47話 バレちゃった②

「そうそう。召喚の目的だけど、魔王討伐は口実よ。実際は世界征服の足がかり」

 アリアドネがさらっと言った。


「え?」

「正確に言うと他国の勇者対策ね。というよりユナを倒すことを視野に入れているみたいよ」

「僕を?」

「そう。今の戦力じゃユナには勝てないからって召喚の儀式をしたって。あの時点では、ユナは居なかったのにね」


「わざわざ邪魔な相手を呼び出すなんて、よっぽど暇なんだね」

 ユナが呆れたように言う。

「だからリースベルト勇者の目的達成は難しい……というか無理よ」

 アリアドネが無理だと言い切った。

「まあ、確かに」

 それにはユナも同意だった。加護のことを踏まえても無理だろうと。



「目的達成が出来ないのなら、リョウはどうやったら帰れることになるの?」

 そうなると当然の疑問だった。

「召喚の目的が不当なものだったり不可能なものなら、それを訴えることで条件を無効化できるっていうのがあった気がするけれど……。ごめん、この世界の召喚陣についての詳しいことは分からない」

「そうね、その点については私の方でも調べておくわ。もう暫くは王城のメイド続ける予定だし」


「そういえば王城で働いてるんだっけ」

「そう。リースベルトの情報って全然なかったから潜入調査だーっていうことになったんだけど、私しかできる人がいなかったのよね」

「あー、確かに。リースベルトは人間以外を嫌ってるんだっけ」

 リースベルトは亜人を含む人外の迫害が強いということは、周辺国では周知の事実だった。

「みんな見た目で純人間ではないってわかっちゃうもの。私も純かどうかは怪しいところあるけれど」

「リアは能力が先祖返りなだけで人間でしょ」

「まあねー」

 さらっと新情報を出した。


「先祖返りって?」

 話についていけなくなりつつあったサリーが今だと口を挟んだ。

「私の祖先のどこかに蜘蛛の力を持った存在が居たらしくて、私はその能力を受け継いでいるの」

 答えたアリアドネは指先をクルクルと動かして糸を繰り出し、空中であやとりのような事をやった。

「糸使いってこと?」

 サリーの目が輝いた。

 糸使いといえば最強キャラというイメージが強い。それも、周囲から舐められてる実は強い系の。

「糸使い。カッコいい言い方ね。そう名乗ろうかしら」

 アリアドネも満更ではなさそうだった。




「あ、ついアリアドネさんの話になっちゃった。話戻していい?」

 糸使いの話が盛り上がりそうになったところで、サリーがストップをかけた。

 今はユナの話をしているところだった、と。


「と言いつつ本題とは少し逸れるんだけど気になったから教えて。ユーナちゃんのパーティメンバーについて」

 脱線はしたままだった。


「パーティメンバー?ああ、人外って話の方?」

「そう。人外っていうか亜人?この世界には多いの?獣人はちらっと見たけど」

 オブシディアンに着いた時に獣人は何人か見かけていた。

「パーティメンバー、というか旅の仲間にはエルフで王女とか元人間の魔族とかいるよ。今度会ったら、というか多分会うことになるからその時に紹介する。

 ……あ、言い忘れていたけど、ルーも仲間だよ。あの子は獣人」

 そういえば言っていなかった、とユナが付け足した。

「ルーって、道案内してくれた?ええ!?そんな素振り見せてなかったじゃない!」

 予想もしてなかった、とサリーが驚く。

「気付いてからは態度から察して他人のフリしてくれてたって」


「じゃあ、雫さんの時は?」

 もしかして知り合い?といった様子で訊く。

「雫はルーに頼んで連れてきてもらった。ルーが、というより僕の伝手で。別行動の口実作りだったけど」

「勇者同士の繋がりってこと?」

「そういうこと。雫が呼ばれたばかりの頃に知り合って、たまに共闘した仲」


「いいなー、そういうの、羨ましい」

 サリーがぼそっと言った。

「?」

「あ、本音が口に出てた。そういった内容の作品とか結構好きだから、体験出来て羨ましいなって」

 声に出したつもりではなかったサリーが慌てて付け足す。ユナはだいたい気付いていた内容ではあったけれど。


「巻き込まれて異世界に召喚されて、魔法とか使えるようになって、何やら陰謀に巻き込まれつつある今も十分ファンタジーじゃない?」

「それは、そう」

 ユナが今の状況を簡潔にまとめると、サリーは間髪入れず同意した。



「というか。ユーナちゃんの仲間、キャラ濃すぎない?」

「言われてみれば、全員種族が違うのも珍しいかもしれない」

「そのほとんどがユナに恩があって自主的に着いて行ったのよね」

 少しの間空気だったアリアドネがまた話に加わる。

「なにそれ、詳しく」

 サリーが食いつく。

「私の場合は使い所がなくて、周囲に疎まれて嫌いだったこの糸の力を好きになるきっかけをくれた事かしら」


 結局話は脱線したまま続いた。

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