46話 バレちゃった

「…………」

 ユナの意識がふっと浮上した。

 目を開けると見知らぬ天井があった。


 ゆっくりと身体を起こすと、少しこわばっていることに気が付き、ベッドの上で身体を伸ばす。

 そうしているうちに部屋の扉が開かれた。


「あっ!ユーナちゃん!やっと起きた!」

 そう言ってサリーが駆け寄る。

「2日も起きないからめっちゃ心配したんだよ!」

「2日……」


「だからそこまで心配しなくて大丈夫って言ったでしょう?」

 続けてアリアドネも部屋に入ってくる。


「リア?」

「あー、うん。おはよう、と言ってももう夕方だけど」

 アリアドネは少し気まずそうな顔をしていた。

「ごめん、ユナ。ちょっと喋っちゃった」

 アリアドネのその発言に思い出したようにサリーが言う。

「そうだよ!ユーナちゃん、初めてここに召喚されたんじゃないんだってね?なんで教えてくれなかったの!?」


「あー、えっと。どこまで?」

「私がユナの元パーティメンバーだった事と、ユナがウィスタリアの勇者だってことくらい、ね」

「ほとんど全部じゃん」

「ほんと、ごめん。言い訳するわけじゃないんだけど隠してるの知らなくて」

「いや、言ってなかった僕も悪いし……。サリーも、隠しててごめんね」


「理由をちゃんと説明してくれないと許さない……と言いたい所だけど、まず何か食べれる?まる2日も何も食べてないでしょ?」

 前半は怒っていたが、後半は心配していた。

「とりあえず起きれる?簡単なものならすぐ準備できるから」

「ありがとう。……っと」

 上半身は軽くほぐしていたので問題なかったが、下半身はまだだったので少しふらついてしまった。


「支え、要る?」

 ベッドのふちで身体を支えていたユナにサリーが手を差し出す。

「大丈……いや、要る」

 大丈夫、と言いかけたところで不機嫌そうなサリーの表情を見てしまったから素直にその手を取った。


 その様子をアリアドネは微笑ましそうに見ていた。





「で、話の続きだけど」

 アリアドネの持ってきた果実水を飲みながらサリーが切り出した。


「うん。何から訊きたい?」

 隠していることは沢山ある。何から話すか考えるより訊かれたことに答えるスタンスにした。それでもまだ話せないことはあるけれど。

「まず、なんで隠してたの?勇者だってこととか実力とか」

 当然その質問からだった。


「今回の召喚された時、巻き込まれだって気づいたけどどういう状況かは分からなかったから黙っていた。その後、召喚したのがリースベルトって分かってからは周囲には絶対バレないようにしないとって思っていた。

 ……ウィスタリアとリースベルトは、ほぼ敵対しているから」

「あー、敵国に呼ばれたって気まずい……」

「一応、召喚の条件を満たさないと帰れないって決まりもあるから、勇者……リョウがちゃんと力をつけないといけない、だから変に頼られるのは面倒だって思って力は制限した」

 ユナは一息に答えた。


「あ、そういえば帰還方法については話してなかったね。召喚の条件って、魔王討伐ってことだよね?」

「言ってることが全てなら、そう。だけど、今魔王はいないはずで」

 ユナはそう言ってアリアドネの方へ目線を向けた。


「ええ。あれから魔王が出たって話はないわね」

「えっ、じゃあどうやったら帰れるの?」

「多分、僕だけならすぐにでも帰れるし、少し負担はかかるだろうけどサリーを連れて行くことも出来ると思う。魔王については、調査中」

「え?帰れるの?」

「元の世界とのリンクは繋がっているし、最悪ウィスタリアの魔法陣からも帰れると思うよ」

 そう、あっさりと言う。


「問題点と言ったら、こっちとのリンクが薄くなるからこっちに戻ってくるのは難しくなるかな」

「ユナはそれで良くても、こっちではユナを慕う人多いんだからたまには遊びに来てくれないと困るわ」

 熱狂的に慕っているひともいることだし、という言葉は飲み込んだ。


「帰れる?じゃあ帰るわっていうのはこっちで仲良くなったひととかに申し訳ないところもあるかなって。もしサリーが今すぐ帰りたいって言うのなら強行できるけど」

 そうサリーにふる。

「その言い方は意地悪。帰るなら、来た3人で帰りたいな」

「そう言うと思った」


「その3人ってうちのもう1人、今は別行動なのよね?」

「そうね。気になるのはレナちゃんが一緒にいるってことだけど」

「レナちゃん?ああ、王女のことね。あの人、今独断行動してるみたいよ。本来なら2人と一緒に王都に戻ってくる予定だったみたい」

「勝手に予定を変えたってこと?言われてみれば護衛の人、少し戸惑ってたかも。もしかしたらレナちゃん、リョウに惚れちゃったのかもね」

 サリーが真相に近い冗談を言った。

「可能性的にはあるかもしれないわね。立場上、男性耐性はあまりないだろうし」

 アリアドネもそう返した。

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