10話 ラーザ
「それはそうと、先程の水魔法は初心者とは思えませんでしたが」
話が急にこちらに来た。
くそお、いい感じに話が流れたと思っていたのに。どうして盛り返すかな。
「あれは、夢中だったから……。多分、もう一度やれって言われても難しいと思う、かな」
とっさに口に出した言い訳はあまり納得できるような出来ではなかった。
「そうなんですか?見たのは遠目からちらっとでしたけど、綺麗な魔法でしたよ。きちんと学べば凄い魔法使いになる事間違いなしです」
お姉さんの口調に力が籠ってきた。
というか、自己流にしたところもあるけれど、もっと魔法の発達した世界できちんと学んだ魔法なのだから荒削りのものと比べるとそりゃあ綺麗だろう。
ここで言う『綺麗な魔法』というのは無駄な魔力を使っていない魔法のことだ。
「ともあれ。これで項目も埋まりましたし、カードを作成しますね。受付に戻ってお待ちください」
お姉さんから話を切ってくれて助かった。まあ話し始めたのもお姉さんだったけれど。
ギルドカードができるまでの間、併設された食事処の1席に座って待つことにした。食事処といってもほぼ酒場のようなものであるけど。今は昼前程で、依頼書を見に来た冒険者は出た後、食事時にははやく座っている人はぽつぽつ程度しかいない。
ちなみにルーは私たちをギルド前まで案内して宿を取りに行っている。
「よお、登録できたのか?奥に行っていたようだが」
さっき入口で絡んできたおっさんだ。
「ああ、カードができるのを待ってるところだ」
来栖くんが答える。
「出来たならなによりだ。お前らはこれから依頼を受けるのか?」
「いや、講座?を受けようかと思ってる」
「講座か。最近はそれを受ける奴は減っているんだよ。俺は対人戦闘と解体の講師もしてるんだ。良かったら力になるぜ?」
「そうか、頼りになるな。それでいいか?」
来栖くんがこちらに話をふった。
「まあ、いいんじゃない?対人戦はともかく解体は元々受けるつもりだったんだし」
それに沢森さんが答える。私は軽く頷いた。
私は、今更初心者用の講座を受けたところで学ぶことはほとんどないだろうけれど。
「お待たせしました、こちらがカードになります。紛失にはお気をつけくださいね」
受付のお姉さんが来て、金属のプレートをこちらに渡した。
「これに魔力を通せば個人登録が完了になります」
私たちは受け取り、それぞれに登録をした。さっき魔力測定をしたものと要領は同じだ。魔力の波長を記録するだけなのでむしろそれほど力は使わない。
来栖くんもさっきのような暴走はせず、無事に登録できたみたいだ。
「おめでとう、これで正式登録だな。歓迎するぜ、新しい冒険者」
おっさんが言った。
「言い忘れていましたが、皆さんはランクFからのスタートになります。あそこのボードに貼られる依頼をこなすことや、功績を立てることでランクは上がります。
まあやってみた方が速いですね。でもまずは講座の方をやりましょうか」
「よし、じゃあ俺の出番だな。訓練場借りるぜ、ついてきな」
おっさんが続けた。
「おっと、自己紹介がまだだったな、俺はラーザだ。今は解散したがAランクのパーティで前衛をやっていた」
「Aランク!それって結構凄いんだろ?俺はリョウだ。よろしくな」
「サリーです」
「ユーナ」
おっさん、ラーザに続いて私達も自己紹介をする。といっても名前を言っただけだけれど。
「リョウにサリーにユーナだな。よろしく。じゃあ」
ラーザはそこで言葉を切り、私を指さした。
「まずはお前からだ、ユーナ」
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