14話 初心者講座(魔法)
「今日は魔法の講習だね!楽しみだね!」
朝からサリーのテンションはMAXだ。起きたばかりだというのに。
「とりあえずご飯食べてはやくギルド行こうよ。私、はやく魔法使いたい」
はやくが重なっている。
サリーがそんなことを言うから宿に併設された食堂へと向かった。
「そういえば、ルーさんは?同じ宿に泊まってるんだよね?」
その質問には私が答えるしかない。
「なんか、予定が早まったとかで先に出かけたみたい。朝起きた時書き置き残そうとしてたルーに聞いた」
実際は昨夜聞いたのだけど。
「そっかー、なら仕方ないね。まだ色々訊きたいことはあったのだけど」
「今日は魔法の初心者講座でしたね、奥へどうぞ」
ギルドの受付に行くと、昨日担当してくれたお姉さんが案内してくれた。
測定具があった部屋の隣、大きめの部屋だ。
「この部屋は魔法防御が施されています。初心者が安全に魔法が使えるようになっているので安心してくださいね」」
お姉さんがそんなことを言う。
「ユーナさんとサリーさんは昨日の時点で魔力操作出来ていましたよね。リョウさんは見た感じ魔力の流れを感じるところからでしょうか」
「お姉さんが魔法講座やるの?」
「ええ。職員になる前は魔法メインで冒険者やってたので、初心者講座はたまに担当しているんですよ」
「今はやってないの?」
「ええ。結婚を機に引退しました。それでギルド職員に。職員のほとんどは引退した冒険者なんですよ」
「まずサリーさんは光と風でしたね。光の初級魔法は昨日使われてたライトです。こちらは特に教えなくても大丈夫そうですね。
風の初級魔法はこれです」
お姉さんはそこで言葉を切って、手に魔力を集めた。
「ウィンド」
その言葉とともに小さな竜巻が現れた。
「魔力の込め方で、大きくしたり威力を上げたりすることができます」
そう言うと、竜巻は人の身長くらいの大きさになり、的を巻き込んで破壊した。
「ほえー」
「要領は基本どの属性も同じです。属性を込めた魔力を集め、イメージして放出する」
お姉さんはそう言い、続けて光、水、氷、火の初級魔法を見せた。
「お姉さんはどのくらいの属性使えるの?」
「私ですか?全属性使えますよ。器用貧乏型なので」
器用貧乏型。全属性使う人はよくその呼び方をされる。
広く浅く。何でもできるけれどその道のプロには届かない。
ただし、一点突破型より引退後の職が多かったりする。こういうギルド職員とか。
「全属性って珍しいイメージだけど」
「そこまで珍しくはないですよ。人によってはどうしても使えない属性もあったりしますが、誰でもどの属性でも使えるので」
「じゃあ、私も他の属性使えるようになる?」
「ええ。初めは使えなくても、そのうち使えるようになったりすることもありますよ。でもまずは適正のある属性から練習した方がいいです。大事なのは魔力操作とイメージ力なので」
「やってみる!」
サリーは元気に答えて練習を始めた。昨日も出来ていたけれど、すんなりと手に魔力を集めていた。
そして、手本を見た事によりイメージが上手くできたようで小さな竜巻を起こしていた。不安定で直ぐに消えてしまったけれど。
終始サリーとお姉さんが話していたから私たちはその様子を黙って見ていた。私は特に訊くこともないわけだし。
リョウは難しそうな表情をしている。
イメージ力と魔力操作。その両方がピンと来ていない様子だった。
「ユーナさんはどうですか」
その様子を眺めていたらお姉さんから声をかけられた。
「大丈夫。私より……」
そっとリョウを視線で示した。
火の属性は攻勢が強いものが多いし、魔力量は多いし、魔力操作が上手くいかなければ危険かもしれない。
実際昨日暴発させていたし。
お姉さんはそれだけで察したようで、頷いてリョウの方へと向かった。
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