13話 未来への道しるべ

ーー???ーー


 街の中で突然発生した炎は、街と、その周辺の森を焼き尽くした。

発生源と思われる場所に近づくほど、地面もが赤く溶けている。どれだけの熱が発せられたのかわからない。


 ただ、その中心点と思われる場所だけは違っていた。

 ほんの少しだけ、無事な地面が存在した。


 そこには人間がひとり、立っていた。






 優波達が召喚されて少し経った頃。

 ダイオプサイトの町のギルドに少女が血相を変えて駆け込んだ。


「ギルマス、いる?」

 少女は並んでいる冒険者を無視して受付の1番前へ行き、受付嬢へ声をかけた。


「おい、横入りするなよ!並べ!」

 列からそんな声が飛んだ。

「ああ、お前この町来たばかりか?あの子はいいんだよ。あの子がギルドに顔を出す時は基本非常時だからさ」

 近くにいた別の冒険者の声が返される。

「非常時?どこがだよ」

 苛立ちをさらに強めたような声になった。

「これから起きるんだ、非常時が。お前も気を引き締めるか逃げる準備をした方がいい。

 ……ほら、他の奴らを見てみろよ」


 受付の列に並んでいなかった冒険者は次々と席を立ち、少女の周りへと集まってきた。

 並んでいた彼らも、後ろの方だった人達もウェーブを描くような動きで受付前へ集まってくる。


「集まってもらって悪いんだけど、不確かだし大きいことだから先にギルマスに話すよ。そっちの説明を待ってね」

 少女は集まる冒険者にそう言った。それを聞いた冒険者たちはおとなしく一歩下がった。




「神子殿か。何を見た?」

 奥から偉そうな男が出てきた。受付嬢から呼ばれたらしい。

 実際この町1番の権力者、ダイオプサイトのギルドマスターだから実際偉い人だ。

「奥で話すよ」

 少女はそう言って受付の奥へ進んだ。




「隣町が滅んだ」

 奥の部屋に入ってすぐ、少女は言った。

「滅んだ!?物騒だな?」

「急に見えたものだし、見えたのも不安定だったから本当に起きるかも分からないけど」

 少女はそう前置きをして話し始めた。


「私が見たのは、まず炎。

 そして、溶けた町」

「溶けた?燃えたでは無く?」

「多分物凄い熱量だったんだろうね。火山の噴火口って言った方が信じられるような光景だった」

「……そこにいた人は?」

「わからない、かな。いまのところ。でも一気に燃え広がったようにみえたから、多分逃げる余裕なんてなかったと思う」

 それが意味するところは。開口一番に言った『滅んだ』ということだろう。


「町の中心、というかたぶんギルドのある位置だと思うのだけど、多分そこがそれの発生源だった。周りの様子が分からないから確証はないけど」

「範囲はどれくらいだった?この町への影響は?隣町というのはどれだ?

 ギルマスは次々に質問をふる。

「多分……オブシディアン。直接的な影響はないように見えた。向こうの町ひとつと、その周囲の森が少し焼けてた」


「中心では、少しだけ無事な地面があって。そこに……あまりよく見えなかったけど少年がいた。見慣れない服を着ていた」

「見慣れない服、というと?」

「……前に姿絵でしか見た事がないけど。異世界から来た勇者が来ていた服に似ていた、気がする」


「曖昧だな……。神子殿が言うのだから真実なのだろうが……」

「だから言ったじゃん、不安定だったって。もし本当に召喚の勇者が関わっているのなら、当然だろうけど。

 ほんと、あいつらすぐ未来を変えるんだから」


「とりあえず、明日オブシディアンに行ってくるよ。こっちでの対応はあの町周辺のクエスト撤去くらいでいいと思う。

 もし本当に起きたら、近くにいると危険だろうからね」

「神子殿はそんな危険なところに行くのか?」


「未来への道しるべを示すこと。それがこの町で、この能力を持って生まれた神子の使命だからね」


 少女はそう言って微笑んだ。

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