7話 野営

「はい、出来たのですー」

 ルーがそう言って捌いて1口大にカットしたうさぎを焼いた物を差し出した。

「4人で分けることになるのであまり量は出せないのが残念なのです……」

 それでも1食分としては十分な量がある。



「「「いただきます!」」」

 私たちはそう言って食べ始めた。ラピラビは久々に食べたけど、相変わらず肉汁たっぷりで美味しい。調味料なしで焼いただけなのに薄味程度の塩加減がある。

「なにこれ、美味しい!」

「俺はもう少し塩分強い方が好みだな」

 来栖君はちょっとした文句を言いながらも食べる手は止まらない。


「捌くところ見ちゃったから食べれないかもって思ってたけど大丈夫でよかった」

 沢森さんはそう言ってもぐもぐと口を動かしていた。

「今度、捌き方教えてくれる?ここで生きるには必要なことなんでしょう?」

 そして、ルーに訊いた。

「はい、構わないのです。でも町のギルドで習った方がわかりやすいと思うのです。初回であれば無料で講座を受けられるのです」

「解体講座?」

「はいなのです。素材を持ち込む必要があるのですが、それは道中でなにか狩ればいいのです」

「それは俺たちで狩らないといけないのか?」

「本人が狩ったものしか認めない、なんてものはないので大丈夫なのです。解体専門の、狩りをしたことのない人も受けられる講座なのです」

「へえ、なら安心だね」




 食事も終わり、辺りは完全に日が落ちた。

 消えかけの焚き火だけが地面の光源だ。

「そろそろ休むのです」

 ルーがそう言った。時間的にはまだ20時頃、私たちの感覚ではだいぶ早い時間だ。

「え、もう?」

 沢森さんが訊く。

「野宿では日が沈むと休んで、日の出から行動するのが効率がいいのです」

「確かにその通りだけど……。地面に直接寝るの?」


 そっちもだった。


「シートくらいならあるのですが使いますですか?」

 ルーがそう言って袋からレジャーシートのような撥水加工をされた布を取り出した。

 大きさは人が2人くらいは横になれる程度。

「ありがとう、使わせてもらうね」

 沢森さんはそれを受け取って焚き火から少し離れた結界内にひいた。


「あ、靴は履いたままのほうがいいのですよ」

 靴を脱いでシートに上がった沢森さんを見たルーがそう声をかけた。

 結界を張っているといえ、野営では何があるか分からない。すぐに行動出来るようにしておくのは基本中の基本だ。

 言われた沢森さんはすぐに靴を履き直してシートに腰をかけた。

「私、キャンプとかも行ったことないし、外で寝るのは初めてよ」


「夜の見張りは任せて欲しいのです。こう見えても慣れているのですよ」

「え?寝ないのか?」

 ルーの言葉に来栖くんが反応した。

「寝るのですよ?」

「寝てて、見張りも?」

「はいなのです」


 来栖くんはよく分からないと言った表情のままだ。

「……すごいな」


 パーティーの野営では基本交代で起きて見張りをする。しかしソロでは交代する人なんて居ないが休まないのは翌日に響く。

 ということで、眠りを浅くし何かあればすぐに起きられるような状態で身体を休める。しっかり休むのは安全の保証された場所に行ってからで十分だ。特に移動のための短期間な時は。

 今の私たちの状況はパーティーではなく、ソロにお荷物が着いているようなものだ。ルーには負担をかけるが、私たちを拾ったルーの自己責任と思って我慢してもらおう。


 とは言ってもこんな所でなにかあるのは面倒なので一応警戒はしておくけれど。






 そして朝。

 何事もなかった。

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