17話 神子との邂逅

 そんなこんなで服飾店に来た。ギルドでおすすめされただけあって、質も量も数多く揃えてある店だ。

 私たちは自分たちの好みもあるから、と別行動している。私に限っていえばここでの服も魔法袋の中にあるから買う必要はない。店内を見た感じ、差異もなさそうだし。だからタイミングを見てそれに着替えようかと思っていた。


「みつけた……!!」


 そう考えて入口付近で暇を持て余していた時、そんな声がした。


「その服!あなた達ね!?」


 その声の主はそう言って私の肩を掴んだ。

 私はちらりと店の中を見て2人がこちらに気づいていないことを確認すると、

「ちょっと詳しく訊いてもいい?」

 そういってその子を外に連れ出した。




「あなた、神子?」

 私は開口一番にそう訊いた。

「そう。あなたの連れの少年がこの町を溶かし尽くすのを視たの」

 あっさりと予知の内容を詳しく教えてくれた。連れの少年、というのはリョウの事だろう。

 つまり近いうちに魔力を暴走させて町を燃やした、それをこの神子は視たということで間違いないだろう。

「でも少し変わったから何かしたんでしょ?」

「変わった?」

「燃えるのが午前中から夕方に変わった。なにかしたんでしょ?」


「今日の予定は午前に魔法講座、午後に解体講座を受ける予定だった。でも神子がギルドに来ていて人手が足りないからという理由で午前の予定を変更した。

 もしも魔法講座で魔力暴発を起こしそれが視えたものだったとしたら。それで解体の後に午前出来なかった魔法をやることになった、と考えると合うかもしれない」

 神子が素直に予知を教えてくれたから私も考察を伝えた。


「予想してたということ?」

「魔力が暴発するかもしれないということは。まさかそんな規模だとは思わなかったけれど。とりあえず魔法講座を後回しにしてリョウに魔法を使わせなかったらどう?」


 神子は少し目を閉じて考えた。

「だめね。魔力暴発は変わらないわ。でもきっかけがそれなのは間違いないみたいね、また変わったから」


「そっか。じゃあ場所を考えて町に影響がないところで暴発させれば被害は少なく済むね」

 岩場や水中であれば燃え広がることもなく被害は減るかもしれない。それにある程度なら私が軽減させることもできるはずだ。


「変わった。町は無事。

 ……なんか、慣れてる?」

 神子からそう訊かれた。


 確かに何度か先視と未来の調整はしたことあるけれど……。でもまあ、神子ならいずれわかるから隠さなくてもいいか。

「前に別の神子とやったことがあるからね、こういうことは」

 そうネタばらしをした。ウィスタリアで、という言葉は飲み込んで。


「やっぱり勇者だったんだ。でもなんでこっちに?あそことはあんまりいい仲じゃなかったと思うのだけど」

 神子は不思議そうに訊いた。飲み込んだ言葉は伝わってしまった気がする。

「そこはちょっと色々とあって。ついでに言うと、リースベルトで呼ばれた勇者は今問題にしてるリョウだよ」

「は?ちょっと待って意味わかんない……」


「魔力暴走については、今対策考えてるからもう少し様子見してて欲しい。それでも迷惑かけそうな感じがあったら教えて」

 説明が面倒だから話題を変える。

「わかった、でも今日は意識的に何度も視てるから少し休まないと。意識しての乱発は結構消耗するのよ。……あ、それと。ちょっと手貸して貰える?」

「いいけど」

 乞われた通り手を差し出す。

 神子はその手をとり、しばらく目を閉じていた。


「……ねえ、あなたも未来見えるの?」

 目を開けた神子がそんなことを言った。

「え?」

「無自覚の方かな?多分だけど、私と同じ未来、というかもっと詳しいこと見たんじゃないの?」


 心当たりは……今朝の夢見が悪かったような気がするやつ。

 問題は、それをほとんど覚えていないことだけれど。

「そう、かもしれない。予知夢の才能あるって言われたことはある。残っても断片くらいになっちゃうけど」

「余裕があれば記憶を引き出せる神子に知り合いいるから見てもらう?……って言いたいところだけど、今回は多分時間の余裕ないのよね」



 そんなことを話していると、店の中からサリーが探している声が聞こえた。そろそろ戻らないといけない。


「ごめん、そろそろ戻らないと。とりあえずこれ、使い捨てだけど念話できる魔法具。何かあったら連絡頂戴」

「便利なもの持ってるのね、わかったわ。じゃ、このことは任せたわよ。私は街に戻るから。万が一にでも巻き込まれたくない」


 神子はそう言って踵を返した。


 私はそれを見送り、装備をこの世界でありふれたものに変えた。

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