第17話 ポッキーゲェェェェェェム!!!!
琥珀は自宅にてポッキーを食べていた。それを操はじっくりと見ている。
「琥珀君。それ美味しいのか?」
「ん? 食べてみる?」
これは、俗に言うポッキーゲームチャンス。カップルがこの流れになったら片方がポッキーを咥えて、もう片方が反対側からかじって食べて行って最終的にはキスをする。
一体どこにゲームの要素があるのかわからない。勝ち負けとかあるのかだろうかと言いたくなる不思議なゲームである。
「いや、私は甘いもの苦手だから」
「あ、そうだったね」
お わ り
◇
「なあ、琥珀君。お互いに見つめながら、愛してるって言って、先に照れた方が負けのゲームをしよう」
「うん。いいよ」
これは明確に勝ち負けがあるゲームとして成立している。
「琥珀君……愛して……ちょっと、待って」
「待つよ」
「すー……はー……行くぞ……」
琥珀と面と向かう操。そして、口を開こうとするも琥珀の真っすぐな目に照れてしまう。
「い、今のはなし」
「なにが?」
操が照れてる仕草をしていることに気づかない琥珀。バレなきゃイカサマじゃないし、敗北を認めてないならセーフ理論で操は続ける。
「その……琥珀君。愛してる」
操は伏目がちにそう言う。
「いや、目を見て言って。今のはノーカン」
「な、なんてことを言うんだ! この私を辱めるつもりか!」
急に女騎士みたいなセリフを言う操。
「操さんが始めたゲームだろ」
「うう……わかったよ。あ、愛してる。あぁあああ!」
操はクッション枕を顔にうずめて手足をパタパタとさせた。
「はい、操さんの負け」
お わ り
◇
「操さん。何食べてるの?」
「ん? これはプリッツだ」
塩味が効いている細いスティック状のお菓子。甘いものが苦手な操でも食べることができるお菓子である。メタ的なことを言うとこれのお陰でポッキーゲームネタがボツにならずに済んだという。
「ちょっと1本貰ってもいい?」
琥珀が何気なく操のプリッツの箱に手を伸ばす。しかし、操はをそれを回避。プリッツを1本取り出して、それを咥えて唇を突きだした。
「んー」
これでゲームを開始しろ。そう無言の合図。彼女のこの要求を断れる彼氏などこの世にいるのであろうか。
「ほい」
パキッ。琥珀はプリッツの端を掴んでそれを綺麗に半分に折った。
「違う! そうじゃない!」
琥珀の謎行動に操は思わずつっこんでしまう。そして、プリッツでやるポッキーゲームという謎の行動を琥珀にレクチャーした。
「もう1度やるぞ」
「はーい。もぐもぐ」
一応、奪い取った半分のプリッツをもぐもぐと食べる琥珀。この状況でよくそれを食べる気になれたなと、奇行が目立つ成人男性。
操がプリッツを咥えて口を少し尖らせるキス待ちの顔をする。そして、琥珀がそのプリッツを反対側からかじって操と唇を近づける。
少しずつ迫りくる琥珀の顔面に操の心臓の鼓動が高鳴る。キスどころか、それ以上のことすらしているはずなのに、シチュエーションが違うだけで気持ちが高ぶってしまう。
琥珀の距離が更に近づく。プリッツの半分噛み進めたところで、操は半目になって琥珀を受け入れる準備をした。
一方で琥珀は平常心で進める。思考としては、もうキス以上のことをしているんだから、今更ドキドキする必要もないということだ。それにしてもこのAmber君。情緒というものがない。
プリッツの残りが1/4になった時、操は半目になった目を閉じた。そして、琥珀もそれに応えるように操の唇にそっとキスをした。
初めてでもなんでもないキスは塩の味がした。琥珀は操にキスをした後に。本当に一瞬。1秒未満で普通に唇を離した。
「ふう。終わった」
「むー。もう少しキスをしていてもいいんじゃないのか?」
操は不満気に唇を尖らせる。すぐに唇を離した琥珀に不満を伝える。
「んー。キスの理想的な秒数って意外と難しくない?」
「難しくない! お互いの心が通っているなら、なんとなく流れでわかるだろ!」
流れを読む。または空気を読む。それがこのAmber君にはできないことだ。琥珀には高度な要求をする操に琥珀は頭を悩ませる。
「それじゃあ、もう1回キスする?」
「うん」
琥珀は屈んで操と唇を重ね合わせた。今度はすぐに離したりせずに操の様子を伺いながら、慎重に流れを読む。
3秒ほどキスをして、琥珀は唇を離した。
「どう? これくらいが正解?」
「いちいち訊くな。察しろ」
操は琥珀の胸板をパシっと軽く叩いた。
「あはは。ごめん」
なんとなく正解の感触だということは理解した琥珀。
「でも、私だって軽く済ませたい時があるから今の秒数が絶対に正解とは限らないぞ!」
「うわ、細かいな」
「うわ、とか言わない!」
おわかりいただけたであろうか。これは付き合いたてのカップルの話ではない。付き合って5年になるカップルの話である。普通、そこまで付き合っていればキスの秒数で揉めるイベントは発生しない。では、なぜ、その間にお互いの好みの擦りあわせができていないのか。
それは、教えてくれる師匠がいるのに、学習能力がほとんどないのがいるからである。Amber君さあ……
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