明日から毎日朝と午後に稽古をつけると言われていた

ただ俺はてっきり8時くらいにやるものだと思っていたのと、異世界に来たばっかりにも関わらず熟睡できるメンタルは持っていなかったので俺は絶賛寝不足だ


「おはようございます海斗。それでは庭に準備でき次第庭に来てください」


しかし昨日お嬢様ことフレアさんと約束してしまったからにはやるしかいるまい


俺はあっちの世界でろくに運動してこなかった


少食だったから太ってはいなかったが一般人と同じ食事をしていたら間違いなく

相撲部にスカウトされていただろう


それに僕は引きこもり生活であまり異世界系をみてこなかったので剣の知識は本当に赤子同然


だから少しでも稽古をして剣に馴染みがあるであろうこの世界の住民に追いつかなければ


生きるためにも


昨日イムさんに準備してもらった服に着替えて俺は庭に向かった


庭につくとイムさんは木刀のようなものを何本か持っていた


俺に気づいたイムさんは手に持っていた木刀を一本俺に渡してきた


「その木刀は今日から君のです。めちゃくちゃ使ってあげてください」


俺は頷いた


「それでは始めましょう。海斗は剣の経験は?」


「はい、全くありません!」

堂々と答えた

「そうですか。あっちの世界には剣はあるのですか?」

「あるにはあるけど真剣とかみたことないです」

「そうですか、それならまず持ち方から教えていきます」


それから最初の30分は剣の持ち方や振り方なんかを優しくわかりやすく教えてくれた


     最初の30分は


「そうですね振り方はだいたいそんな感じです。それでは今から朝食まで素振りをしていてください。私はそろそろ仕事に戻らないといけないので」


「わかりました。ちなみに朝食は何時からですか?」


「そうですね。お嬢様の寝起きの機嫌次第ですけど大体8時半ごろでしょうか」


「うん?」

俺は耳を疑った


「すいませんもう一度いいですか?」

「8時半です」

俺の聞き間違いではなかった


「いや今の時間4時45分ですよ」


「ええ。ですから3時間45分頑張ってください。多少前後するので私が呼びに来たらやめてくださいね」


この人は正気なのか?

ただでさえろくに運動してないからすでにちょっと疲れているのに約4時間も素振りをやれと言うのか?

なに!?

この世界だとこれが普通なの?

そう言うもんなの?

俺のいた世界が甘かっただけ?


とにかくそんなに素振りしてたら死んじゃう

仕方ないうまいことサボるしかないか


「ああ、あと。」

そう言うと彼は小走りで館の玄関に行き誰かを呼んできた


「お待たせしました。

貴方が素振りをしている間、メイド見習いのアリーダが付きっきりでみてくれているので素振りをしていて正解がわからなくなってきたら彼女に聞いてください。

安心してください。彼女も多少剣の心得があります

ああ、あとないと思いますがもしサボったりしたら彼女が容赦なく右手のモーニングスターで貴方をしばき倒すのでくれぐれも気おつけてくださいね

では私は仕事がありますので」


そう言うとイムは急いで館の中に入って行った


……入っていってしまった


言いたいことはたくさんある


しかしそれを口にする暇はない


イムの野郎が館に入って行ったばっかなのに彼女のモーニングスターはもうすでに俺の方に向けられていた

このままでは俺の死因がメイド見習いにモーニングスターで殺されたになってしまう

俺は急いで剣を振り始めた



4時間後


「やぁ海斗、お疲れ様でした。

アリーダ、海斗はちゃんとやっていましたか?」


アリーダはその問いに少し考え込んだあと首を縦に振った

「そうですかでは朝食にしましょう。

二人とも手を洗って食堂まで来てください」


正直イムの話はほとんど入ってこなかった

腕がパンパンで今にもちぎれそうだった


大体なんだよアイーダってやつ、怖すぎんだろ

普通に振っている時はニコニコしてこっちを見ている

だけど少しでも振りが甘くなると顔はそのままなのに低い声で

「甘い」

と言ってくる

そしてそんな振りが何度か続くと持っているモーニングスターを振り回し始める


そんなことされたら怖さで腕のことなんて忘てしまう


だから今腕の疲労が一気に襲いかかってきた

正直死にそう

無理

午後にも稽古があるなんて考えられないしんどい

やめたい


そんなことを思っていると

アイーダが喋りかけてきた


「お疲れ様、海斗君。始めてにしては頑張ったほうだよ。

君は絶対強なるとお姉さん思うな~。だから辛いだろうけど頑張って。すぐになれるから

お姉さん応援してるぞ♪」


俺はとんでもないことに気づいてしまった

このアイーダという方、とても美人なのだ

大人びた顔つき、さらさらした黒髪ロング、モデルさんのようなボディー、そして圧倒的大きな胸


あの時は稽古のことで頭がいっぱいだったけど

俺は4時間もの間この美女と一緒に過ごしていたのか


しかもこれから嫌というほど稽古するだろう

しかしその度に俺はアイーダさんと一緒になる

もしかしたらアイーダさんとお近づきになれるのではないだろうか


なんだろう稽古が楽しみになってきた

俺は始めて男に生まれてきてよかったと思った

美女にいいところを見せたいという男に備わった本能さえあればこの辛い稽古も乗り越えられる


俺は無限地獄だと思っていた稽古に希望を見出した

希望が見えた瞬間、稽古が待ちどうしくなった


男とはなんと単純な生き物なのだろう

しかしなんと素晴らしい生き物なのだろう


俺の心は今までにないくらいの喜びであふれていた


そしてその綺麗な心のままアイーダさんと二人で手を洗いに行くのであった


それはそれとして腕痛え




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