18話 初心者講座(解体)
リョウがやけにギラギラしたザ・異世界と言ったようなものを選ぼうとした波乱もあったけれど。結局無難な普段着を手に入れて着替えた。これで姿で浮くことも少なくなるだろう。
まあ勇者が目立たなくてどうすると思うところもありにはあるけれど、私個人としてはあまり目立つ位置にはいたくないと思う。
「さーて!服もいい感じの買えたし!次は装備だね。リョウ、お金あとどれくらい残ってるの?」
「ええと、銀貨5枚……5000ルナだっけか、ここの単位だと」
「ここの相場はまだよく分からないけど、皆の装備整えるのにはキツそう」
サリーの言う通り、私は置いておいても2人分の戦闘用装備を揃えるのはキツいというか全然足りない。
ちなみに1ルナは日本で言う1円とそんなに変わらなかったりする。生活用品の物価もそんなに変わらない。
私の知識はウィスタリアのものだけれど、歩きながら見た感じ大きく差があるようには感じなかった。
「じゃあ、解体習ってからラーザさんに見繕ってもらった方がいいかな?頼りっぱなしな気はするけど」
サリーがそう言う。
「いいんじゃないか?本人が良ければだけど」
リョウも同意したのでその方向で行くことが決まった。
神子の予知では魔法を使わせると暴走が起きるとのことで、どうにかしそれ以外の予定を作りたかったからちょうどいい。
「おーし、来たな。解体始めるか」
ギルドに併設されている解体場に行くと、ラーザが待っていた。
時間はお昼過ぎであり、人はまばらだ。
「まずはこいつだな、とはいっても大きさが変わるだけでやることは基本かわらん」
そう言って取り出したのはその辺の森に行けばどこにでもいるウサギだった。魔獣ですらない。
「今回はあえて血抜きしていないものを使うが、解体場に持ってくる前に血抜きは済ませておくべきだ。肉の品質にも関わるからな」
そう言いながら首を切り、逆さに吊るした。
「で、次は皮を剥ぐ」
肛門の辺りにナイフを入れ、真っ直ぐに切り裂く。
「ここであまり力を入れすぎると肉が傷ついて値が落ちる。だからといって入れなさすぎると切れない。まあこれは慣れだな」
切れ目に沿って皮を綺麗に剥がした。
「毛皮も売れるからな、なるべく綺麗に剥がした方がいい値がつくぞ」
売れるものは売ってしまうからここは重要。
毛皮を剥がしてしまうとお店で売っているような立派なお肉になった。
「次は腹を割いて、内蔵を取り出す。ここはゴミだな。食えねえし値もつかねえ」
腹の中身を掻き出した。
「あとは頭と手足を切り落として部位に分ければ終わりだ。まあ内蔵出すところまで出来りゃ自分で食うには問題ないだろ」
「と、ここまでやっといてだが、ひとつアドバイスだ。その場で食うとかそういう訳じゃねえなら血抜きだけしてあとはプロに任せた方がいい。買取金から解体料が引かれる訳だが圧倒的に状態が良くなるからな」
それで一通りの説明が終わった。
「じゃあここにもう3匹いるからやってみろ。ナイフは貸す」
ラーザはそう言ってリョウにナイフを渡した。
「ええと、まずは首を切って……」
と、リョウは見よう見まねの危なっかしい手つきで首を切り始めた。
正直、見ていてもつまらないし、暇だし、サリーもそちらに夢中になってるうちにもう1匹の解体をやろうかな、と思い、実は買っていたこの町産の黒曜石で出来たナイフを取り出した。値段は1万ルナくらいで解体用ナイフとしては一般的なものだった。
(お、さすが刃物が特産っていうことはあるな)
切れ味は相当良かった。
リョウ達が返り血まみれになりながら皮を剥ぐところまでやった頃には、私が解体したうさぎは立派なお肉になっていた。
「お前解体もうまいな……」
ちょっと様子を見たラーザから若干引かれながらそんな言葉を貰った。
ここしばらくは解体なんてしてなかったから多少荒くなったところはあったが合格点だったみたいで安心した。道具に助けられた感はあるけど。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます