春にさよなら ニ
「凄く大きくなったんだね、ナツは」
少年姿のハルは柔く口端を上げてあの頃の親しく誇らしい憧れた姿のままにナツへと優しげな微笑みを向けてくる。
「あぁ、アンタの姿は、あの頃からずっと、変わっちゃいないがな」
それに対し、大人へと成長したナツは目の前の微笑みを拒絶する意志を穿く鋭い眼光を強め、近づかんとするハルの足を止めさせた。
「つれないんだね、僕達の嫌いだった大人になってしまったという事かい?……いぃや、僕の方が心は大人ではあるか。君よりもずっと冷徹に、身体弄られた大嫌いな大人と同じだぁ……ぁははハ」
だが、ナツの拒絶に構わずハルは余裕めいた笑みで親しさを崩さずだ。体を抱くように両手を前に組みおかしげに身体を震わせ、枯れ桜を中心として円を描くようにゆっくりと再び歩きだす。
「聞いたよ。「
「あぁ、違わず、その通りだ」
「へえぇ、それはご立派なことだねぇ……それで、海外遠征の前に僕に会いに来てくれたって事かい?」
「あぁ、最後の心を残りを潰しにきた。やはりアンタを、放置するわけにはいかなかったんだ……俺は、決めた。この腕で引導を渡す」
ナツは眼光鋭く拳を構え、ハルと対峙し、同じく枯れ桜を中心とし円を描き、ゆっくりと歩きだす。
「うぅん、フフフ、勇ましいねぇ。だけど、僕も「総帥」の邪魔者であり続けるオマエを野放しにするわけにはいかないんだよね悪いけど……アレ、今何を言ってた? あぁ、そうだ聞いてよ、最近ようやく「食欲」がでてきてね、移植された「
感情が高ぶり始めてゆくハルの歪み隠さぬ笑いと濁り始める声に、ナツの中で確かな存在が消失していく事が理解できる。ハルの残酷な言葉に嘘は無いと、信じられる。
「ひとつ聞こう、キサマのいう「食欲」というのは」
「くだらない事を聞くんだなアァッ。僕達は「
「
「
ハルが血が濁ったような白目無き眼球を剥きあげ、愉しげな笑いを高らかに発すると同時に、枯れ桜の反対から凄まじい速度で何かが強襲してくる。
「むッッッ!!?」
ナツは脅威的に強化された動体視力で、齧りついてくる異形の強襲を両腕で受け止めた。モスグリーンのライダーグローブが破け散り、ナツの変異した白銀の両腕が剥き出しとなる。
「それエェッ同胞を手に掛けた腕なんだねエッ! アアッ、そうならサァッ!!」
「
両者の身体が枯れ桜に隠れ、地を踏み飛び上がり、変異した桃色の狂眼を対峙させた。
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