9話 魔力適正

「どうぞ、こちらへ」


 案内された部屋の中央に台座と水晶玉。床に固定されているようだ。


「この魔法具で潜在魔力を測定します。適正値が高いものから多くて3つまで分かります」

 ギルド職員のお姉さんが説明をする。


「この水晶に手をかざして魔力を込めてください。……魔力操作はわかります?」

「いや」

「わかりません」

 わかるけど合わせてわからないといった風にする。


「そうですね……。身体の奥にあるエネルギーを感じて、それを手に集める……というやり方が一般的です」

 ギルド職員なのにあまり説明はうまくない。


「うーん、こうかな?」

 沢森さんが唸りながら水晶に手をかざす。


 ほわん


 と、水晶の周りに白い光と渦巻く風のようなものが浮かび上がった。

 あんな簡単な説明でわかるものなのか。


「そうです!ええと、光属性と風属性の適正ですね」

 それを見たお姉さんが解説をした。



「これって、私も魔法が使えるってことですよね!?」

「はい、もしお望みであれば初級魔法の講座を受けることもできますよ。希望するのであれば後ほど窓口で手続きをしてください」

「受けます受けます、ねえきいた?私魔法適正あるんだって!」

 沢森さんは興奮した様子で来栖君に話しかけている。


「きいたきいた。で、どうやったんだ?全然感覚が分からないんだけど」

 来栖くんのその感覚は割と正しいと思う。

「ぐぐーってしてはっ!って感じだよ」

「いやわからん」

 沢森さんは感覚派。


 さて、今回はただの属性判定だから隠す必要もないし、同じ巻き込まれの沢森さんは普通に魔力を使えるようだから無難な感じで済ませよう。

 上から3つわかるということだから、よく使う属性の魔力を込めればそれが浮かぶはずだ。

 そうと決めたら、

「こう、かな?」

 そう言いながら水晶に手をかざした。


 ほわん


 出た属性は水、闇、氷。

 3つ目の魔力は無属性を込めたつもりだったけれど、この水晶ではどうやら判定できなかったようだ。


「御影さんも出来たのか……。俺才能ないのかな」

 そんなことを呟く来栖君。魔力はあるのに魔法が使えない勇者って面白いかもしれない。まあ使い方がまだ分かってないだけで使えるのは使えるのだろうけど。



 来栖君がなかなか出来ないまま十数分。

「お!?これか!?」

 そう言いながら、はたくような勢いで水晶に手をかざした。


 ぶおんっ


 大きな音とともに水晶と来栖君を炎が包んだ。

「あづっっ!!」

 すぐに消えるはずの炎は消えない。ちなみにお姉さんはこのタイミングで別の職員に声をかけられて少し席を外している。


 対応できるのは私だけのようだ。


 威力を、ぎりぎりあの炎が消えるくらいに調整して、

「ウォーターロック!」

 唱えた。


 水は3秒ほど来栖君を包み炎を消して、霧散した。



「助かった……焼け死ぬかと思った……」

 来栖君は地面にへたりこんだ。



「すみません、駆けつけるのが遅くなってしまい……」

 状況に気づいたお姉さんが戻ってきた。

「大事なくて良かったです……。よっぽど強い炎属性の素質があるようですね」


 お姉さんが解説してくれるが。

「それより!御影さんすごい!今魔法使ったよね!?どうやったの??」

 沢森さんの勢いがすごい。これはどう誤魔化せばいいのだろう。


「ええと、さっきので水適性があるの、わかったからもしかしたら出来るかなって。前に読んだ魔法系バトル漫画を思い出してやってみた、ら、何かできたみたい」

 と言ってみた。我ながら説明になっていない。

「つまりはイメージってことね?」

 わかったらしい。

「まあ、そんな感じ」






ーー視点 沙理奈ーー

 魔法系の漫画なら私も結構見たり読んだりしているからイメージするのは簡単。恥ずかしい話、フリをやってみたことは1度や2度ではないし。その時は当然、魔力(?)込めはしなかったからその容量でやれば私にもできる気がする。


 さっきの適性検査で、私は光と風だってわかったからそれを使った魔法……。

 風は攻撃技が多くて的なんかはないから光属性のライトくらいがわかりやすいかな?


 そうと決まればやってみよう。

 さっきの容量で、身体の中のエネルギーを手に集めて……

「ライト!」


 上を向けた手のひらから、ぽわっと光が浮いた。

 成功!私にも魔法が使えた!


「みた!?リョウ!私にも魔法使えたよ!光が!ぽわって!!」

 近くにいたリョウを揺さぶりながら興奮をぶつけた。


 実を言うと、こんなに簡単に魔法が使えるだなんて予想していなかったから驚いている。




「興奮しているところ悪いですけど、手続きを進めていいですか?皆さんの適性魔法もわかりましたし」

 お姉さんがが止めなかったらもっとしばらく興奮は治まらなかったと思う。


「あ、はい!ごめんなさい」

 カード作成の書類に必要な項目を進めるために受付に戻るみたい。

「いえいえ、でも凄いですね?今まで魔法、使ったことがなかったのでしょう?」

 凄いの?


「普通だとどうなんです?」

「完全に初めてですと、適性検査をした後に初級魔法の講座を受けてやっと簡単な魔法が使えるようになりますね。属性がわかってすぐに使える方は珍しい部類に入りますね」




「それはそうと、先程の水魔法は初心者とは思えませんでしたが」

 お姉さんは御影さんに話を振った。

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