35話 改めて採集を。そして、

「今日は、昨日やらなかった採集をメインにやりたいと思います」

 朝、リョウがそう宣言した。


「昨日はリョウが怪我したから帰るの優先したものね」

「うっ、その通りだけどそんなはっきり言わなくても」

「ごめんごめん。ユーナちゃんもそれでいいよね?」

「いいと思う」

 アイテムも準備したし、怪我も大したことなかったし、連日活動にはなるけれど大丈夫だろう。


「一応、ギルドで採集場所周辺の魔物情報訊きに行った方がいいんじゃないかな」

 ついでにそう提案した。備えあればなんとやらだ。

「いいね!スライムの異常発生?もあったし慎重に行こっ」




「採集場所は、ほとんど昨日通った場所周辺だから昨日なんともなかったなら大丈夫、ってことかー」

 ギルドで聴いた話をまとめるとこう。私がこっそり魔物倒しちゃってたから超安全なルートみたいに見えてるはず。ちゃんと警戒させないと。


「じゃあ行こーう!」

 サリーの掛け声に合わせて、森へ足を踏み入れた。




ーーーーーーーーーー

「やっと着きましたのね」

 3人と入れ違いくらいに、2人の男と1人の少女がオブシディアンに到着した。

 少女は疲れを隠せない様子だ。

「長旅お疲れ様でした、姫。ここからはお忍びとなりますのでお気をつけを」

「わかっていますわ。出来るだけ目立たない様、勇者一行を探すのですよね」

「その通りです。我々は門番と話して来るので少々お待ちを」


 男2人は少女を、セレナータを待たせ、門番と会話を始めた。


 その様子を見ながら、セレナータは溜息をひとつ。

「勇者の連れの女2人を連れてこいだなんて。面倒ですわね。……それにしても勇者様はかっこよかったですし、あの2人のどちらかは彼女さんだったりするのでしょうか。あわよくばわたくしが立候補を……」

 少し頬を染めながらそんなことを呟く。

「お父様を大臣も、護衛たった2人でわたくしをお使いに行かせるなんて酷いですわ。ここまでの道程だって徒歩でしたし。こんな長距離を歩いたのは初めてでしたわ」


 王宮の中でぬくぬくと育ったセレナータにとって、王都を出たのも初めてであれば馬車で行けない場所へ行くのも初めてだった。

「どうせ行かせるのでしたら、最初から行かせれば良かったですのに。確か、他国の勇者召喚で呼ばれた者にはその国の王族が行動を共にしたのでしょう?何故わたくしは一緒に行けないのでしょう」

 まだ門番と護衛の話は終わらない。


「そうですわ。女2人は護衛に任せてしまって、わたくしは勇者と行動を共にすればよろしいのですわ!王都を出てからなんだか身体の調子がいいですし、ちょっとくらい遊んでも許してくれるでしょう。もしもの時は連絡して帰ればいいのですし!」

 ルンルン気分になったセレナータは話が終わりこちらに戻ってきた護衛を出迎えた。



「では、打ち合わせ通りに。勇者一行はこの街の宿を拠点としているようです。同じ宿に部屋を取りましたのでレナ様はそちらに。我々も同じ宿が取れましたので一緒に向かいましょう」

「宿、ですのね」

「レナ様にとっては慣れない環境かと思いますが、そう長く滞在することはありませんので。ちょっとした非日常体験だとでもお思いください」

 宿と聞いて不安そうにしたのを必死でフォローする護衛だったが、セレナータは別のことを考えていた。

(勇者と行動するとなると、宿に泊まることも慣れなければいけませんわね。昨日も体験した野宿だって……。わたくし、耐えられるかしら)


「まずは宿で一休みしましょう。お疲れでしょう?」

「そうですわね。野宿では休んだ気になりませんでしたわ」

 護衛のその言葉に二つ返事で答える。

 やはり、整えられたふかふかで清潔なベッドでしか寝たことがないセレナータに、いきなり野宿は辛いものがあった。これから行く宿もそれに比べれば、比べられないほど固くて質素なものなので疲れが取れるのかと言われれば難しいかもしれない。


 護衛に案内されながら宿へと向かう一行。

 一応は身分を隠し、冒険者風に装ってはいるが。やはり違和感は拭えなかった。



ーーーーーーーーーー

「あれって……」

 そんな少し浮いた一行に視線を送る人物がいた。

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